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彼女はライバル令嬢、悪役令嬢ではありません。  作者: 美香


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ヒロイン

ヒロイン視点です。どうしてフェルディナンドが処刑されたのか、が少し判明します。

 フェルディナンド第二王子。キャラ設定は知的派。彼を攻略するには兎に角、高い学業成績を誇る事。彼はその努力を褒め称え、認めてくれる。だけど結果が伴わければ、努力を認める事は無く、辛辣な言葉を吐く。現実的には「学校の成績でマウントを取る陰険男」が正解。

 他にもゲームの魅力的なキャラは現実で言うと……、と言う特徴が濃い。だからゲームの王道キャラで、一番クセがなく、一番低人気となってしまったジークフリード王太子が、現実的に言うと一番アリだった。……推しではなかったけれど。


 ーー何の話かって? 私が乙女ゲーム「友愛と恋」に、ヒロインとして生まれ変わったって話よ。


 その事に気付いた時は歓喜した。でも同時にヒドインにならない様に気を付けなければならないと気を張った。そして詰め込まれる淑女教育に歓喜は霧散した。

 

 ーー流石はヒロインだわ(ゲッソリ)。


 スペックは高い。スキルは身に付く。だけれど心は平民のまま。つまりはしんどい状態。


 ーー身の丈に合った生活が一番よね。


 攻略対象達は皆、高位貴族。ジークフリードやフェルディナンドなんて王族だ。関わるかもしれないと考えるだけで、胃痛がする。

 何時しか、「将来は平民に戻りたい」と考える様になった。


 ーーあら、転生者は私だけじゃないのね。


 それに気付いたのは、「現在の貴族社会で知っていて当然の話」を学んだ時。ゲームではフリーだった攻略対象達だけど、この現実ではジークフリードが婚約していると知った時。これが「攻略対象含む高位貴族には大体、婚約者が居る」と言うならば、「ゲームと現実は違う」となったかもしれないけれど、そう言う訳ではなく、ジークフリードだけが婚約している状態。それも相手はヒロインと競い合う、通称ライバル令嬢。転生者だと直ぐに分かる。


 ーーゲームを知っているの?


 時代の寵児みたいな評判のライバル令嬢。ジークフリードの婚約者。転生者である事は分かるけれど、プレイヤーだったかどうかまでは分からない。


 ーーまあ、彼女も高位貴族家の令嬢だし、男爵令嬢の私と接点なんて、普通はないか。


 話に依ると、低位貴族も高位貴族も同じ学園に通うものの、校舎等、使用する施設等は完全に別になっており、積極的に動かないと低位貴族家の生徒と高位貴族家の生徒が頻回に会うとかまずない様だ。気にする必要はないと判断した。けれどーー……。


 ーー何でこうなるの……?


 基本、制服姿の生徒しか居ない、低位貴族の教室に場違いな程、高価なドレスとアクセサリーを身に纏う、複数の高位貴族令嬢達。

「ちょっと、フェルディナンド第二王子殿下に付き纏ってどう言うつもりかしら?」

 付き纏うも何も会った事すらない。なのにどうしてこうなるのか。クラスメイトが驚きながら、遠巻きにしている。やがてはヒソヒソと囁く声にもなる。


 ーーまさか……、強制力!?


 思い当たるのはそれしかなかった。ライバル令嬢はこのまま行けば、ジークフリードと結婚する。ゲームではヒロインがフェルディナンドを攻略した場合、ライバル令嬢のお相手となるのがジークフリードだ。

 この現実ではライバル令嬢が先んじてジークフリードとの婚約をゲットしているから、ヒロインにフェルディナンドを充てようとシナリオが動いているのかもしれない。其処に考えが至った処で、話は冒頭に戻る。


 ーー画面の中では素敵に見えたけど……。


 乙女ゲームに限らず、創作物のキャラクターと言うものは、現実に存在する人間と比較して、濃い。

 その濃さは全てとは言わないが、現実ではマイナスな一面に通じる。其れが酷いとお付き合いしたいとは、お世辞にも言えない人種となる。


 ーージークフリードが一番マシかしら。


 と、現実逃避している場合ではない。もし強制力が働いているなら、此れは多分、虐めイベントだ。

 恐らく婚約期間が長く、ジークフリードが完全にライバル令嬢に傾いていて、その為に男を取り合う部分がすっぽり抜けていて、その上でライバル令嬢と知り合っても居ない為、虐めイベントが開始してい、る?


 ーーいや、でも待って。


 ゲームのエンディングには失恋バッドエンドがある。この場合、ライバル令嬢に攻略対象を取られて仕舞い、ヒロインに対する救済措置はない。


 ーーそれなのにどうして?


 ゲームのシステム上、攻略失敗はあれど、全員完全未攻略エンディングは無かったから、強制力が働いているなら、誰かと接点を持たせようと虐めイベントが起きるのは一応、理解出来る。

 ライバル令嬢が先んじて行動している為に、其処に合わさる、と言うのも。

 けれど失恋バッドエンドもシナリオの1つ。フェルディナンドを巻き込むよりも、ジークフリードだけに絞られる方が自然だ。


 ーー何かあるんじゃない……?


 兎に角も今、ハッキリ分かっているのは男爵令嬢らしく、生活するのは難しくなってしまったと言う事。強制力が働いているなら、従っていれば断罪からのザマア返しで、多分、将来がロクでもないものになる事。


 ーー冗談じゃないわ!


 恐らく強制力と言っても、そう強いものではないだろう。ライバル令嬢とジークフリードの婚約が、ゲーム開始時よりもずっと以前に成立済みな事がその証。


 ーー先ずは話をしないと……!


 教師に追い返される令嬢達を見送りながら、バッドエンドを避ける為に動く事を決意したのだ。

 


 ライバル令嬢がフェルディナンドと逢い引きしている。転生者同士で話をするつもりで、高位貴族令息・令嬢用の学び舎に足を踏み入れた先でソレを見てしまった。

 高位貴族家の学生が学ぶ校舎と低位貴族家の学生が学ぶ校舎。同敷地内にある為か、学生の行き来は禁止されていない。用も無いのに、自身の学び舎ではない校舎に行く事がないだけだ。

 言い換えれば、用があれば尋ねる。その用が虐めであっても、だ。禁止はされない。見目麗しい高位貴族家の誰かの鑑賞目当てに、訪ねる事も禁止されない(流石に講義を妨げる事は許可されていない。高位貴族令嬢達が追い返されたのは、その辺りに抵触するから)。

 

 ーーはーん、そう言う事ね。


 ゲームイベントを現実で起こすには、かなり積極的に動く必要がある。だから意図的に動こうとしなければ、フラグも立たない。これはヒロインが低位貴族令嬢で、攻略対象は高位貴族令息だからだ。

 一方、ライバル令嬢は高位貴族令嬢。確かにヒロインよりは出会いも簡単だろう。偶発的に依るものも有り得る。

 只、現実である今、ライバル令嬢は既にジークフリードと婚約している訳で……、本来ならそう言ったフラグは、起こさない様に気を付けなければならない。

 

 ーーなのに積極的にフラグを立てたのね。


 それが分かるのは2人の会話が原因だ。あれはゲームイベントだ。ヒロインとフェルディナンドとの間で起こすイベント。

 確実にライバル令嬢はゲーム内容を知っているのだろう。そしてフェルディナンドを攻略しようとしている。


 ーーライバル令嬢の推し……、本命はフェルディナンド。多分、王族入りしようと努力したらジークフリードの婚約者になっちゃった、って処か。


 ゲームは全年齢対象だった。その為か、イベントも友情以上恋人未満程度。1つ1つは浮気には届かない。義弟になるから交流を持っているだけ、とも言える。


 ーーだから見逃されてるのかしらね……。ジークフリードには王道キャラらしい寛容さもあるし。


 その寛容さはタラシキャラのものとは違う。だからか、嫉妬イベントもなかった。そんなジークフリードなら、静観している可能性がある。そして婚約者のジークフリードが黙っているから、周囲も口を閉ざしているのかもしれない。

 

 ーーでも……、強制力とは言え、「フェルディナンドに近寄るな虐め」が始まってるのだから、浮気と見做している人も居るんじゃないかしら。


 あの虐めイベントがライバル令嬢の行動に依るものだとしたら、既にフェルディナンドとの親密度が、ジークフリードとの親密度を越えている筈だ。1つ1つは浮気と断定する事は出来なくても、それが重なれば……、と言う事だろう。


 ーーだったら……、彼女と話するのは危険じゃないかしら。


 経緯は兎も角、ジークフリードと婚約している状態で、フェルディナンドの攻略に掛かっている状態。ライバル令嬢は浮気を忌避しないタイプなのか、それとも何処か「ゲームの世界」と目を曇らせているのか。どちらにせよ、まともに話が出来るか不安だ。


 ーーそうね、駄目元で行ってみよう……。


 2人に気付かれない内に踵を返す。ゲーム内容を想起して、当たりを付けた場所に向かう。予想に違わず、見付けられた。

「失礼します、王太子殿下で宜しいでしょうか。」

 学園では身分の低い教師が、身分の高い貴族令息・令嬢を指導しなければならない関係から、学生の間は平等、と言う建前がある。

 建前は建前で、それ以上ではない。しかし、この建前があるから、時に身分を超えた絆が生まれる余地もある。そして多少の無礼は咎められない。

「そうだが、君は?」

 ましてや寛容なジークフリードなら尚更で、嫌な顔1つ見せない。


 ーー取り敢えず、話は聞いてくれそうね。


 会った事もないフェルディナンドに付き纏っていると高位貴族令嬢に詰め寄られた事を訴える。

「教室では他の皆様からも、先生からも疑われている様に思われて……、兎に角、第二王子殿下から否定して頂けないかと思い、足を運ばせて頂いたのですが……、その、申し上げ難いのですが……、」

 姿を見付けた処でライバル令嬢とフェルディナンドが仲睦まじく話をしていて、とても声を掛ける事さえ出来なかった事にした。嘘と真実を混ぜておく。ポイントは浮気だと決定付ける事は言わない。根拠等、求められない只の感想を話し掛けなかった理由にするだけ。責任は取りたくない。

「君に詰め寄った令嬢方の名は分かるか?」

 分かる。ゲームで出て来た虐めキャラと同じだ。名前を上げるとジークフリードは頷いて、対処を約束してくれた。



 ーーえ? 嘘、処刑!? フェルディナンドが簒奪を企んだ!? え、あのガリ勉が!!? え、ライバル令嬢まで!? ど、どう言う事!? わ、私のせいなの!!?? いやああああっ!!!

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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