【Epilogue】
「ねー、よっくん」
唐突に翼が口を開いた。
このところ、ようやくスムーズに繋がれるようになって来た二人。
「僕ね、よっくんのことすっごく好きだよ」
今、そんな流れではなかった気がするのだけれど。
相変わらずベッドに並んで腰掛けて、取り止めない会話を交わしていた。というより、口を動かしていたのはほぼ慶尚一人ではある。
怪訝に思ったものの、恋人に好意を告げられて嫌な筈がない。
と、その瞬間慶尚は気づいてしまった。果たして自分は、翼にはっきり口に出して想いを告げたことがあっただろうか、と。
慶尚は必死で記憶を辿るが、どうにも覚えがない。……これは、さすがに不味いのではないか?
普段は、いや今だってペラペラと軽薄に映るくらいに喋りまくっているのに。
……他の場では、確かに人付き合いの潤滑油として努めてそう振る舞っている部分も大きいのは確かではあるが。
それにしても、慶尚はどこから見ても「黙って俺に着いて来い」というタイプではないのだ。
なのに肝心の想いを告げていない、なんて。
翼はそれでも言葉を強請ったりはしない。好かれているのはわかっているからそれでいい、と思っているのだろうか。
だからと言って、それに甘えたままでいいのか?
「なぁ、翼」
そう考えて勇気を振り絞ることにした。大袈裟だが、慶尚にとってはそうとしか表現できないことだったのだ。
「……愛してるよ」
今まで二十年以上生きて来て、慶尚は本当に「愛してる」などという言葉を口にしたことはない。
甘い、甘ったるい、『好き』の最上級の言葉。
ハート型の飴玉を舐めているような、口の中に溢れる糖分。
──あぁぁぁ! ダメだ、走って逃げたい! よく頑張った、俺!
内心パニックに陥りながらも、何とか平静を装って斜め下の恋人の顔にそっと目を向ける。
いつも平然としている翼がみるみる赤くなったのを見て、慶尚は思い切って恥を晒した甲斐はあった……、と自己満足に浸っていた。
~END~
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