性奴隷の勤め
お姉ちゃんは家の隅っこの小さな部屋で寝起きしている。
もっと良い空き部屋があるのに、ここが落ち着くらしい。
寝台とソファ、クローゼットと小さな本棚。小さなテーブルとモニター。
何もないわけではないけど、飾りっ気のない簡素な部屋だ。
本棚には歴史小説と落語CDが並んでいる。あと『花と蛇』が全巻揃ってる。
『鬼ゆり峠』や『プリアポスの神』も並んでいる。
表情の起伏が乏しいお姉ちゃんだけど、本棚は蠱惑的で表情豊かだった。
そのためか、日本語の語彙と常識が偏っている。
ベッドのヘッドボードには真空パックされたリンゴの切れ端が飾ってある。
僕が小さい頃、好きなリンゴを大好きなお姉ちゃんに分け与えたらしい。僕は覚えていないんだけど。
お姉ちゃんはいたく感銘を受けたらしくリンゴを保存して飾っている。
事情を知らなければ不気味でしかない装飾品だ。
事情を知っていれば美談になるかな。
いや、いくら感動しても飾らないでしょ普通。
食べかけだよ。変色してるし。
僕も飾っていることを知った時はちょっと引いた。
けれど幸せそうにリンゴを見つめるお姉ちゃんに何も言えなかった。
容易に住人の人格が伺う事が出来ない部屋模様だけど、歪な部分が随所に垣間見える。
僕の口中を蹂躙していた舌がようやく引き抜かれた。
「坊ちゃま・・・」
「お姉ちゃん・・・」
「坊ちゃまの坊ちゃまが、もうこんなに雄々しくそそり勃たれて・・・」
自分のものは直接的に表現するのに、僕のものは遠回しに表現することが多い。
『直接言葉にするのは不敬というものです。もちろん直接しゃぶりますけれど』とのことだけど、お姉ちゃんなりの照れ隠しなのかもしれない。
一応は羞恥心が少しはあるのかも。
「坊々(ぼんぼっ)ちゃま・・・」
でも略さないでほしい。
既にお姉ちゃんはメイド服を脱ぎ捨てており、変態的で扇情的な黒い下着姿を露にしていた。
下着の機能を官能面に全振りした透け透けタイプなやつ。
メイド服を失い、これで変態メイドがただの変態になったかと言えば然に非ず。
「メイドキャップは外さないの」
「メイドキャップは外しません。メイドですので」
確かに、それまで外してしまうとメイド要素がなくなってしまう。
「私からメイドを取ったらただの変態ですので」
「自覚あったんだ。でも今日は髪を解いたお姉ちゃんを抱きたいなあ」
躊躇なく一瞬でメイドキャップを外して金髪をたなびかせた。
「魂のメイドキャップは常に装着しておりますのでセーフです」
「よかった、ただの変態さんはいなかったんだ」
「本日五月十日は『メイドの日』でございます。メイドの限りを尽くして差し上げます」
ふざけているようなセリフだけど、お姉ちゃんが大真面目であることを僕は思い知っている。あとメイドの日に関係なく常に全力を注いでいることも。
「なんでメイドの日なの?」
「May十の語呂合わせでございます」
「日本独自の記念日なのね、日本はメイド好きだよね」
「私も坊ちゃまのことが大好きです」
お姉ちゃんは割とすぐに張り合いがち。
メイドの日なので主導権をそんなお姉ちゃんに渡すことにして、食べかけのリンゴが飾ってある異様なベッドへと誘われた。
Tバックが脱ぎおろされると、お尻の谷間には紅いジュエリーアナルプラグが輝いていた。
浣腸して綺麗にして解して、常時戦場スタンバイしていたのだろう。
ごめんね、出番がなくて。
お姉ちゃんにメイドの限りを尽くしてもらい疲労困憊、絞りつくされた僕はそのまま寝入ってしまった。
夜の帳が落ちた頃。
目を覚ますとベッドの脇にはメイドが佇んでいて、さりげなく水の入ったコップを手渡してくれた。
先ほどの痴女と同一人物とは信じられないぐらい毅然とメイドしている。
ジキルとハイドかな。
「お食事になさいますか、お風呂になさいますか、それともワ・タ・シ?」
中身は変わっていなかった。
冗談などではなく、ワタシを選んだらお姉ちゃんは喜び勇んで二周目に雪崩れ込むつもなんだ。
冗談だと思った過去の僕はヒーヒー言う羽目になった。
「食事にしよ」
性欲と睡眠欲の次は食欲の番だ。
「それではご準備いたします」
お姉ちゃんは、メイドたるもの給仕に徹し、食卓は共にせず別にとるべきと主張したこともあったけど、一人で食べるのも味気ないので一緒に食卓を囲むことにしている。
お姉ちゃんの料理は美味しい。
小さい頃は美味しいのが普通だと思ってたけど、大きくなって外で食べることが増えるにつれ、自分が普段食べている手料理が格別に美味しい事と、そのありがたさに気付いた。
見た目は北欧風なお姉ちゃんだけど、その食文化はすっかり日本流に染まっていて和洋食を中心にレパートリーは多岐にわたる。
それからお姉ちゃんはあまり肉を食べない。
性欲は肉食系なのに食べ物は採食主義。
僕は育ちざかりの肉食主義。
なので、同じ食卓でも品目が多少異なっている。
美味しそうな香りが漂ってきたところで、ベッドから這いずり出て食卓に向かった。




