一発逆転の紫炎
紫炎を覚醒させたキャロルを目にした、ナイトメアリーは忌々しげな表情をする。
「クソガキがいい気になってんじゃねぇぞ!」
そして再び影に潜り込んだのだ。
「もうその小細工は通用しませんわよっ!」
キャロルは懐からクリスタルナイフを取り出して足元の影に投擲しようとした。
「おいおい、そんなオモチャでアタシの鎌が止まると思ってんのかッ!?」
影から這い出てきたナイトメアリーは勢いよくキャロルの腹に目掛けて大鎌を振るった。
しかしキャロルはすんでのところで、クリスタルナイフで刃を止めたのだ。
「そちらこそ、わたくしの紫炎を甘く見すぎですわ」
するとキャロルはクリスタルナイフに紫炎を纏わせた。
「チッ.....厄介だな...」
瞬く間に紫炎に包まれた大鎌は次第に焼き溶かされてしまう。
慌てて大鎌から手を離したナイトメアリーを目にすると、キャロルは気を逃すまいと彼女の心臓目掛けてクリスタルナイフを突き出した。
その時、ナイトメアリーが不敵な笑みを浮かべたのだ。
「なァ、アタシの鎌が一つしかないって言った覚えはないぜ」
なんとナイトメアリーは足元の影からもう一振の大鎌を取り出し、クリスタルナイフを受け止めたのだ。
「影の魔法っていうのは随分便利なんですのね」
「フン、アタシは暗殺に関しては用心深い女でねェ…得物のストックを無数に仕舞ってあるんだよ」
そう言ってナイトメアリーは影から複数の大鎌を覗かせた。
「なら、そのストックが無くなるまで...ハァ.....焼き溶かすだけですわ」
キャロルの息が微かに上がってるのを見逃すほど、ナイトメアリーという女は優しくはなかった。
「それにテメェ、息が上がってんじゃん、もしかして紫炎...使える回数に限りがあるんじゃないか?図星だな、ギャハハハハ!!」
そう、キャロルは紫炎を覚醒させたものの、その代償は決して小さくはなかったのだ。
(こんな強力な力...無限に使えるはずはないと思ってましたけど、数回使っただけで息が上がる程とは...)
考える間もなく、ナイトメアリーは恐ろしほど速い踏み込みを見せる。
「テメェは紫炎を多くは使えない、ならアタシは遠慮なく斬り合いに持ち込ませていただくぜ」
そして襲いかかる大鎌の猛攻、キャロルはその一撃一撃を必死に躱してみせるが、防ぎ切れるはずも無く、少しずつ体に切り傷を生んでいく。
「くっ....」
(この疲労からして、あと紫炎を使えるのは一回.....これをもし外せば、わたくしに待っているのは逃れられない死....)
キャロルは危険を承知で、片翼で体を守るような体勢をとった。
「もう片方の翼も貰ったァ!ギャハハハハ!!」
しかしナイトメアリーは下卑た笑い声を上げながら、キャロルの片翼を斬り裂いてしまった。
しかし、キャロルはニヤりと笑っていたのだ。
「うっ.....貰った、はこっちのセリフですわ」
そして斬り裂かれた翼の僅かな間を縫って、紫炎を纏わせたクリスタルナイフを突き出した。
「ぐっ!!な、何...が...起こった...ぐはっ.....」
なんとクリスタルナイフはナイトメアリーの心臓部を刺し貫いていたのだ。
「はぁ........はぁ......勝負あり...ですわね」
紫炎を纏った武器で心臓を貫かれたナイトメアリーは明らかに致命傷だった。
「遺言くらいは聞きますわよ」
キャロルはナイトメアリーに問いかける。
「ふん、ゲホッ....アタシを倒したからっていい気になるなよ...マガツのアサシン達はまだまだ居るからな...当然アタシなんかより強いヤツらがな...伝えたいのはそれだけだ...最後にこんな一発逆転見せられたからには、諦めて去る....ぜ...」
そう言い残すと、暗殺者ナイトメアリーはその呼吸を永遠に止めた。
「わたくしも血を流しすぎてる...早く治療しないと...」
キャロルはふらつく足を抑えながら歩き出すのだった。




