在りし日の死闘
それは生前の記憶だった。
京真はある男と死闘を繰り広げていた。
「おいおい、やるな!水無月ッ!!」
「そっちこそ、何時もよりキレがあるやないか!御門ッ!!」
京真と相対する男の名は、水無月 悠真。
敵対組織の一人で我流の殺人剣を極めた猛者だ。
静寂が包み込む路地裏で、ロングナイフと長ドスの刃が打ち合う音が延々と鳴り響く。
決着の時は案外早く訪れた。
「これで仕舞いや!死ね、御門ぉぉぉぉ!!」
「死ぬのはてめぇだよ水無月ぃぃぃぃ!!」
そして、互いの命を懸けた一騎討ちの結果は、京真の勝利だった。
腹を掻っ捌かれた水無月はアスファルトに血溜まりを作り、倒れていた。
「はぁ.....はぁ...俺の負けや.....」
口から血反吐を吐き散らしながら水無月はポツポツと言葉を口にする。
「.....お前はめっちゃ強かったよ、これからもお前以上のライバルは二度と現れないだろうな.....」
京真は水無月を永遠のライバルと認めていた。
「はは...それを聞いたらもう悔いはないぜ...もし叶うなら...来世もお前と殺り合いたいな.....」
その言葉を最後に水無月は永遠に動かなくなった。
彼が絶命した瞬間、京真もまどろみに囚われていくのだった。
「...キョ...マ...京.....さん...お姉.......」
誰かが自分を必死に呼ぶ声が聞こえる。
ハッと我に返って京真が目覚めると、そこには涙で顔をぐしゃぐしゃにした三人が居た。
「京真さん...本当に助かって良かったです.....」
「キョウマ、本当に死んだかと思ったよ...凄い出血量だった...」
「お、お姉様ぁぁぁぁ!良かったですわ....本当にレガリアスの救命措置が間に合わなかったら今頃...」
どうやら京真はレガリアスの血によって救われたらしい。
三人は京真が目覚めたことに安堵していたが、キャロルは大泣きでしがみついてきた。
「レガリアス...ありがとうな」
「いえいえ、これくらい朝飯前ですよ、と言いたいですけど血については京真さんは一回使ってしまったんでもう二度目は無いですよ」
そう、レガリアスの女神の血は摂取させた対象を瞬時に回復させる代物だが、一人につき一回しか効果がないという制限付きだったのだ。
「それで、京真さんを襲った襲撃者についてですが全く情報がありません...」
レガリアスは忌々しそうに顔を曇らせるが、京真には一つ心当たりがあった
「...あれは相当な手練だった...気がついたら斬られていた、でもあの雰囲気...何処かで見覚えがあるんだ」
(あの長ドスに超人的な速度の踏み込み...いや、まさか、有り得ない...)
「何はともあれ、キョウマを襲った人は絶対に許せない...正体が分かったら必ず報復するよ」
この件、なによりあの惨状を目にしたルシーラが一番怒り心頭だった。
その夜、レガリアスを呼び出した京真は気になっていたことについて尋ねることにした。
「こんな夜遅くにすまないな」
「ほんとですよ、ふぁ...私もう眠くて.....」
そして京真は本題を切り出す。
「聞きたいことがあるんだが、俺の前にこの世界に転生した奴はいないか?特徴は俺と同じ極道で関西弁だ」
それを聞いたレガリアスがハッとした表情をする。
「はい、京真さんが送られてくる半年前に私はその人を転生させた記憶があります、名前は確か、水無月 悠真...さんです」
その名前は京真にとって因縁のライバルと呼ぶべき存在の名前だった。
「恐らく俺を襲ったのは水無月だ、襲撃者の姿は少女で、長ドスに和装...性別は変わってるが格好は生前の奴と瓜二つだった」
(おそらく目的は単純な仕返し...奴の性格を考えるのそういうことだ)
動機も容姿も、犯人で思い当たるのは水無月 悠真しかいなかった。
「しかし、京真さんを襲ったのなら報復は確定ですね、私もいつものサボり癖を治して重い腰をあげますよっ!」
レガリアスは気合いの入った表情で決意を露にした。
「ああ、俺も借りを返したいしな、調査は任せる。」
しかしレガリアスがなにかに気づいたように口を開く。
「そういえば京真さんっでみんなの前だと私、って言いますけど、私と二人の時は俺、って言うんですね」
それは京真の自らの呼び方に関してだった。
「いや、俺が元男って知ってるのはお前だけだろ?二人きりの時なら気軽に素の自分に戻れるんだよ」
しかしその発言にレガリアスが水を差す。
「でも最近の京真さんって最早ちゃんとした女の子ですよね〜、下着も白やピンク等の可愛らしいもの付けてますし、なにより最近周りの視線を気にして生足をやめてタイツを履いたり.....」
「おい、生足をやめたことに関しては分かるが下着の色についてどうして知ってるんだ?」
京真は笑顔を見せるが、その目は笑ってなかった、レガリアスはそれを見てギクッとした表情をした。
「え、い...いやその.....えっと...」
日常的に京真のスカートの中をことごとく覗いたり、部屋の中を漁っていたレガリアスに反論の余地はなかった。
「エロ女神さん、覚悟してねっ」
セリフと表情が合ってない京真を目にし、レガリアスは恐怖に引き攣る表情を浮かべた。
「い、いやぁ...京真さん、許してくださいよ...謝りますから...嫌だ、おしおきは嫌ですぅぅぅぅ!!」
この後、レガリアスが何をされたのかは知らない方がいいだろう。




