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負け戦

ランド他数名のパイロット達は、ブリッジにてブリーフィングを行っていた。


艦長「戦場はカーメン基地より東に100km程の地点だ。塹壕と雪山を生かし、防衛線を引いているが、状況は芳しくない」


艦長が状況を重々しく語る。


それもそのはず、ユーレスタ連邦自体が、作られたのはごく最近の事だ。

以前からACSの配備を進めてきたアトラスとは地力が違う。


艦長「間もなく到着する、各員、機体にて待機。指示を待て。」


艦長の指示に従い、パイロット達は甲板へと向かう。


ゲイル「新人、俺たちから離れるんじゃないぜ」


ゲイルはACS4機からなる小隊を率いる部隊長だ。

30代前半の白人で、数々の実戦を経験している猛者だ。


ゲイル「・・・と言っても、今回は負け戦だ。」


ランド「えっ?」


ゲイルの発言に対し、すっとんきょうな声を上げてしまうランド。

負けに行くと隊長が言えば驚くのは当然なのだが、


ゲイル「当たり前だ。基本的に数が足りないし、パイロットの養成も向こうが上だ。」


ゲイルの持論はもっともだった。

すべてにおいて敵に劣っていれば、誰でもそういう判断を下すだろう。


ランド「上層部は何を考えているんですかね・・・」


ランドも戸惑いを隠せない。


ゲイル「大方時間稼ぎとでも考えてるんじゃないか?・・・まあ、俺たち兵士にとっちゃ1つしか無いがな・・・」


ランド「1つ・・・命令は絶対、ですか?」


ランドの意見に対して、ゲイルはやれやれと片を竦めながら、


ゲイル「真面目だねぇ。そりゃ・・・」


ゲイルはいいかけたが、それを引っ込める。


ランド「お、教えて下さいよ!」


気になったランドはさらにゲイルに詰め寄るのだが、


ゲイル「お前が『1人前』になったらな・・・」


ゲイルはそう言い残し、甲板へと向かう。


ランド「なんなんだよ・・・」


ランドも暫く考えたのち、埒が開かないと甲板へと向かうのだった。







ハッチを開き、コクピット内で待機する。


ランド「なんなんだよ、一体・・・」


ランドは未だにその事を考えていた。

暫く思案していると、


ルイン「ランド?大丈夫ですか?」


気遣ったルインの通信が入ってくる。

ランドは直ぐにハッとし、


ランド「あ、ああ、大丈夫だ。それより、後どのぐらいだ?」


質問で返す。

この間とは売って変わって、何とも気楽に会話をしている。


ルイン「・・・後10分程です。最終確認を」


ルインは時間を確認すると、深刻な顔で告げてくる。


ランド「わかった。」


ランドは通信を切り、準備を整える。

グローブを嵌め、ヘルメットを被り、ベルトを締める。

そして、今か今かと待ちわびていると、前方に光が見える・・・戦闘だ。


艦長「各員!第1戦闘配備!ACS隊・・・発進だ!!」


艦長の指示により、4機のACS隊は艦を降り始める。

オライオは艦隊に合流するので、ここでおろすのが最善なのだろう。


アサルトライフルを構え、艦を飛び降りる。


ルイン「ランド・・・気を付けてくださいね」


ルインからの通信に無言で頷き、前方に集中する。

敵が防衛ラインを抜けてくるかもしれないからだ。


ゲイル「よし、全機ついて来い。東部戦線の防衛部隊の援護を行う。」


ゲイルの指示に従い、ランドは前方に展開している部隊の援護に向かうのだった・・・






連邦兵士「くそ、ジャムった!早く換えの銃をぉっ・・・」


連邦兵士「抜かせるなぁ!意地でも食い止めろぉ!」


時刻は夕刻。戦場は正に地獄、そう表現することしか出来ない状況だった。

辺りには弾が飛び交い、隠れている塹壕から頭を出せばすぐに持っていかれるだろう。

最早雪山は原型をとどめておらず、砲撃の凄まじさがうかがえる。


ランド「うわぁっ!!」


砲弾が降り注ぎ、近くの機体が吹き飛ぶ。


ゲイル「何てこった・・・ここまでとはな・・・全機、武器を塹壕にのせて撃ちまくれ!」


ランド&連合兵士「了解!」


ゲイルの指示に従い、アサルトライフルを塹壕にのせて撃ちまくる。

正直、いつ塹壕が崩れてもおかしくはない。


だから牽制射撃でもしなければ持たないのだろう。


ランド「当たれ当たれ当たれぇぇー!」


突撃してくるギガンテスに向かってアサルトライフルを打ち続ける。


正直、レーダーを見る暇がないので、色での判別しかできない。

アトラス側は焦げ茶色のカラーリングだ。雪山での戦いは想定していなかったのだろう。


それに対してアトラスのギガンテスは真っ白である。

これはもとから雪山戦用だからだ。


連邦兵士「弾を!弾をくれぇっ!!」


連邦兵士「じ、銃身が!うわぁっ!!」


弾が切れ、武器が壊れた者から撃破されてゆく。


ゲイル「ちっ・・・おいっ!倉庫から軽機関銃を持ってこい!」


武器が直ぐに壊れてしまう事と火力が足りない事を危惧したゲイルは、周りの兵士に軽機関銃を持ってこさせる。


ゲイル「ようし!ありったけ撃ち込んでやれぇ!!」


少しずつ軽機関銃に持ち替えた連合兵士達が、ありったけの弾を突撃してくるギガンテスに撃ち込んでゆく。

もはや雨。いや、スコールとも言える隙の無い弾幕が戦場を覆う。


ランド「うわぁぁぁぁ!」


ランドも絶叫と共に機体を乗り出させ乱射する。


押されかけたていた戦場は次第に均衡となり、夜の訪れと共に一旦の終わりを迎えた・・・






〜塹壕内指令部〜


ユーレスタ連邦の兵士達は、塹壕内部に残った兵士を集め、作戦会議を行っていた。


連邦士官「司令は戦死なされました。現状では、ゲイル大尉が適任かと。お願いできますでしょうか?」


ゲイル「ふむ・・・しょうがないな。実戦経験があるのもこの中じゃあ、俺ぐらいだしな・・・」


連合士官から現状を伝えられ、渋々了承する。更に、周りにいるのは若い新兵ばかり、指揮官として命を預けるには不服がある。


ゲイル「待てよ・・・ランド」


ランド「はいっ!?」


突如名前を呼ばれ、間抜けな返事を返してしまう。


ゲイル「お前、確か実戦経験があったよな?」


ランド「はい。1度だけですが・・・」


ランドの答えに、ゲイルは1人でウンウンと頷き、


ゲイル「・・・まあ良い。」


ランド「(あれ?スルーですか?)」


軽く受け流されてしまう。

相変わらずとらえどころのない人だなと思う



ゲイル「明日、おそらく敵は勝負を仕掛けてくる。こちらに戦力が無く、じり貧なのはわかっているだろうし・・・もたないな。」


連邦兵士達「「なっ!?」」


そのままゲイルが何気無く発した一言に、指令部は騒然となる。


ゲイル「そうだろ?弱った敵を放っておく事はない。一気にたたみ掛けるべきだ。」


確かに、ゲイルのいうとおりだ。

だが皆、その事実を認めたくなかっただけなのだ。


ゲイル「まあ待て、ただやられるのを待つわけじゃない。」


そう言ってパイロット達は解散させられた。

ゲイルは対戦車兵達に指示を出している。


連邦兵士「もう駄目だ!!俺達は死ぬんだぁ!!」


周りでは、兵士達が絶望して叫び続けている。


ランド「・・・・死んで・・・・死んで貯まるかよ!」


ルインと約束したばかりなんだ。俺も、あいつも死んでたまるか

そう思いつつ、俺は仮眠室へと向かうのだった。


増援は来ず、パイロット達の士気も低く、絶望だけが蔓延していた・・・・

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