帝国城の戦いから一夜
キョウカが目を覚ますとそこには豪奢な天井が映った。
慌てて周りを見てみると横になったことのないほど豪華なベッドに彼女はいた。
「目が覚めたか、どうやら妾の魔法は上手くいったようじゃの」
すると傍らに控えていた、エメラダに話しかけられる。
「私は.....なんで無傷なんだ...?」
「ふふん、それは妾の魔法 ゴッドヒールで全回復させてやったからじゃ!」
どうやら瀕死状態のキョウカをこの少女は完璧に直してしまったらしい。
「...高等な魔法なので当分は使えないが.....」
キョウカは一気に体を起こして、ベッドから抜け出した。
「礼を言うエメラダ、どうやらまだ死ぬには早かったようだな」
「お、おい、いくら体が完治しているからといってまだ動くのは危険じゃぞ」
「いや、アイツらの方が心配だ.....」
キョウカには仲間の安否が非常に気になっていた、しかしエメラダの言葉によってそれは杞憂に終わった。
「お主の仲間なら全員生きている...だがルシーラ...だったかの、そ奴は重症だそうじゃ」
キョウカは即座にエメラダに仲間の居場所を尋ねた。
「アイツらは何処にいるんだ?」
「城下のナーバス治療院じゃ、行くなら早く行ってやれ」
それを聞くとキョウカは脱兎のごとく駆け出した。
駆けつけると病室にはレガリアスとキャロルが既に居た。
レガリアスは無傷だが、キャロルは細かい傷を沢山負ったのだろう、体の至る所に包帯が巻かれていた、ルシーラに至っては怪我が酷く、未だにベッドに横になっていた。
「あっ.....キョウマさん...」
三人とも、キョウカを目にして、安堵の表情をしている。
「ル、ルシーラは大丈夫なのか...?」
「なんとか命は落とさずに済んだけど、背中が凄く痛い...」
聞くところによるとルシーラはキャロルの戦っていた刺客、ナイトメアリーに背中を鎌で斬り裂かれたらしい。
突然勃発した戦いには勝利したものの、おった傷が深く、彼女達には心の中にモヤモヤしたものが残る結果となってしまった。
―数時間後
キョウカは帝国城の玉座に呼び出されていた。
「で、今回の乱入についてだが、奴らは暗殺組織マガツと名乗ったことに間違いないんじゃな?」
エメラダが重苦しい顔をしながら話す。
「そうだ、奴らはマガツと名乗っていた、エメ...皇帝陛下は何か知っているのか?」
タメ口で話しているからか分からないが、周囲の家臣からの鋭い視線が痛いです。
「マガツか.....厄介な奴らが妾の暗殺に動くとは...」
「マガツを知っているのか!?」
エメラダは驚愕の表情を浮かべた。
「知ってるも何もマガツは大陸の各国で指名手配されているS級賞金首の集団じゃぞ?」
初耳だった、詳しいことをエメラダに尋ねてみると、奴らの実態が少しずつ明らかになった。
暗殺組織マガツ、極東の国を拠点にしていると言われる巨大な暗殺組織で、ここ数年大陸で高額な暗殺依頼を請け負っては実行している者たちだという。
構成員のアサシンは全員が、一騎当千の戦力を持つと言われる程である。
ちなみにユウカとナイトメアリーですら中堅構成員らしい。
「でもなんでそんな奴らが皇帝陛下を狙うんだ...?」
するとエメラダが悲しそうな表情を浮かべた。
「簡単な事じゃ、妾の事をよく思ってない派閥が帝国には存在しておる、反皇帝の過激派と呼ばれる奴らじゃ、おそらくはそヤツらがマガツに暗殺を依頼したのじゃろう」
今まで皇帝として努力してきたことが、かえって極小数の反発勢力を生んでしまったことが悔しかったのだろう、彼女の表情からも容易に読み取れた。
「つまり、過激派の連中がこのふざけた暗殺騒動を裏から糸を引いてたってのか」
怒りを露わにするキョウカだったがそれに対してエメラダは決意に満ちた表情になる。
「だが安心するのじゃ、奴らの隠れ家は帝国側で突き止めてるからすぐに全員捕縛して然るべき処罰を受けさせ.....ひっ...」
淡々と言葉を続けるエメラダだったが異様な空気感が部屋中を包んだことで、怯えた声が出てしまった。
その空気はキョウカから発せられていた。
「そんな理由の為だけに...暗殺者を仕向け.....私の仲間や友人を傷つけたってのか.......」
怒髪天を衝いたキョウカが纏っていたのは、存在するだけで全ての生命が死に絶えるような強烈な殺気。
「エメラダ.....一つ頼みがある、そのクソ共は私たちに粛清させてくれ、全員に確実な死を与えてやるから.....」
声色こそは優しかったが、殺気がダダ漏れであった。
「わ、分かったのじゃ.....奴らの始末は神聖ミカド組に任せよう.....」
そしてこれを目にしたエメラダに頼みを断る選択肢など無かった。




