7:30の出来事
あなたは自分に残された時間をどう使いますか。
殺人犯に与えられた、残りの命を。
あなたなら何に使いますか。
銃声で目が覚めた。
まさかこの平和ボケした日本でそんな音が聞こえるなんて思ってなかった。
私はただ普通に生活を送っていた高校生だったはずだ。
何故、私の目の前には銃をもった男がいるのだろう。
そして私の部屋の天井には男が先ほど開けたであろう、穴から煙がでていた。
7:30
部屋のデジタル時計を確認する。
このままじゃ、遅刻決定かな。
何故か私には恐怖心が無かった。
今ここに銃を持った不法侵入の男がいるのに。
とりあえず、着替えたいな。
中学校時代のジャージにTシャツという部屋着。
ラフすぎるだろう。
この男が警察に捕まって私が救出された時に多少恥ずかしい。
こちらへ銃を向けたまま動かない男に向かって私は話しかけた。
「すみません、何をしているんですか」
男は私がしゃべるなんて思ってもいなかったようで肩を震わせた。
余程の小心者でもないのに、冷や汗までかいている。
なんだか見ていて可哀想なくらいだ。
男は銃を落としそうに危なげに持っていた。
ちょっとつついたら取り落としそうだ。
「あの、話を聞いていますか」
強気に言うと男は涙目になりながら口を開いた。
「・・・・・・な、なんですか。僕急がしいんですけど・・・・・・」
なんとかそれだけは言えたようだ。
なんだかすごく苛々してしまって。
つい一瞬のことだった。
その男のもっていた銃を奪ってしまったのだ。
案外重くて驚いた。
そして、これもつい、だった。
引き金を引いてしまったのだ。
腕に衝撃が走る。
サイレンサーがついていたにしては、音が大きく聞こえた。
2度目の銃声を近所の人はなんて思うのだろうか。
音にびっくりしていて前方を見ていなかった。
男はどうなったのだろう。
顔をあげた。
今までに見たことの無い量の、血。
顔に撃ってしまったらしい。
男のおどおどした顔は赤で見えなくなっていた。
ショックで痛みも感じずに死んでしまったのだろうか。
だとしたら、悪いことをしてしまった。
殺したい訳ではなかったのに。
あ。
私は殺人犯になってしまったのか。
思いもよらなかった。
これからどうしようか。
このままでは確実に私は捕まるだろう。
ジャージとTシャツで保護されるよりよっぽどいいじゃないか。
これからお気に入りのワンピースに着替えよう。
血で汚れた手は綺麗にして。
今までの平凡な人生から一気に転げ上がったような気持ちだ。
殺人犯はここにもいる。
私は捕まらないように逃げてみようと思う。
時間は有効に使わないと。