6/7
謝罪文
私は傷害未遂で現行犯逮捕されて精神科病院に入院したけれど、被害者の安否は一切知らされていない。物理的に傷が付けば起訴されて実刑判決が下っただろうけれど、実際に傷は付けてなかったと思う。
けれども被害者に恐怖と心理的な傷を付けたのは確実なので、謝罪しなければならない。実際には被害者に会うどころか謝罪文を書いて送るのも不可能だ。仮に謝罪文が届いても被害者は読まないだろう。
申し訳ない、ごめんなさい。これらの言葉が非常に安っぽくなるほどの事をしでかしてしまった。私は卑劣な通り魔と変わらない。
誰でも良いから傷付けたいのであれば、逞しい犯罪者を選べばまだ良かったのかもしれない。何も落ち度の無い市民を傷付けそうになってしまった。我ながらに実におぞましい。
謝罪文を書こうとしたけれど、何も思い浮かばない。あらゆる単語が安っぽくなる。
逆に被害者の憎悪や嫌悪の言葉は私に届かない。何故だろう。司法と行政の限界を感じる。せめて被害者の怒りの声を直接聞けば、また私は違っていただろう。
被害者がこの事件と私に関わり合いたくないならば謝罪文ですら害悪になる。
何を言っても凶器になる。けれども謝罪の気持ちが消えることはない。




