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ある少女の記憶

―6年前、サンベルク魔導国ロントハイム領


死霊術師の名門ロントハイム家の次女、ルシーラ・ロントハイムは早くに両親を無くし、当主となった優しい兄アルフレッドと可愛らしい妹アイラに囲まれた彼女は毎日が幸せだった、あの日までは。


ある日、ルシーラは父の部屋だった場所で遺品を漁っていた。

「これ、なんだろう?」

そこで彼女は一つの木箱に目をつけたのだ。

訝しげに木箱を開けると、そこには古びた杖が入っていた。

「わぁ....綺麗な杖......にいさまやアイラにも見せてあげよっと!」

ルシーラが杖を手にすると、先端に蒼い炎が灯ったのだ、その炎は美しい色合いながらも強大な力を感じさせるものだった。


彼女が慌てて地下室から出ると、そこには丁度アルフレッドが居た。

「ねぇねぇにいさまっ!父上の遺品からこんな杖を見つけたんだよ、綺麗でしょ!」

しかしその杖を見た途端アルフレッドは優しい表情から一変して狂気的な表情になった。

「る、ルシーラ......君がその杖の炎を灯したのかい?」

ルシーラは言われるがままに自分が灯したと口にしてしまう。

「そ、そうだよ.....?に、にいさま顔が怖いよ」

「いいかルシーラ、君は今日から地下室で過ごしてもらう、いいね」


幼いルシーラにはまだ分からなかったが、あの杖は死霊の選定杖と言う代物だった。

杖に触れ、蒼き炎を灯した者は死霊術師として強大な力を持っているという証だったのだ。


そんなことを知らないルシーラはその日から地下室に軟禁状態となった。

「にいさま...一体どうしてしまったの.....?」


あの日から彼女の生活は変わってしまった。

一日に数時間、アルフレッドが沢山の死霊魔法を彼女に叩き込んだ、それ以外の時間は兄の目を盗み、地下室に置いてあった魔法の本を読み漁ったり実際に様々な魔法を実践していた、幸か不幸か彼女には死霊魔法だけではなく多彩な属性の魔法も得意であったのだ。


そんな生活が五年近く続いたある日、ルシーラは魔法の練習をしていた所をアルフレッドに見つかってしまった。

「ルシーラそんな下らん魔法なんて練習してんじゃねぇぞ、おい!」

兄はルシーラが死霊魔法以外の魔法に触れることを極端に嫌がっていたので、その場で口には出来ないような暴行を加えられた。

そして兄からの虐待が増えていき1ヶ月が経った。

「うぅ.....兄様...一体どうして?」

(このままじゃ私は殺されてしまう、どうして兄様がこんなことを....)

彼女の体と精神は限界が近かった。

頭をよぎらせ理由を考えるも、ルシーラには分からなかった。

堪らず意識が闇に落ちようとしたその時。

「お姉ちゃん!やっと見つけた....アイラだよ!わかる?」

ルシーラの意識を呼び戻したのは五年近く会っていなかった妹のアイラの声だった。

「あ、アイラ...?どうして...」

「お姉ちゃん...こんなにボロボロになって...早く逃げるの!この家から!」

そして彼女はルシーラに家からの逃走を持ちかけた。

「で、でも兄様が...」

「それは大丈夫、兄さんは他の領地に用事、だから今のうちに...」

必死な形相のアイラに説得されたルシーラは荷物を纏め、あの杖を手に妹と家を出たのだ。


「ゲホッ....それで家を出たのはいいけどどうやってこの領地から出るの?検問所もあるだろうし...」

そう、サンベルク魔導国は領地同士の出入口には検問が敷かれているのだ。

「それなら心配ないよ、ほらアレ」

しかしルシーラの心配は杞憂だった。

アイラが指を指す方向を見る、そこには大量に藁草が積まれた荷馬車が止まっていた。

「え、まさか...」

「そのまさかだよ、あの中に入るよお姉ちゃんっ!」

彼女達は藁に塗れた荷馬車に紛れることでサンベルク魔導国を出ることに成功したのだ。


最終的に二人が辿り着いたのはウォーバルド帝国ルイスガルだった。

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