脇役3
この人もまあ……、ってな感じです。
甘えたの、頼りない息子。それは王を継ぐ者として懸念事項であった。父は王位を退くと間もなく亡くなり、玉座の上で頭を悩ませる。
「貴方も甘えた、ですわよ?」
そうしておっとりと見えて、しっかり者な愛しい妃に宥められるまでがルーチンだった。
「まだあの子達も若いのですから、これからですわ。」
妃は立太子した息子夫婦に様々な助言を行っていた。政務とは別分野で、だ。
ーーお前が生きていたら……。
彼女が生きていれば、息子の性格も少しは学びを得ただろう。だが、それは「もしも」の話で、純然たる歴史に於いては無意味なものだ。
彼女は亡くなり、精神の安寧を喪い……、早々に引退した。息子は国王として若過ぎた。その頃には孫が2人存在していたが、彼等の誕生、特にジークフリードの誕生の頃は余り記憶に残っていない。
国王の重責から離れ、漸く心が落ち着き、周囲や記憶を振り返り、愕然とした。
ーーイカン、王妃の負担が大き過ぎる。
甘えたな息子は静止する母親を失ってから、自身の妃に対する依存度が強くなっていた。義娘がそれを喜んで受け入れているならば、夫婦仲に口を出そうとは思わないが、明らかにそうではなかった。
そして更に頭の痛い点が、義娘の負担の皺寄せが2人の王子に向かっている処だ。ジークフリードは能力はあれど、浮気素養が高いと判断せざる得ない令嬢を婚約させられている。フェルディナンドは明らかに政治家向きではない人格をしているのに、通り一遍等な第二王子としての教育しかされておらず、このまま行けば、政治的に無能か低能にしかならない。
更にジークフリードの婚約者は未来の王妃となるに関わらず、その教育もまた、形だけのもの。
外から来た令嬢が一番自由奔放で、それが許されているせいで、何時しか能力の高い彼女が次代の王になると言わんばかりの空気が形成されてしまっている。
この事態に要職に着く者達を呼び出してまで、息子夫婦と話し合う時間を持ったが、情けない事に王でありながら、妃の言いなりで政務を行っている現状までもを把握しただけに終わった。
既に引退した身。今更、とやかく言われたくない息子の気持ちは良く分かる。だが全てに於いて、文句を言われない為に形だけ整えられた王妃業務ーー子育て含むーーに、そうと気付かない息子に口を出さないでいる選択肢は無かった。
その後は当人達への忠言だけでなく、孫2人にも出来得る限り、関わる様にした。そうしてつくづく分かった事は、フェルディナンドに政治は不可能だと言う事だ。しかし第二王子にはスペアとしての役割もある為、完全に政務から離れた生き方を許す事は出来ない。
その辺りをフォロー出来る令嬢を伴侶に据える必要が有るだろう。そしてフェルディナンド当人の政務は最低限にし、代わりに別口でフェルディナンドが得意とする分野で何らかの業務をさせるべきだろう。研究職等が向いていると思われるので、そちら方面で考えた。
だが子の教育は母親が決定権を持つ。当然、采配の指示もである。従ってそれを通り越す様な真似は出来ない。そして進言しても聞き入れない息子夫婦。
子に対する愛情ではなく、保身の為の最低限でしか物を考えられなくなった妻に、そうと気付かず、全体重で伸し掛かり、言いなりになっている息子。遅々として現状は変わらない。
ーー灘を奮う必要があるな……。
覚悟は決めた。重臣達に話を通し、着々とその準備を進めて行った。
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