その日俺は死んだ ①
前略
なんでか知らないけど俺は死にました
草々
「・・・あれ?」
我ながら突拍子もない事で自分でも驚いてしまうが・・・なぜか理解できる。死んだ・・・間違いなく死んだ・・・俺が・・・でもどうして?
俺はほんの数秒前までただ普通に道を歩いていただけだった。別に大型トラックに轢かれたわけでもなければ、いきなり死ぬような病が発病したわけでもない。どこぞの死のノートに名前を書かれて心臓まひ・・・とかでもない。
まるで下手なマジシャンの消失マジックのようにワンツースリーで俺の命が消失した。消えたものが戻ってくることは・・・ない。
だけどなんで俺は自分が死んだって解るんだ?ってかここどこだ!?周りは・・・何も見えないけど、自分の体ははっきりと見える・・・暗いわけじゃないけど明るくもない・・・何これ?
『あーあ。霊魂がまだこんなとこに居るよ』
混乱している俺の目の前が突如眩く光を放ったかと思えばそこから一人の人・・・少年?っが現れた。白い布一枚で体を覆っているだけのその小さな体躯がやけに神々しく見える・・・
『神々しいって?当たり前だろ?僕は神なんだからさ』
神と名乗った少年はさも当たり前のように俺の心の中を読んでは鼻で笑って答えた。理屈ではなく本能的な何かで理解した・・・この子供は本当に神様だと。
ここがどこだかわからないにせよ今目の前に居るのが神様ならもしかして――
『はぁ?なんか勘違いしてるみたいだから、この神がてーねーに教えてやるけどな。僕はお前を助けたりなんかしないよ』
「・・・え?」
僅かに芽生えた希望が一瞬にして潰えた。神を名乗った少年は俺を助けるわけじゃないと言った・・・じゃぁなんのために?
『できそこないがっ!神と直接話そうなんざ図が高いのにも程があんだよ!おまえは黙ってさっさと虚無の中に消えてくれ』
「あっ・・・ぁ・・・ぁ・・・」
そんな突き放すような一言を合図にするかのように俺の身体が少しずつ消え始めて行く。痛みも苦しみもない・・・何も感じない・・・だが・・・だからこそそれが恐怖となって湧きあがる。叫びたいのに声がうまく出ない。そんな俺を見て何か満足したかのような神を名乗った少年は『これで問題解決。さっ!愛しい愛しい僕の世界が救いを待ってるっと』だけ言い残してどこかへ消えてしまった。
湧きあがる恐怖。それに比例してひろがっていく感覚・・・いや感覚を失っているという方が正しいだろう。
「俺はこのまま消えるのか?・・・このまま・・・このまま?・・・なんで・・・消えなくちゃいけないんだ?俺が何をしたっていうんだ!?」
最後の力を振り絞って吐き出された叫びはどこに届くわけもなく、誰に届くわけでもなく・・・ただ虚ろの向こうへと溶けて消えた。
見ることも聞くことも・・・声を出すこともできず、最後に残ったのはループする絶望だけだった。
俺は死んだ。
俺は死んで、消える。
俺は神に忌み嫌われ、神に殺され・・・消される。
なぜ?なぜ?なぜ?・・・なぜ!?
――その日俺は死んだ――
「・・・おろ?なんか面白いものみーつけたっと!」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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神様の手違いで~とか、予想外の出来事で~とか、なんだかんだで味方してる神様。
でもそんなのより神様敵の方がいいんじゃね?ってすごい中二チックなのは気にしちゃいけません!