生きているはずがない少女
「それでは第2試合の参加者!舞台へどうぞ!」
ヘレンが呼びかけると二人の人物が姿を表した。
「京真さんっ!ルシーラさんが来ましたよ!」
レガリアスが興奮気味なテンションになっている。
「本当に大丈夫なのか...大ケガしたばかりなのに.......」
「心配ですけど彼女が出たいと言うのならわたくしたちに止める権利はないですし、見守りますわよ、お姉様っ」
「まずは今大会の注目選手!!ルイスガルを拠点とする自警団兼教会、神聖ミカド組に所属する若き魔法使いっ!ルシーラ・ロントハイムッッッ!!」
ルシーラは杖の炎を幻想的に揺らしながら舞台に降り立った、その表情は自信に満ちていた。
そして先程と同じくミモリが対戦相手の名前を呼ぶ。
「対するは我がヒノモト共和国のシノビ、ムラクモッ!!」
そして対戦相手として姿を現したのは、黒装束の忍者だった、ヒノモト共和国とは名前の通り中世日本っぽい国のようだとキョウカは勝手に想像するのだった。
「魔法使いか....俺の隠形さえあれば余裕で倒せる、悪く思うなよ」
ムラクモは余裕綽々な態度を取り、ルシーラを嘲った。
「へーやってみたら、私結構強いよ」
それに対してルシーラが返したのは自信満々な答えだった。
それからの試合は一方的であった。
「スパークフィールド・ネオッ!!」
ルシーラは気配を消すシノビ相手に苦戦するものかと思われていたが、なんと舞台全体を覆う雷魔法一発で戦闘不能にしてしまったのだ。
「しょ、勝者!ルシーラ・ロントハイム!!」
慌てながらもヘレンは彼女の勝利を宣言する。
「まさか、ヒノモトのシノビを一撃で倒しちゃうなんて.....ルシーラさん、あの人は天才かもしれないッスね」
ミモリは自国の参加者が負けたことは気にも留めずにルシーラを絶賛していた。
「すごいですわ!これなら優勝も簡単かも.....」
「そりゃ神聖ミカド組の天才魔法使いですからね!」
今の試合を見て、彼女の優勝を確信するキャロルとレガリアスだったが、キョウカには一つ引っかかることがあった。
(なんだこのなんとも言えないようなイヤな感じは.....なにか良くないことが起こるんじゃ.......)
そんなよく分からないような不安を抱えながらも大会は進んでいった。
そしてルシーラは順調に勝ち進んで行った、結果的になんと決勝まで上り詰めたのだ。
「さあ決勝!決勝ですよ!!最後に勝ち進んだ2名が頂の座を賭けて一騎打ちを行いますっ!」
「勝ち残った二人はどっちも魔法使いッスね、
珍しい...」
再び舞台に降り立ったルシーラは自分に言い聞かせていた。
(落ち着くんだルシーラ、ここで勝てば優勝...深呼吸して...)
「まずは天才的な魔法の腕で一気に決勝まで登り詰めた美少女魔法使いっ!ルシーラ・ロントハイムッッッ!!」
第2試合の時と違い、歓声の量が段違いだった。
「対するは、ルシーラと同じく破竹の勢いで勝ち進んだ謎の白ローブ、ネクロンっ!」
出てきたのは白いローブにフードを目深に被った謎の人物だった。
「あれは....流石のルシーラでも苦戦はするだろうな....」
キョウカは奴の手強さを確信していた、なんとネクロンと戦った相手のほとんどが自らが攻撃を仕掛けた後に跳ね返されて戦闘不能にされているからだ。
そんなことは気にもせず、ルシーラは自信満々に言い放った。
「ここで勝利しちゃえば私の勝ち、覚悟して」
「.............」
しかしネクロンは一言も発さずに懐から小型の杖を取り出した。
「では決勝.....試合開始!!」
「先手必勝っ!!天臨槍!」
ルシーラは即座に魔力を充填、巨大な光の槍を形作った、そのまま勢いに任せてネクロン目掛け落とした。
「.......」
しかしネクロンは黙ったまま杖の先端に謎の魔法陣を展開しながら、光の槍を躱した。
その次の瞬間、同様の光の槍が目の前に出現してルシーラを襲った。
「えっ.......きゃぁぁぁ!!」
紙一重で躱すも彼女の心の中には焦りが生まれていた。
(ど、どういうこと...何が起こった......魔法が跳ね返された...?)
それから様々な魔法をネクロンに仕掛けるものの、その全てが跳ね返されるのだ。
魔力も少なくなり、疲労で微細な傷でルシーラは片膝をついてしまう。
「まさかのルシーラさん!膝を着いてしまった...ネクロンさんの謎の攻撃反射を前にしたら天才魔法使いも成すすべがないのかぁぁぁ!!??」
ヘレンは興奮が最高潮に達したようで、必死に言葉を紡いでる。
「ヘレンさん落ち着いて、まだ勝負は決していないッスよ」
ミモリは見ていたのだ、ルシーラが片膝を着きながら腰に手を回してあるのものを取り出していたのを。
(ネクロンが近づいてきたところでこの閃光手榴弾を使って怯ませる...もう魔力も僅かだから少しでも隙を作って確実に魔法を当てないと...)
しかしネクロンは見透かしたようにルシーラの片腕を素早く掴み、閃光手榴弾を離させた。
「あっ...そんなっ」
「随分姑息な手を使うようになったんだね、やっぱりアイツのせい?ねぇ.......お姉ちゃん」
今まで沈黙を貫いていたネクロンが急に言葉を発するが、その内容は衝撃的なものだった。
そしてネクロンはおもむろにフードを取る。
そこには、腰まで届く紫色の髪に赤と青のオッドアイを持つ、ルシーラと瓜二つの少女が存在していた。
ルシーラは目の前の少女について知っていた、間違えるわけが無いのだ。
「う、嘘.......そんなことがあるわけが無い......これは夢でしょ...ねえ、あなたはあの時に死んだはず...答えてよ.......アイラ...」
謎の人物ネクロンの正体は死んだはずのルシーラの実妹、アイラ・ロントハイムその人だった。




