その7 砂入りのバケツを投げつけたので避けようとして腕をバケツがかすめた
◆◆◆ その7
「おはようございます。」
数日後、もう一人の手のかかるソウ君が庭で遊んでいた。年長さんともなると庭遊びでも全力で駆けまわったり、小型遊具を友達と投げっこしたりととてもパワフルである。
涼子は女の子同士のトラブルからめそめそ泣いて部屋から出ることができない若葉ちゃんの相手をしていた。
そんな時、
「あっ、危ない。」
庭から怒鳴り声が響いた。ソウ君がレン君に向かって砂入りのバケツを投げつけたのである。避けようとしたレン君の腕をバケツがかすめた。
驚いたレン君はその場にもんどりうってひっくり返り、激しく泣き声をあげた。涼子はすぐに庭に出るとレンとソウを引き離し、レンの腕を見た。幸い折れている様子はなく、小さな擦り傷ですみそうである。
「大丈夫? 痛いところある?」
涼子はしゃがみ込んでレンに話しかけたが、レンは泣くばかりで話にならない。
「ちょっと見せて。」
涼子はレンのシャツを脱がせ、腕の様子を見始めた。
「んー、これは、アザになるかもなぁ。とりあえず冷やしたほうがいいか。」
涼子は台所に走ると氷水の入ったボウルを持ってきて、タオルにくるんでレンの右腕に当てた。
「レンくん、今日はもう部屋に戻ろうか。」
「やだ! まだあそぶんだあ。」
けがをしたというのに元気なレン君に涼子はほっとしたが・・・。
「涼子先生、またあなたのクラスなの。」
いつの間にか、園長が駆けつけて、涼子の隣に立っている。
「すみません。私は部屋で子供の対応していたので」
「言い訳するの。」
「ですが、サポート先生に外を見てもらっていたのですが。」
「ですが、ですが、そればっかり。自分のクラスなのだから、こうなることくらい予想できたでしょう。」
「・・・」