街の女子は怖とです。
「先ず、僕たちは君にはもう見分けがついていると思うけど妖だ。しかも上級のね。僕たちの本当の力は無限にある。だから大昔に君の先祖が、詳しく言うと『血』という呪詛で縛ったんだ。僕たちはその呪詛のせいで力を発揮できない。つい最近、300年程前に身体を繋げることで力を発揮できる事に気付いたんだ。
ただ、支障が生じてね。僕たちは呪詛のせいで巫女を死なせてはならないし、肝心の巫女は二代目ごとにしか現れない。桜様と出会ったのは桜様が幼少の頃。流石にまだヤれない年だから僕たちは眠ることにしたんだ。桜様が大人になるまで、それが寝過ぎてたみたいで…僕たちが寝ている間に下級の雑魚…妖怪が力を付け出してね。僕たちも手に負えなくなってしまったんだ。そんな中桜様は亡くなっていると聞いて孫がいるなんて、この状況…分かるよね?今は君が巫女って事なんだよ。」
いや、分かるって言えば分かるんだけど…急すぎる。先祖が巫女でこの妖達を血の呪詛で縛って。その血が私にも流れてるからキスさせろとこの方達は言いなさる。
この血のせいで私は妖怪達に命を狙われこの人達から離れたら死ぬ運命。
「分かりました。ある程度は呑み込めました。」
「此方も分かってくれたのなら嬉しい限りです。」
「此処で暮らすというのも分かりました…が、学校へはきちんと通いたいんです。親の反対を押し切って入った学校なので。」
「はい。それは問題有りません。では、簡単に自己紹介をしましょうか。」
と、紹介に少し背が小さい美形男性…妖が手を集団の方へ向けた時、襖が少し開いた。
「申し訳ありません。お茶が必要かと思いまして…」
「あっ!」
さっきの道路の電柱の近くにいた黒い翼を持っている子供が現れた。手には茶を乗せている盆を持っている。
「僕たちの従仕から紹介しましょうか。この子は圭烏天狗の子です。」
「姫様、こんにちは」
か、可愛い…にへらと笑った烏天狗の圭ちゃんは持ってきたお茶を皆の前に置き、空いている席に正座して座った。
「従仕とは…?」
圭ちゃんが持ってきてくれたお茶を口の中に入れ分からない単語を口にする。
「はい。主に上級の妖に仕える妖のことで御座います」
それに圭ちゃんは答えてくれた。
「紹介を続けます。彼方の黒髪の少し自己中心的な方が烏天狗当主、一夜。」
「自己中は余計だ。」
「本当の事じゃないですか。次に白髪に銀が少し混じっている方達が狐、初めて会った時に貴方を見て溜息を吐いた長い髪が琥珀、無口で髪が短いのが瑠璃。双子なんです」
「無口ではない。どう会話に入ればいいか悩んでいただけだ。」
「はいはい、少し人見知りがあるのが瑠璃です。そして、白髪の僕が白蛇当主、庵。よろしくね」
癖っ毛の黒髪黒目の烏天狗が圭ちゃん。黒髪黒目の一夜さん。双子の髪が長くて琥珀色の瞳を持っているのが琥珀さん。双子の髪が短くて瑠璃色の瞳を持っているのが瑠璃さん。白髪に翡翠の瞳を持っているのが庵さんか…
「私の名前は、柊真。これからよろしくお願いします。」
私はこれからお世話になる妖の中で偉い人達に日本風の挨拶をした。
「堅苦しいのは無しだ。気軽に一夜って呼んでくれ。」
「同感ですね。僕のことも琥珀で良いです。」
「俺も瑠璃で」
「僕も庵でお願いしますね」
「はい、私のことは真と呼んで下さい」
「じゃあ早速、真が此処で暮らす為に必要な荷物を持ってくるか。」
一夜が指をパチンと鳴らした。
「え?何?」
途端に身体が宙に浮き一夜に姫抱っこという状態にさせられる。
「お、降ろして下さい!」
「こっちの方が楽なんだよ。いいからしっかりと俺に捕まっていろ」
それを言うや否や途轍も無く速いスピードで走っていく一夜。
私はそのスピードに恐怖を感じしっかりと一夜の首に腕を巻き付ける。
速い怖い落ちる!
「着いた。」
汗水垂らさず清々しい顔で都会の街中に来た和服の美形達。
無論女子達が相手にしない訳が無く蠅の様に集ってくる。
「悪いな。俺達は真にしか興味が無いんだ。」
私の方を指差し美形キャラが言いそうな台詞をサラッと言ってのける一夜に「お前その意味分かってねぇだろ!」という眼差しで睨む。
そんな台詞はラブラブなツンデレ美形が恋人に対して言う台詞なんだよ!
だが、その眼差しも声も届かず女子達は私を睨み付ける。
いや、こいつらが興味あるのは私の身体だから!あっと、語弊がある。私の血筋だから!
私は心の中で間違いを正す。
「早く荷物を纏めて来い。」
「分かってますー」
一夜に言われ家の中に入る。
纏めるって言っても引っ越してきたばかりだから纏まってるんだよね。
「一夜、それに琥珀、結構あるけどどうやって持って行くの?」
「何故僕の名も呼ぶ」
「いたから(近くに)」
「大丈夫だ。これくらい他愛ない」
と、一夜と渋々のご様子の琥珀はダンボール箱を何段も重ねて軽く片手に持ち上げた。
すっごい力持ちだな、妖の当主って。
「では真は僕が運びますね。」
ふわっと庵に姫抱っこをされる。もう驚かない。だってあの速さに私が着いていけるはずが無いもの!
なので大人しく庵に抱かれ屋敷へ戻る。
周りの人達は私達の行動に「きゃあっ」と黄色い悲鳴交じりの声を出す。
反応は分かります。美形に姫抱っこって夢ですよね。ですが、私の場合これしか手段がないんです!なのでどうかその嫉妬という名の目で見ないで下さい。あっ、そこの男性達も茶化すのやめてください。恥ずかしいんです。この格好は。
「行きますよ。」
「あ、はい」
周りの目を関係無く途中まで一定の速さで走り…うん。こんなに人が沢山見ている中あのスピード出したら次の日のニュースで『街中で見た!?びっくり人間!』とかされてたら面倒だもんね。
私は大人だからそこんところ良く理解してるよ!
でも、でも、せめて早歩きはしてよ庵さん!見られる時間が長いよ!泣きたくなってきたよ私!
「ふぅ、やっといなくなりましたね。では、走りますよ」
「あ、はい。」
うわーすっごい速く感じる。もう着いちゃったよ。
「庵、そういえば此処って何県なの?」
「此処は県では有りませんよ。妖の世界です。」
「え、えぇぇぇぇぇ??!何処から?」
「何処でも妖の世界の扉を開けれるんですよ。」
道理で早く着くはずだわ。
私は謎が解けて何処か疲れた。
「真ーーー、この箱、真の部屋に置いておくぞ。」
「はい。お願いしまーす」
庵に地面へ降ろされ私の部屋に案内される。
「此処ですよ。」
襖を開けると畳の上に運んでくれたであろうダンボール箱が数個置いてあり、今日からの私の部屋は押入れと箪笥や木で出来た机があり、窓は丸窓で風格のいいランプがあった。
私は早速、箪笥に服を入れ机の上に高校で習う教科書を立てた。
「かんりょーっと」
元々荷物はあまり無かったので早く終わった。簡単な作業を終わらせわざとらしく汗を拭く仕草をしていると襖が開いた。
「姫様…そろそろ夕餉のお時間で御座います。皆様待っておられますよ」
「圭ちゃん!本当?ごめんね案内してくれる?」
「もちろんです」
少し急ぎ足で皆が待ってると言う居間へと急ぐ。
「ごめんね!待った……」
襖を豪快に開け机に並んでいる豪華すぎる晩御飯に言葉を失くす。
「すっごーい!これ全部圭ちゃんが作ったの!?天才だよ!」
圭ちゃんは少し照れた様子でぺこりと頭を下げて出て行こうとする。
「何してるの?圭ちゃんも早く食べるよ」
「いや、僕は…」
「いいじゃないですか圭。たまには従仕に拘らず一緒に食べても。」
「たまにじゃなくてこれから毎日だよ!」
「ありがとう…御座います…」
圭ちゃんはいそいそと座布団を敷き自分用の箸とお茶碗を持ってきた。
かっわい!
「じゃあ皆で、いっただっきまーす!」
こうして、私の妖との同居ライフの幕があがった。
次はご飯のシーンから!
また明日ねっ!
いつもご愛読して下さり嬉しい限りです(*'-'*)