極道シスターVS黒騎士
京真の銃撃を機に残りの二人がサーベルを手に襲いかかってくる。
「このクソが!死ねえええ!!」
「生きて帰れると思うなよ!」
だがチンピラの速度など、たかが知れていた。
京真は真正面から奴らの横薙ぎを躱しながらスカートの中に手を入れ、何かを取り出した。
「遅いな、三下」
それはロングナイフだった。
その次の瞬間、彼は凄まじい踏み込みを見せ、一瞬で男との間合いを詰める。
「なっ…はやっ…ッ」
驚嘆の声を上げかけたところで。
「クズを守りながら死ぬ人生、ご苦労さん」
閃光の様な斬撃で奴の首元を一瞬の内に斬り裂いた。
片方がやられたのを見て、もう一人は標的をルシーラに変えサーベルを振り下ろす、が彼女にそれが当たることはなかった。
「この高位女神を……舐めるんじゃないですよ!!」
レガリアスが、何処からか取り出した大振りのチェーンソーで奴のサーベルを受け止めていた。
「な、なんだこの武器は……サーベルが動かねぇ…」
レガリアスが力任せにチェーンソーを押し込むと途端に刃へと食い込む。
「高位女神の有難い鉄槌です!さぁ天界に行きましょう!!」
そして異常な力に耐えきれなくなったサーベルは主諸共、両断してしまった。
「ナイスだ、エロ女神」
「エロ女神じゃないですよっ!!流石にそのあだ名はやめてくださいね!」
しかしそんな会話をしてる余裕もなく部屋の外からは増援が湧いてくる。
「京真さん、増援は私がなんとかしますんであなたはハードックを!」
それなら俺は奴を狙うか。
ハードックは忌々しそうに京真を見つめる。
「クソが…この役立たず共め……おい黒騎士!!コイツらを始末しろ!」
先程まで動いてなかった甲冑姿の大柄な男がハードックの一声で巨大な斧を構えた。
「反逆者共が…この黒騎士に武器を抜かせて勝てる奴などおらぬ…」
全く舐められたもんだ。
しかしあの甲冑、チャカでやり合うには少々キツそうだ。
またもや京真はスカートの中に手を入れて球体状の何かを取り出した、そしてそれを黒騎士目掛けて投擲する。
「初めまして黒騎士さん!これはお近づきの印ですっ!」
それは手榴弾だった。
「なっ…なんだそれはっ!…グァァッ!!」
手榴弾は黒騎士の眼前で爆発する。
しかし。
「ぐ、ふふ……甘いな…甘い!これくらいの攻撃で黒騎士が倒れるなど甘いわァァァァ!」
そして奴は力任せに斧を振り抜く。
そしてその刃は京真の長いスカートを切り裂く。
「おいおい、パンツが見えたらどうするんだよ、このデカブツ」
「ふん、俺の斧を受けて掠るだけだとは、貴様なかなかやるな」
(あの鎧、とんでもない強度だ、手榴弾の爆発をほぼ無傷で耐えるとは)
しかし、京真にはまだ策があった。
「属性付与-灼熱-」
そう呟いたその次の瞬間、彼はベレッタを高速で抜き、奴の腹の甲冑目掛けて銃弾を撃ち込む。
「そんな飛び道具如き、効くはずが……なっ…これはっ…」
なんと黒騎士の腹辺りの鎧が溶けて無くなって居たのだ。
「何をした貴様ッ!」
「なぁに、ただ銃弾に灼熱属性を纏わせただけさ」
これで奴の急所は完全に露出した。
そして京真は勢いよく黒騎士に向けて突進。
しかし奴も凄まじい速度で大斧を振り下ろす、それは京真の太もも辺りを軽く削ったが彼は完全に奴との間合いを侵略していた。
「さぁ逝け、お前めちゃくちゃ強かったよ」
そしてロングナイフを奴の土手っ腹に深々と突き刺し、そのまま豪快に引き裂いた。
「ぐ、グァァァッ……み、見事…」
大量の血飛沫を上げて、黒騎士は永遠に動かなくなった。
「ひ、ひぃぃぃッ…まさか黒騎士が…帝国の精鋭兵士が……」
ハードックは盛大にビビって腰を抜かしていた。
「さてと…お前、アイラさんに乱暴した挙句、殺したな、もしまた嘘をついたらコレで腹を裂く。」
この手の外道にはキツく脅しを入れた方がいいからな。
「わ、分かりました!言います言います!こ、殺しました……あんまり抵抗されたもんで腹が立って…正直に話したんで殺さないでください!」
「そっか、正直に話したから殺さないどいてやる…俺はな」
一瞬希望に満ちた表情をしたハードックだったが、京真の最後の言葉を聞いた途端、絶望に満ちた表情に変わる、何故なら京真の後ろには杖を手に、般若の如き怒りの表情を浮かべたルシーラが立っていたからだ。
「殺す…殺す…殺す………絶対に………遥かなる鉄槌の焔よ、罪人を現世から永遠に消し去り給え…蒼炎ッ!!!」
ルシーラの頭上に凄まじい大きさの蒼い火球が形成される。
「嫌だ…嫌だァァァァァァァ!!助けてくれ!死にたくな…」
その言葉を最後に火球がハードックを飲み込んだ。
どのくらい経ったのだろうその場にはハードックの姿は影も形も無くなっていた。
そして力を使い果たしたルシーラはその場に倒れ伏してしまう。
「終わりましたか…」
「ああ…終わったんだ」
二人も安堵の息を吐く。
そしてこの一件が後に大きな戦いの火種になることをこの時の京真達はまだ知らなかった。