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二人の想い、重なる瞬間

 「掲示板のほう、少しだけ落ち着きを取り戻してきたぞ」

石川 拓海はスマホを見せながら、光太に報告した。

学内のカフェテリアで並んで座り、画面をのぞき込むと、確かに“デマだよ”“いい加減やめとけ”という書き込みが増えている。


「最初は叩きばかりだったけど、ひどすぎる書き込みは削除されたし、徐々に味方してくれる人が出てきてる」

「ありがたい。誤解を解こうって呼びかけたのが効果あったのかもな」


光太が小さく安堵の息をついたとき、未来が合流してきた。


「ごめん、待った?」

「ああ、いや。ちょうど掲示板の話をしてたんだ。少し状況が落ち着いてきたみたいで」


未来はほっとしたように、カフェテリアの椅子に腰を下ろす。


「よかった。職員の方が学費援助を検討してくれるって話も進んでるし、なんとか最悪の事態は避けられそう」


拓海はにやりと笑い、ドラムスティックを指で弄びながら言う。


「ならあとは、光太が一番大事なことをはっきりさせるだけじゃね?」

光太は「はあ?」と驚いた声を出す。


「大事なことって……何だよ」

「未来をどう思ってるのか、その気持ちをちゃんと伝えないといけないだろ。ずっと一緒にいようとしてるわけだし」


彼の言葉に未来は目を丸くし、光太も赤面しそうになる。


場所を移して、三人は人目が少ない中庭のベンチに座ることにした。

拓海が軽く伸びをしながら、「俺はちょっと離れてるから、話は二人でしてくれ」と席を外す。

光太は少し落ち着かない表情をしていたが、意を決して未来に向き直った。

「その……今までずっと助けたいって思ってきたけど、単に友達だからとか、そんな単純な話じゃないんだよな。俺、未来のことが……好きなんだと思う」

未来は目を伏せ、耳まで赤くして小さく息をのんだ。


「でも、私、配信してたし、いろんな迷惑もかけちゃったよ。汚いって思わない?」

「そんなわけない。むしろ、つらい状況の中で必死になってた未来を見て、もっと応援したいって思ったし、正直守りたいって感じてた。

それに、今回の噂のせいで傷ついてる未来をどうにか笑顔にさせたいって……」


光太の言葉はぎこちないが、必死さが伝わる。

未来はそっと目を上げ、唇をかみしめながら言葉を絞り出す。


「ありがとう。こんなに私のために動いてくれる人がいるなんて思ってなかった。私も、ずっと光太くんがそばにいてくれると安心するし……好きって気持ち、ちゃんとあるよ」


その瞬間、光太は思わず息を止めた。


「本当……なのか? 俺で大丈夫?」

「うん。私が配信やめたあとでも、生活に苦労するときがあるかもしれない。でも、光太くんがいてくれるなら頑張れると思う」


光太は心の奥で大きくうなずき、未来の手をそっと握りしめる。

未来もそれを拒まない。


少し離れた場所で待機していた拓海が「おいおい、イチャつくのはほどほどにしてくれよ」と笑い声を上げる。

二人は慌てて手を離しそうになったが、未来はしっかり握ったまま離さなかった。

その姿を見て拓海は「おめでとうさん」と目を細め、軽く手を振る。

光太も恥ずかしそうに首をかしげながら、「ありがとう」とつぶやいた。

未来は顔を赤らめつつ、それでも笑顔を浮かべている。


大学のごたごたやお金の問題はまだ解決しきったわけではない。

だが、少なくとも今は互いの気持ちを確かめ合ったという自信がそこにある。

光太はベンチに腰かけたまま、未来の手を握る温もりをかみしめていた。

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