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彼女はライバル令嬢、悪役令嬢ではありません。  作者: 美香


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6/8

攻略対象・王道

強制力の正体……。

 祖父の動きに気付いたのは何時頃だったか。母の無関心に気付いたのは何時頃だったか。自身より優秀だと思っていた弟の欠落部分に気付いたのは何時頃だったか。婚約者の意思、想いが確固たるものだと気付いたのは何時頃だったか。その全ての正確な処は思い出せない。

 祖父が弟に付けた見張りの1人は、ピンクブロンドの髪を持っていた。それが地毛かどうかは分からない。王家の、いや、王家に仕える者でなくとも、影ならば変装程度はお手の物だから。

 影の情報収集方法は、大別して2種類ある。完全に顔を隠し、闇に潜む方法と、顔を堂々と晒し、光当たる場に出る方法。情報には表と裏と、その間があり、影は主に裏とその間の情報を収集する。

 見張りのピンクブロンドを持つ女性は後者だったのだろう。彼女は役割上、弟の浮気未満の積み重ねを直ぐ傍らで見て来ていた。そんな彼女は多数の人間に姿を見られていた。

 同時に見張りは彼女だけでなく、完全に闇に潜む者も居る。だからだろう、此方にも回されて来る報告書は事細やかだ。一人言も盛らさない。

 不自然にならない頻度で弟の前に現れる彼女に付いて、彼女が居ない場で「ピンクブロンドって他にも居たのね」とフェルディナンドには聞こえない声量で呟いていた事も記されている。

 ピンクブロンドは確かに珍しい髪色で目立つ。彼女が知るピンクブロンドの持ち主が誰かは知らないが、少なくとももう1人、彼女の周囲に居るのだろう。


 ーーしかし記憶に無いな。


 ざっと思い返してみるが、ピンクブロンドの髪をした者は浮かばない。婚約者の周囲の人間を全て理解している訳ではないが、それでも此方に影響がある家の令嬢や令息ならば、直接知らなくても存在を気付けた筈だ。つまりその誰かは重要な者ではないのだろう。そう結論付けて間もなく。その少女は現れた。

「失礼します、王太子殿下で宜しいでしょうか。」

 初めて見るその令嬢はピンクブロンドの持ち主だった。彼女の受けた言い掛かりの話を聞いて、ピンと来た。どうやら顔出しの影と間違えられた様だ。

「兎に角、第二王子殿下から否定して頂けないかと思い、足を運ばせて頂いたのですが……、その、申し上げ難いのですが……、」

 そんな彼女の齎した情報は重要だった。それはフェルディナンド達の接触を浮気と見做している者達ーー目の前の彼女を含めるーーが居ると言う事だ。外から見て、そう見えると言う事実は、今回に於いて必要であった。

「君に詰め寄った令嬢方の名は分かるか?」

 いよいよ祖父の灘が奮われる為のピースが嵌まろうとしていた……。


 

 祖父への報告後、彼女を近くに寄せる事にした。これは混同されてしまった影と彼女が別人だと知らしめる為だ。理由を明示していた事と「王太子の婚約者の不貞」が先に認知されていた事があり、「王太子の不貞」の噂は広がらず、逆に突然、「婚約者の居る身で〜」と言い出した結果、「まるで悪役令嬢だ」と噂は広まった。

 コレに慌てたのは「密やかな恋」とフェルディナンド達を持て囃していた令嬢達だ。令嬢達の立場は元より、婚約者である彼女の手下達だった。と言っても彼女がその重要性を何処まで認識していたかは怪しい。

 家の繋がり上、令嬢達は王太子妃の側近候補として見られる為、通常は結果はどうあれ、能力を見る為にも側に寄らせるのだが、彼女はそうした事はしなかった。令嬢達はそれで判断を誤り、ご機嫌取りに走ったのだ。それがあの言い掛かりにも繋がった。

 そして更に今回の件で、令嬢達はまた判断を誤った。今度は「婚約者を差し置いて王太子と親しくなった」と攻撃理由を変えて来たのだ。

 当然だが、此処の流れは逐一報告している為、どの家も家としては静観している。後押しも静止もなく、排除もない。あくまで学園内の喧騒に治める事で、祖父の灘が奮われる範囲を狭める為だ。

 此等は只の男爵令嬢にいちいち教える事ではないが、自身を守る為、彼女に離れる選択肢はない。

 また、今までの行動のツケだろう、一部の暴走令嬢達の保身を見抜けない婚約者は事を上手く納められず、相当に焦っている様だ。ーージワジワと彼女の評価は落ちて行く。但しまだ学園内のみだ。


 ーー先王陛下が今上陛下に御成になれば、断罪が行われる……。学園内の評価が意味を持つのはその後……。


 彼女に同情はなかった。その事は少し憐れだった。最初からフェルディナンドの婚約者であれば。そうでないならばせめて……、父母の教育が行き届いていたら。或いは祖母が生きていたら、祖父が引退していなければ。何か1つでも違っていれば、彼女は破滅しなかった。

 

 ーーそれだけじゃない……。彼女も未来を喪った……。


 何も知らないからこそ、自分のせいだと責めるピンクブロンドの男爵令嬢。髪色が違えば、彼女が巻き込まれる事はなかった。

 彼女が持って来た情報は重要だったが、どの道、それが無くとも、それなりの罠が仕掛けられただろう。それを知らない彼女は泣く。

「どうして!? 彼女は悪役令嬢じゃない!! ライバル令嬢なのに……!?」

「『ライバル令嬢』?」

「そうです!! 彼女はライバル令嬢、悪役令嬢ではありません!!」

「……可哀想に。動揺しているんだね……。」

 現実を物語だと認識してしまう程に。

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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