最強の極道、ご挨拶に向かう。
「一体どのような御用で私の元を訪れたのかな?」
アポ無しで訪れたら門前払いも覚悟されていたのだが、なんとすんなり屋敷の中に通して貰えたのだ、これには流石の京真も拍子抜けだった。
「お初にお目にかかります、ルイスガル商工会会長マーク殿、私は各地を旅して回ってるシスター・キョウカと申します。」
京真は礼儀正しく会釈をした。
「さっそく本題に入らせてもらいますが、貴方はハードック殿がルイスガルに来る前に町長を務めてましたね?私の目的はただ1つです、彼と私がお会い出来るように交渉を図って貰いたいのです」
それを聞いてマークは顔を曇らせた。
「ほぉ、なんで貴方はハードック様に謁見したいのですか?理由を聞かせてもらっても」
まあこういう質問は飛んでくるわな、理由は一応考えていたので想定内だ。
「いやぁ、私はこの町に教会を開こうと思っていましてね、町の統治者である上級貴族様にご挨拶しておいた方が何かあった時も便宜を図ってもらえるかと…」
「なるほど、そういう事でしたか、では近日中にハードック様に話は通しておきますので許可が降り次第、ルイスガル中央の屋敷に向かってください」
よし、これで上手く行けば奴の懐に入り込める。
マークとの対話を終え、宿屋へ帰路に着く2人だったが先程まで黙りっぱなしだったレガリアスが口を開く。
「京真さん、探りを入れるって言ってたのに思い切りハードックと対話を望むだなんて大胆なことをしましたね」
「ルシーラのこともある以上手段は選んでられないからな、とりあえず奴からの返答を待つことにしよう」
それから数日後、なんと許可が降りたのだ。
ルシーラも含めた3人はハードックの屋敷を訪れることになった。
「さて、悪徳貴族サマと対話だが、奴とは揉めたくないから穏便に済ませることが第一条件、でもそれとなくアイラさんについて探りを入れてみるつもりだ」
「私はいつも通り黙っておきます!」
レガリアスはただの付き添いだから黙っててもらった方が都合が良い。
「え、ええと…私は…」
「アンタも、お…私がいいと言うまで余計な事は言うなよ」
「は、はい…」
そうして一行は屋敷の中に入って行くのだった。
「ふん…下民のシスター風情が、何を企んでるのか知らんが下手な動きを見せたら即殺してやる…」
そんな3人を三階から見下ろす男がいた、その男こそクランツ=ハードック、ルイスガルを実質的に支配している上級貴族の一人だった。
しかも傍らには妙な甲冑姿の大男も佇んでいた。
「もし何かあったら奴らの始末を頼むぞ、黒騎士」