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外道に堕ちたライバルを殺せ

キャロルが紫炎を覚醒させたのと同時刻、レガリアスは招待客を全員避難させて、大広間に戻ってきたところだった。

そして発見してしまう、背中を切り裂かれたルシーラの姿を。

「ルシーラさんっ!しっかりしてください...」

「がふっ.....レガリアス...油断し...た...」

口から吐血しながら息も絶え絶えに口を開くルシーラ。

「喋らないでください、傷に障りますよ.....」

(この傷...早く処置しないと命に関わりますね...でももう私の血は使えない.....)

どうしたものかと考えていると、ふと数時間前の光景がフラッシュバックした。

「そういえば帝都には各所に治療院があったはず、急いで担ぎ込めば何とかなりますね」

そう思い立ったレガリアスはルシーラを背中に抱えた。

「キャロルさん...どうか無事でいてくださいッ...」

今この時も死闘を繰り広げているキャロルを一瞥しつつ、掛け出すのだった。


―同時刻


「なん...だと.....仕込み刀か...」

キョウカはユウカの脇腹にナイフを突き刺したのだが、同時に太ももにカウンターを食らっていた。

「ライバルの戦闘スタイルを忘れたんちゃうやろうな?...ハァ..ハァ..私の武器は我流の殺人剣、勝つためならどんな手も使う戦場の刃や、例えばこんな風になっ!」

するりと脇腹に刺さるナイフから逃れたユウカは靴でキョウカの太ももの傷を素早く蹴り抜いた。

「ぐぁっ.....思い出したよ...お前の靴は...」

「そう、鉄板入りの靴や、普通の蹴り一発でも大きなダメージを与えることが出来る」

ユウカの戦闘スタイルは前世と全く変わってなかった、彼女は長ドスを基本的に使うものの、戦闘中に体中に仕込んだ武器も使うのだ。

「それにアンタの太もも、それかなりキツいやろ?」

キョウカの太ももは刺された傷に加えて、先程の蹴りで傷が更に広がっていたのだ。

「これくらい、どうってことない.....」

そう言ってキョウカはドレスの裾を破り、傷口を縛った。

そして再び、ベレッタとナイフを構える。

「まだ、戦いはここからだよ!ユウカッ!」

「そんな簡単に殺れないか、存分に斬り合おうや!キョウカッ!」

そうして二人は激しい斬り合いになだれ込んだ。

その様なまさに荒れ狂う炎の様だった。


「.....妾は何故、こんなにも無力なのじゃ...民から優秀な皇帝と持て囃されておきながら、いざとなったらこの有様.....」

二人の戦いを見ていたエメラダは己の無力さを噛み締めていた。

今まで、エメラダという少女は周りから天才と呼ばれていた。

今は亡き父に変わり、圧倒的な才能で皇帝を務め、ここ数年の帝国の景気と治安は格段にレベルが上がったのは言うまでもない事実だった。


「おいおい、徐々に肉が削れてるやないか!このままだとジリ貧やぞっ!」

脇腹の傷などお構い無しに振るわれるユウカの驚異的な剣のスピードは深手を負ってるキョウカを徐々に追い詰めていた。

「がぁぁぁ!ならこれでどうだッ!!武器変換ッ!!」

そう叫ぶとベレッタが形を変え、ショットガンを形作った。

そしてすかさず引き金を引いた。

「うわぁぁぁ危なぁぁぁっ!」

しかし紙一重でユウカは躱してみせる。

「ちっ、これでもダメか...」

ある程度距離が空いたので、キョウカはある質問をユウカにぶつけた。

「ユウカ、一つだけ聞かせてくれ、何故お前は罪なき人間を手にかける外道に堕ちた!?あの時の任侠と仁義に生きたお前はどこに行ってしまったんだよ.....」

戦闘スタイルは卑怯だが、水無月 優馬という男は極道の鏡のような人物だったのだ。

それに帰ってきた返答は悲しそうな声だった。

「....前世でもう気づいてしまったんや、任侠や仁義なんか貫き通しても決して報われないってことをな.....だからこそ私は暗殺という汚れ仕事をこなしてでも金を稼ぐんや!」

そう言うとユウカは悲壮感に満ちた表情をキョウカに向けた。

「金...だと、そんな物のためにエメラダを殺そうとしたってのか...罪なき人々を今まで殺してきたってのか.....」

目の前のライバルがそこまでの外道に堕ちたことにキョウカは悲しみを隠しきれなかった。

「いいや金がなきゃどうしようもないんや、腹は膨れないし生活も出来ない、当たり前の道理や、だからこそアンタをここで殺して、皇帝も殺さしてもらう」

それを聞いた途端、キョウカの中で何かが切れる音が聞こえた。

「.....もういい...歪んだ拝金主義を掲げる仁義外れなんざここで必ず、殺す!!」

そう言うとキョウカはナイフを手に、再びスタートを切る、太ももの傷から血が吹き出るもののお構い無しに突進したのだ。

「ならこの一撃でアンタを殺したる!」

キョウカが目の前に踏み込んだと同時に、ユウカは長ドスを素早く上段に構えた。

(奴の隙を晒すにはこれしかねぇ...!致命傷覚悟だっ!)

そしてキョウカはナイフの切っ先をユウカに向けたのだ、それと同時に落雷の様な一閃がキョウカの胸を捉えたのだ。

「ぐぁ.......」

それは致命傷とはいかないものの、キョウカを袈裟に捉えてしまった。

だが、

「ふふ.....ようやく隙を晒したなッ!」

血を流しながら、キョウカが不敵な笑みを浮かべたのだ、そして彼女はなんとナイフの手元に取り付けてある、極小のボタンを押した。

「ああああ!クソッタレがぁ!」

そしてユウカが思わぬ痛みで絶叫する。

なんと彼女の右目にナイフが突き刺さっていたのだ。

「へへ、スペツナズナイフってのは読めなかっただろ.....」

スペツナズナイフとはかつてソビエト連邦の特殊部隊が使用していたといわれる、刀身の射出が可能なナイフである。

思わぬ、小細工で右目を潰されたユウカは痛みに悶えている、それを見逃すキョウカでは無かった。

「さぁ、これで終わりだ.....ユウカ...!」

流れるように拳を構えるキョウカ、その目にはかつてのライバルを思う悲しみが浮かんでいた。

そして、充溢した殺意を解放する。


「破ァッ!!!!!」


凄まじい威力の発勁をユウカの土手っ腹に撃ち込んだのだ。

彼女は部屋のガラス窓に叩きつけられ、勢いよく突き破る。

「がはっ.......こんなんで終わると...思わないことや........」

そして何かを言い残して、城壁の下へ下へと落下していった。


「ハァ.....ハァ...ハァ...この傷は、まじでやばいかもな...くぁっ.....」

キョウカは糸が切れた人形の様に、大の字に倒れ込んだ。


「キョウカっ!大丈夫なのか!?....なっ...意識がない....じゃと」

キョウカは度重なる出血や傷が祟り、意識を失っていた。

「妾が...絶対に助けてやるからの.......」

エメラダはその言葉と共に魔力を練り始めた、それは凄まじい魔力量だった。

「遥かなる癒しの精霊よ.....皇帝の血筋が命ずる、この者に天上の祝福を.......ゴッドヒーリングッッ!!」

その瞬間、眩い光が部屋中を包み込んだ。

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