キャロルの目覚め
「ほらほらほらァ!!どうしたクソガキ!さっきまでの勢いがねぇじゃんかよ、ギャハハハハハ!!」
脇腹に傷を負ってからと言うものの、キャロルの動きは鈍くなっていた。
「ぐっ...あっ.....」
(さっきの傷が響いてる.....このままじゃジリ貧ですわ...)
大鎌の連撃に翻弄されているキャロルは翼を広げて、ひたすらに回避を続けていた。
「キャロル...くっ、なんでこんな時に限って杖を持ってないの...私のバカっ」
杖が無く、魔法がマトモに使えない状態のルシーラは自分の無力さを痛感していた。
「ルシーラさんっ!これでキャロルさんを援護してあげてください!」
傍らにいたレガリアスが何かを手渡してきた。
「これは...」
それはキョウカがいつも使っている武器、拳銃だった。
「私は他の招待客を全員城の外に避難させますので、それでなんとか.....」
(使い方は彼女を見てきたからなんとか行ける!)
「分かった、私に任せて」
そう言ってルシーラは拳銃の安全装置を外し、引き金に指をかけた。
「鬱陶しいな、クソガキっ!」
何度鎌を振るっても仕留めることが出来ないキャロルを目にする内に、ナイトメアリーには次第に苛立ちが充満してきていた。
「な、なんですの...このイヤな雰囲気は.....」
ナイトメアリーはおもむろに大鎌を掲げ、魔力を練り始めた。
「このアタシを本気にさせたんだ、楽に死ねるとは思わない方がいいぜ 」
彼女がそう告げると突然、大広間の明かりが再び灯ったのだ。
「何かが...来ますわね.....」
その予感は見事に的中、ナイトメアリーがその場から姿を消した。
「バァ、こんばんわッ!!」
なんとナイトメアリーがキャロルの足元の影から飛び出してきたのだ。
「これは.....まさかッ!?.....きゃっ!」
咄嗟に後ろへ回避したキャロルだったが奴の大鎌が片翼を捉えてしまった。
「まさかアタシの影渡りを回避するなんてな、やるじゃねぇか、だがその翼は使い物にならねぇなギャハハハハハ!!」
「ふ、ふん.....これくらいなんてことないですわ...」
しかし状況は最悪の一言だった。
(まずい、翼が使えなくなってしまいましたわ.....これじゃあ攻撃を回避することも難しい...)
「さぁ幕引きと行こうか!竜人族のクソガキッ!!」
そして凄まじい速度でナイトメアリーが大鎌を振り上げる、その時だった。
凄まじい銃声が鳴り響いたのは。
「今の音は.....!?」
そうして音のした方向に目を向けると、ルシーラが少し離れたところから拳銃を構えていた。
「はぁ.....キャロルは殺らせないっ!」
そして弾丸はナイトメアリーの太ももを捉えていた。
「がぁっ.....いってーなコラ...逃げ回るだけのネズミが跳ねっ返りやがって...」
苦悶に満ちた表情を浮かべながらナイトメアリーは怒りに満ちた顔をルシーラに向けた。
その瞬間、先程と同様に奴をどす黒い魔力が包み込んだ。
(これは...ルシーラが危ないっ!)
「ルシーラっ!今すぐそこから逃げてくださいまし!」
しかし忠告も虚しく、ナイトメアリーは既に影を通じてルシーラの背後に立っていた。
「えっ.........」
「余計な手出ししなければ死なずに済んだのになぁ...地獄で仲間のこと待っとけ、ギャハハハハハ!!」
そうして、ナイトメアリーの大鎌はルシーラの背中を深々と斬り裂いたのだ。
「きゃぁ.......ぁぁ...」
背中から血飛沫を上げながら倒れ込むルシーラ、それを見てキャロルは頭の中が真っ白になった。
「なっ.....そ、そんな...わたくしは、わたくしは...」
ナイトメアリーがキャロルに向かってゆっくりと近づいてくる。
「余計な横槍が入っちまったが次はテメェの番だ」
(そんな.....こんなところで.......お爺様...どうかわたくしに力を...!!)
そう念じた瞬間、なんとキャロルの手に紫の火、紫炎が姿を現したのだ。
「え.....これは...あの時の...!!」
「おいおい、とんでもないのに目覚めちまったな...グラム・ラグナの紫炎か、厄介だ」
忌々しそうな顔をするナイトメアリーだったがそれに対してキャロルの表情は希望に満ちていた。
そしてナイトメアリーに向き直り、紫炎が纏う拳を握った。
「この力なら.......あなたを倒せますわ、ナイトメアリー!わたくしの仲間を傷つけたツケは必ず払ってもらいます!!」




