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彼女はライバル令嬢、悪役令嬢ではありません。  作者: 美香


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7/8

攻略対象・知的派

前回より短いです……。

 ーー父上が正しいと思っていた。兄上が次期王だと思っていた。どうして2つは並び立たないのだろう……。


 勉強が楽しい。新しい何かを学ぶ事が楽しい。疲れる事なんてない、訳ではないし、空腹だって起こる。だけれどそれは、遊んでいたって起こるもの。違いは分からない。勉強に疲れて、集中力を喪う兄の気持ちは良く分からない。

「勉学に向いておりますね。第一王子(立太子前)殿下より成績は優れておりますよ。しかし余り社交が向いておりません。そこは第一王子殿下を見習って頂いて……、」

 教師達は挙ってそう言う。政治は成績だけで行える代物ではなく、寧ろ知識は一定レベルさえあれば、後は人との繋がりが重要視される、らしい。暫くは社交練習で時間を取られるのだろうか。

 新しい事を学ぶのは好きだが、身体で覚える事は苦手で、好きではない。社交は見えない、聞こえない人の心を察する技術が要るらしく、カテゴリーとしては身体で覚える範囲にも被っている様に感じる。平たく言えば、社交は苦手だ。楽しくない。理解出来ない。

「フェルディナンド殿下、お話ししませんか?」

 唯一の例外は将来の義姉だ。彼女は勉学を積み重ねる価値を分かっていた。彼女との会話なら有りの儘で在れた。


 それだけだった。


 兄から奪おうなんて思った事はない。


 だけど、それを証明する手立てはなかった。


 積み重ねた会話の時間は、そのまま不貞の証拠になった。世間では王になる為に兄である王太子の婚約者を奪おうとしたと思われているらしい。

「馬鹿馬鹿しい。王太子が婚約者次第で決まるなんて法律は有りません。あくまで王太子に相応しい令嬢が求められるだけです。仮にその令嬢を奪った誰かが居た処で、その誰かが王になれる訳ないでしょうに。」

「だからお前はダメなんだ。」

 取調室に現れたのは忙しい兄だった。一体、何の茶番か聞けるだろうか。

「何度となく言ってきた筈だ。社交を疎かにするなと。知識だけでは人は動かない。」

 溜息混じりで兄は言う。

「……最近は分かって来ましたけれど。」

「そうだな、昔に比べればマシになったな。だがお前の年齢を考えれば足りなさ過ぎる。」

「……父上に助言した事だって、」

「ああ、アレか。」

 父は祖父からの干渉を嫌がり、祖父を追い遣る手段を考えていた。本来、引退すれば王の権力は失われるもの。だけれど祖父は何故か、父よりも権威を奮っていた。それは可笑しい事だと識っている。だから父の味方に付いた。

「お祖父様の遣り方は正しくない。」

「で、そのお前の正義の結果は?」

「どうもこうも失敗したではないですか。」

「仮に成功していたなら、だ。」

「お祖父様は黙らざる得ないでしょうね。」

 離宮ーー王族用牢獄のーーに幽閉だろう。

「それだけか?」

「お祖父様にとても親しかった臣下が宮殿を去るでしょう。」

「他は?」

「他?」

 ……臣下と一言で纏めても、その立場は様々だ。立場によっては処刑される者も出るかもしれない。あくまでも「かも」だ。確定はしない。だけれど兄はそう言った事を追求したのではないと思う。

「……王太子は排斥され、新たに第二王子が立太子する。」

 呆れた口調だった。

「え……、」

「当たり前だろう。成功していればお前は完全に父上派と見做され、更に手柄を挙げている。他方、此方は……、お祖父様と父上は敵対するまでは同派閥、つまり何もしなかった者は中立派のどっちつかず。けれどその弟は父上派。であれば徐々に此方はお祖父様派とされるだろう。そうでなくとも派閥は割れる。だったら早々に王太子を交代させた方が良い。最悪、国が荒れるからな。」

「それは可笑しい! 兄上が罪を犯した訳でも、失敗した訳でもないでしょう!?」

 兄弟の序列は決まっている。兄が父の後を継ぐのは正しい事。例え弟が兄より成績が良くても。兄が失脚したり、天に召されたりした訳ではないのだから。そう習ったのだ。

「罠に嵌まれば事足りる。」

 叫ぶと短く、答えられる。「罠」の言葉に今の自身がそうなのだと気付く。現状が茶番ではない事も知る。

「私は……、嵌められた?」

 兄は沈黙し、何も答えなかった。

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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