魔獣使い始めました ③
「さて・・・夜だ。腹減った・・・」
っということで、飯を探す必要があるわけだが・・・まぁ、ついでなので自分の能力をもっと調べて使いこなす必要がある。
何せ俺の能力は魔物や魔獣を操る力・・・だけど、現実は支配と使役の差が割と悩みどころである。
支配と使役・・・基本的には意味は同じなんだけど微妙に違ったはず。確か支配は相手を権力なり力なりで自由に動かせる状態に置くことで、使役はその対象を使って何かすること・・・だったはず。
現状の俺は支配。つまり意のままに動かせる状態にはあるけれど支配した対象を使って何かをする使役を行っていないんだ。道具を持っているのにそれを使わない・・・ってのは無駄の極みだからな。
とりあえず、配下にした合計11匹の狼達を使役するのに必要なもの・・・名前だ。やっぱり名前なくしては何ごとも始まらない。ってことで、名前を付けたわけだが・・・
「えーっと、お前からアイン、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フェンフ、ゼクス、ズィーベン、アハト、ノイン、ツェーン・・・っと、これでいいかな?」
最初に配下に置いた10匹の狼にはそれぞれ番号をそのまま名前に・・・って思ってふと思い出したのがドイツ語の数え方なんだが・・・意外と覚えてるもんだな・・・そんでもって最後の一匹。真紅の狼(雌)の名前は
「お前は・・・ルビーだな。ホントのルビーみたいに紅いし」
カーバンクルとか他にも紅い宝石の名前はいくつかあった気がするが語呂を考えるとやっぱりルビーの方がいいだろう。
なんにしてもこれでひとまず命令を出しやすくなったわけで・・・さっそく、練習を兼ねた晩飯集めをっと・・・
「えーっと、じゃぁアイン、ツヴァイ、ドライ、フィーアは食料を集めること。フェンフ、ゼクス、ズィーベンは薪になりそうな枝集め。残りのアハト、ノイン、ツェーン、ルビーはここで待機。ってことで行動開始!」
ざっくりとした命令を出すと、アインからズィーベンまでは素早く森の奥へと消えて行き、残りは俺を囲うように静かに座って待機を始めたのを見て「うまくいった」と確信できた。まだ色々変えていくところはあるだろうがとりあえずはこれでいいだろう。俺はただ座して食事を待つだけ・・・これ結構良くね?
・・・なんて思っていた時期が俺にもありました。
「あっ・・・あぁ・・・あちゃぁ・・・」
俺はすっかり忘れて居た。自分が操っているのは狼・・・ぶっちゃけたところ獣だ。彼らが料理をするわけでもないし、火を焚くわけもない。結果、俺の目の前には7匹が忠実に命令を守って集めて来た食料と薪・・・薪はいい・・・問題は食料だ!
「・・・まぁ・・・まぁ・・・そうだよ・・・な。狼なんだし・・・」
4匹が集めて来たのは当然肉。だが肉は肉でも生肉・・・どころか更に生々しい肉・・・今さっき仕留めてきましたと言わんばかりの獲物だ。そしてここに居たって大事なことがもう一つあった。
「・・・刃物とかないし・・・ってかどうやって火おこそう」
自分の行動の浅はかさに目から透明の液体が一筋流れた。
その日はとりあえず飯は諦めた。そのままにするのももったいないし、こいつらも俺の支配下にあるとはいえ生きている以上飯を食う必要はある。ってことで集めた食料は狼達に食べさせて、自分はせめて火だけでも!っと思いせっせと頑張っていた。
努力の結果一応火をつけることには成功したが、その労力が空腹にしみる・・・が、とりあえずそこは我慢をしてさっさと寝ることにした。
空腹が辛い!っと時は寝るに限る!
「さて寝るとして・・・だ。おーいお前らこっち集まれ~」
火があるとはいえ流石に夜は少し冷え込む。ついでに言えば俺は半袖のYシャツなので寒い・・・死んだ時は7月でこの格好でも十分だったのだが、こっちは気温的に9月10月位の寒さだった。そこで少しでも団を取るために狼たちを集めて布団代わりにした。
「うむ・・・大成功だな!あったけぇ」
やはり寄り集まればあったかい。特にルビーは毛並みが良く、ふわふわしていて寝心地は最高だった。色々あった所為でメンタル的に疲れていたからだろう、瞬く間に俺は深い眠りに落ちた。
――
その日俺は夢を見た
走馬灯のように生まれてから今に至るまでの記憶が俺の目の前を流れて行った
そうして俺は考えた
なんで・・・
なんで・・・俺は死ななくちゃいけなかった?
――
「ふ・・・ぁぁぁぁぁ・・・さぶっ!」
何か変な夢を見た気がするが、寒さに身を震わせていると夢の内容などどこかへ行ってしまった。まぁ、忘れるくらいなら大したことがないだろう。
なにはともあれ俺が異世界に来て二日目の朝を迎えたわけだが・・・
「腹減った・・・あーでも・・・うん。とりあえず水だけは・・・」
人間何も食べなくても結構生きられるものだが水だけはどうしようもない。
っということで狼たちに水場まで案内するように命じて近くの川で顔を洗いながら水を飲む。ただでさえ気温が低いのに朝だから余計に冷える。そこに冷た~いお水に触れようものなら・・・
「つっ・・・つめてえぇぇ!」
なんて悲鳴をあげながらも水はうまかったのでまぁ我慢しよう。できれば何か水を入れるものがあればいいんだがあいにくそんなものもない。
「そうだ。人を探そう」
っということでとりあえず今後の方針は決まった。悪魔との取り引きで勇者倒す使命とかあるけどまず自分の命の保証をどーにかしないことには始まらない。色々なところを歩きまわる破目になるだろうからとりあえず旅に必要な最低限のものはそろえる必要がある。
「ってことでお前たち。どっか近くに人いない?・・・いや、ここはあれだ。人の多い街とか村とか・・・そーゆーとこ無い?」
困った時の配下達!俺の問いに迷わず11匹全員が同じ方向を指す。っということで示された方にあると思われる街か村に行くとしてだ・・・
「あっ・・・」
ちょっと問題があることに気がついた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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えーっと、まぁ我ながら話の展開がとろいなぁ~って感じてます・・・はい。
でも・・・ごめんなさい!仕方ないんです!これからどんどんテンポが上がっていくはずです!
・・・たぶん!・・・きっと!・・・そのうち・・・はい。ごめんなさいです・・・