その日俺は死んだ ②
「・・・い・・・ろ」
誰かに呼ばれた気がする・・・
「いい加減に、起きろって言ってんだろうが」
「ぐぼぉ!?」
何かおかしい。誰かに呼ばれた気がした・・・ってか思いっきり蹴り飛ばされて宙を舞っている気がする?
「・・・気のせいじゃない!?」
床にたたきつけられた痛みで我に返ってから思わず叫ぶ。気のせいなんかじゃない・・・俺は誰かに思いっきり蹴り起こされた!
「おー!やっと起きたよ。ったく手間かけさせるなっての」
「っ!?」
おそらく俺を蹴り起こした本人であろう人物から声がかかり素早く声の主を見る。なんというか・・・アレだ。ちゃらいっていうか・・・そうビジュアル系的な!やけに長い黒髪とか、黒で革製の上下とか、背中の黒くて大きな羽とか・・・
「・・・ん?」
今何か見過ごしちゃいけないモノが目に入ったような・・・気のせい?・・・きっと気のせいだよなぁ・・・
「とりあえず自己紹介だな・・・俺様は悪魔だ」
「は?・・・あ?ああ゛っ!?」
・・・さらーっと気のせいで済ませようと思ってたのにこいつは!言っちゃったよ!自分から言っちゃったよ悪魔だって!
そーだよね!そーだろうねぇ!ベッタベタで見るからに悪魔でーすって感じの羽だよねそれ!!
「あーとりあえずさっさと落ちつけ。あんまり時間もないからとっとと本題に移りたいし」
「えっと・・・え?え?」
悪魔と名乗ったそいつに全くついていけない・・・何が何だっていうんだ?何が起きてるんだ俺に・・・?
「まずてめーが今どれくらい状況を認識してんのかかくにーん!・・・お前は神に殺されました。此処ちゃんと解ってるか?」
「え?・・・あっ」
唐突に切りだされた一言に混乱していた思考は一気に停止し、一つの感情を蜂起するために動きだす。そうだ、俺はよくわからないうちに神と名乗ったあの子供にわけもわからないまま殺されて・・・殺されて消されそうに・・・
「なんで・・・なんで俺は死ななきゃ・・・!」
「おーっし、覚えてるみたいだな。まぁ、お前の「なんで」には俺様は答えられない。俺様知らないしなー」
悪魔は俺の問いを適当に流すだけだった。その態度に何の関係もないそいつに向かって仇でも見るような眼で睨みつけた。
「おいおい、俺様睨んでどーすんだよ。俺様はむしろお前を助けようって立場なのにさ!そーんな態度取っていいのかよ?」
「・・・えっ?俺を・・・助ける?」
確かに悪魔はそう言った。そういえば俺は消されそうになってたはずなのにまだここに居る・・・それはつまり目の前に居る奴が俺を助けたってことで・・・
「やっと理解したみて―だし本題。俺様がお前の事を生き返らせてやる。あーでも、元居た世界は無理な。生き返ってもすぐに神の奴にばれちまうだろうし」
「生き返れる・・・」
ここまでいきなりすぎて何が何だかもはや解ったものじゃない・・・だけど、俺は死んで今ここに居て悪魔が生き返らせてくれるという・・・だけどいいのか?確かに俺はここのまま死にたくなんて・・・ない。でも、悪魔がタダで生き返らせてくれるわけがない。つまり・・・
「あーもしかしてあれか?悪魔だから取り引きだとか何か考えがだとかで腰が引けちゃってるのかなぁ?笑えるし!別にに魂よこせとかそんなんしねーし。ってかそもそもお前、渡そうにもとっくに死んでるしな」
「ぅ・・・じゃっじゃぁ・・・俺にどーしろっていうんだよ」
身も蓋もない言い方ではあるがその通りだ。俺には生き返るための対価なんて・・・ない。なら死んだ身の俺に何ができるっていうんだ?まさか本当に無償で生き返らせると・・・?
「当然だけど俺様からは条件がある。つっても大したことじゃないさ、違う世界に生き返らせるからその世界でちょっくら神に喧嘩売って来い」
「・・・・・・は?」
「だーかーらー!神に喧嘩売れって言ってるの」
「・・・・・・はぁぁぁぁああ!?」
一体何を言っているんだこいつは!?神に喧嘩を売れって・・・生き返っても結局すぐ死にそうな話を・・・ってかそれ以前にかなうはずないだろ!
「あぁお前が思ってるような無茶なことじゃねぇよ。それはそれで面白いだろうけど・・・なぁに。ちょっと別の世界で神の加護を強く受けた・・・勇者っとか呼ばれてたっけ?そいつをぶったおして世界を面白い感じに引っ掻き回してくれればそれでOKだからさ」
「え?は?勇者・・・?」
「そそ。お前の世界にあった空想の物語とかあるけど、そーゆーのの勇者ね。そいつをぶったおしてこい」
なんていうか・・・滅茶苦茶である・・・が、俺には選択権なんてない。どんなばかげた話であろうともこの条件を飲まなければ俺は死ぬ・・・いや、多分消えてしまうだろう。
「・・・解った。でも、勇者倒せっていうけど・・・俺にそんなことでき――」
「あぁぜってーむりだな。お前、対して取りえなさそうだし。ってか神の加護受けた奴相手に真っ向から挑んで普通勝てるわけねーし。まっそこは特別サービスってことで俺様の力をすこーしだけ分けてやるからさ」
なんていうか話が色々ぶっ飛んではいるが・・・結論として言えば、俺は生き返ることができる・・・だが、その対価として俺は今まで生きて来た世界とは違う・・・異世界に行って勇者を倒さなくちゃいけないわけで・・・
「まっ!ぶっちゃけうまく行くとかぜーんぜん思ってないからさ!お前は自分の命のために必死こいて駆けずり回る道化をやって、俺様を楽しませてくれればそれでOKってこと」
「道化・・・ね」
「そっどーけどーけ・・・おっ!そうだいいこと考えた。お前の名前今から『クラウン=フーリス』ね」
「は?いや俺にはちゃんと名前が・・・」
「馬鹿かお前?自分殺した神の世界でもらった名前に何未練持ってんだよ。そんなもんさっさと捨てちまえ捨てちまえ」
いやいやいや、クラウンもフーリスもその殺した神の世界にある単語じゃん!とは流石に言うことはできなかった。クラウン=フーリス・・・それが俺の新しい名前になるみたいだ・・・一度神に殺されて・・・悪魔によってまた生きる道化の人生・・・
「ってことで俺様を楽しませる哀れな狂った道化師さんの冒険の始まり始まりー。ってことでいってらー」
「えっ!?ちょっちょっとま――」
俺がぼーっと新しい名前に色々感じている間に悪魔がさっさと送り出してしまった。まだ、どんな力をもらうとかどんな世界だとか説明をされぬままに・・・
神に殺された俺。悪魔に生き返らせてもらった俺。
この先どうすれば・・・
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