そいつは
そいつとの出会いは小学5年生の頃だった。そいつは友達が少なく、勉強も苦手であった。出会った頃からそいつは背も低く、人並み外れて痩せていた私にいつもいたずらをしてきた。そいつの親はいわゆる保護者の会のようなものに属し、息子をこれでもかという程溺愛していた。その頃から私は彼のことが好きになれず、中学2年の頃同じクラスになった時も良い気持ちにはなれなかった。中学2年の私といえば年相応に無知で、学校の先生には反抗し、それが影響してか友人は何人かいた。私は音楽の授業ではわざと下手に歌ってクラスメートを笑わせたりしていた。私の周りには勉強のできるやつも、できないやつも、走るのが早いやつも遅いやつもいた。勉強は自分の運動能力や芸術的感性が成績に反映されることに苛立ちを覚え勉強を放棄するまではクラスで5番目以内くらいにはできたが、運動は100メートル走を走れば下から3番目くらいだった。そいつは走力においては私の下くらいだった。そいつはクラスメートに叫べと言われたら授業中に叫ぶという芸当を見せ、一時人気者だった。ある日教室の掃除が終わるのを教室の外で待っているといきなりそいつに持ち上がられた。クラスメートは笑っていたが私はなにも愉快ではなく、むしろ不愉快でずっと笑いながら私を離そうとしないそいつにこれまでにない程の敵意を持った。脂肪も筋肉もない私はそいつの肥えた体の中でただ暴れ、そいつがゆっくりと私を下したかと思うと、目いっぱいのジャンプキックをお見舞いしてやった。私とて体重は40キロはあったわけで、そいつは壁に音を立ててぶつかった。私はそいつへ果たした復讐にある程度の満足をしていた。先生が何事かと教室を飛び出し、私に暴力で解決するのはよくないと叱った。そいつはまだ笑っていた。
私は大学に入り久しぶりにそいつの話を聞いた。そいつと同じバイト先のやつと酒を飲んでいた時のことだ。そいつは建築系の大学に入ったらしく、そいつがどうやって入ったのかは想像もつかなかったが、そいつの話を少ししている内にそいつのバイト先でどうしているのか少し気になった。そいつが真面目にバイトしているのだろうかという疑問からだ。聞いてみるとそいつはバイト先でお菓子を万引きしたらしくクビになっていた。




