サンベルクの魔獣大行進
ということでサンベルク最強格の魔法使い、ヘレン・ザッパーが同行してくれることになった。
「これが私の馬車です、これでロントハイム領まで行きますよ!」
ヘレンが用意した馬車は、なんというか全体が鉄板のようなもので覆われており馬車というより戦車を彷彿とさせるものだった。
「ヘレンさん?このゴツイ馬車はいったい...?」
純粋な疑問をぶつけると、レガリアスが説明してくれた。
「あれ?京真さん知らないんですか、サンベルク魔導国には野生の魔獣が数多く生息してるんですよ、普通の馬車で走ろうもんなら大勢の魔獣に襲われて死亡...なんてことも珍しくないんです」
スラスラと情報を披露するレガリアスを目にしたキャロルが感心したような表情を向ける。
「今さらですけどレガリアスって異様に物知りですわよね...」
(まあ仮にもこの世界の担当だった女神だからな.....)
申し合わせたようにレガリアスが口を開いた。
「はい実は私、この世界を管理していた女神....むぐっ!」
さすがにこのエロ女神の正体がバレると厄介なので、全力で口を塞ぐことにした。
「「女神...?」」
「それは彼女の妄想だから大丈夫」
キャロルとヘレンが訝しげな表情をするも、なんとか誤魔化すことに成功したようだ。
―その頃、マガツでもある動きがあった。
「ボスご報告します、神聖ミカド組の連中がルシーラ・ロントハイムを連れ戻しにロントハイム領に向かってるとの情報が...」
「やはりか、思ったより早かったな」
こんな事など想定内だ、そう確信したボスは次なる指示を飛ばす。
「足止めにしかならんとは思うが.....ふむ、アレを使うとするか、直ぐに準備しろ」
彼は少し考えた後、ある物を使うことを決意した。
「了解しました、ボス」
荷物をまとめたキョウカ達はヘレンの馬車に乗り込み、ルイスガルを発った。
「お姉様、この大きな木箱はなんですの?」
すると馬車に積載されていた木箱にキャロルが気づき、キョウカは得意気に説明し始めた。
「有事に備えてレガリアスに用意してもらった武器だ、コイツは凶悪だぞ」
そんな他愛もない会話を続け、ゆったりとした旅路が続いてたのだが。
「あ、皆さんそろそろサンベルク魔導国に入ります、ここからは気を引き締めてくださいね」
馬車に揺られ三時間、どうやらサンベルクに入ったようだ、それと同時に辺りが騒がしくなった。
そう、獣が地面を踏み鳴らすような音が。
「げっ、なんですかこれぇぇえ!!」
レガリアスが窓から外を覗くとそこには驚愕の光景が広がっていた。
なんと外には大量の魔獣が闊歩していたのだ、数は1000体を優に超えているだろうか。
「これが我がサンベルクの名物、魔獣千騎大行進ですよ!」
ヘレンが興奮気味に仰々しそうな名前を口にするのだが、先程から数体の魔獣が馬車にガツガツぶつかる音がしていた。
「確かにこれは普通の馬車じゃ危険だな、おいレガリアス、そんなに窓から顔を出したら...」
忠告も虚しく窓から乗り出したレガリアスは落下しそうになっていた。
「あっ...京真さん助けてくださいいい!!」
咄嗟に手を伸ばしてキョウカが引き摺りあげる。
「お姉様が忠告したばかりなのに...言わんこっちゃないですわ」
「あの〜.....目的を忘れかけていないですか...?」
キャロルとヘレンは目的を忘れかけて騒ぐ二人を目にしてため息をつくのだった。
そんなキョウカ達に迫る巨大な影はすぐそこまで来ていた。




