ヒロイン2
最終回です。結局、強制力はなかったんでしょうね。現実だから。それを気にして、信じた2人の成れの果て……。
どうしてライバル令嬢が死ぬの? どうして処刑されるの? こんなのは知らない。ゲームにはないエンディング。バッドエンドなんて軽い言葉では許されない。
だって人が死ぬんだから。
これが現実って事なの? これが貴族なの? これが王族なの?
分からない、分からない、分からない、分からない、分からない……、分かりたくもない。
自分のせいで人が死ぬなんて。
浮気の告げ口1つ程度で処刑だなんて。
認めたくないから。
眠れない夜を幾つか過ごし、身体の限界が来て気絶する前に、強制的に意識を刈り取られ、ベッドに沈む。ーー此処は精神科の病棟だ。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(どうしてヒロインが!! どうしてヒロインなのに!!! こんなエンディングなのよ!!!)!!!!!」
自分の絶叫が耳に付く。言葉なんて忘れたみたいだ。バタバタと走る足音。また意識が消えるだろう。
……そんな生活が何年も続く。続けられたのは家からの寄付があったからだろう。人権意識も医学知識も十分ではない世界での、精神疾患を持つ人間への治療行為は、閉じ込めや拘束。もう暫くすれば精神外科(現在の脳外科へ連なる技術だが、この場合は脳に傷を付けて強制的に大人しくさせる感じ)の道も開くだろうか。だけれどその前に、過剰に接種させられた薬物のせいで人生を閉ざすだろう。
「かのじょはらいばるれいじょう、あくやくれいじょうではありません(彼女はライバル令嬢、悪役令嬢ではありません)。」
最期に近付くにつれ、口が勝手に呟く。
ーーああ、言葉はまだ覚えていたわ……。
お読み頂きありがとうございます。大感謝です!
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