竜少女の苦悩
あの日以降、キャロルは部屋に閉じこもってしまった。
「キャロルさん...もう閉じこもって三日ですよ、流石に心配なんですが...」
「キョウマ、なにがあったの?」
レガリアスとルシーラも流石におかしいと思ったのだろう、あの日の出来事を尋ねてきた。
「ああ、それなんだけどな...」
あの日、何があったのか全て話した。
「そりゃ、不可抗力だとしても人を殺すなんてショックですよ...」
京真たちは今まで、敵対するものは容赦なく葬ってきたが、一般的な人間の感覚として自らの意思で人を殺すというのはとんでもない覚悟が必要なのだ。
「キョウマ、強引に引きずり出しても無意味だろうし、しばらくそっとしておこうよ」
「.....そうだな」
ルシーラの言う通りだった、キャロルには落ち着く時間が必要だ。
部屋の中でベッドに腰掛けながら、キャロルは考えていた。
外でなにやら三人の話し声が聞こえた、どうやら自分が閉じこもっている理由が人を殺してしまった事だと思っているようだが、実際は違った。
(人を殺したこともあるけどそうじゃないんですわ.....あの力...お爺様の紫炎...あれを制御出来なかったことなんですわ...)
そう、あの日キャロルは無意識に紫炎を発動させてしまったのだ。
(いつあの紫炎が出てくるか分からない...それが怖いんですの...それで仲間を殺してしまうんじゃないかって.....)
グラム・ラグナの紫炎に触れたものは生物問わず焼き溶かしてしまう危険な力なのだ、それで仲間を手にかけてしまう恐怖が彼女を支配していた。
その日の夜、不意に扉がノックされた。
「...キャロル、起きてるか?ちょっと話したいことがあるんだ、もし良かったら入れてくれないか」
キャロルの部屋に訪れたのは京真だった。
「お姉様...?ちょっとだけですわよ...」
扉の鍵を開けると京真が部屋に入ってくる、そして彼女はいきなり本題を切り出してきた。
「もう単刀直入に聞くけど、キャロルが悩んでる理由は人を殺したこと...じゃないだろ?」
キャロルの考えていたことは見抜かれていた。
「はは...お姉様には隠し事は無理ですわね.....そうです、わたくしはあの力で殺めてしまうんじゃないかって怖いんですの...お姉様やレガリアス、ルシーラ...そして組のみんなを.....」
キャロルは辛い思いが一気に込み上げてきて、大粒の涙を零してしまう。
「だからわたくしはここにはいない方がいいんじ.....むぐぅ...」
しかしキャロルの言葉は阻まれてしまう。
京真が彼女を思い切り抱き締めたからだ。
「大丈夫...大丈夫だ、私がついてる限りそんなことは絶対にさせない、力が制御出来るまでとことん付き合ってやるからな...」
京真の包み込むような優しさに、感情を抑えることが出来なくなったキャロルは泣き出してしまった。
「お、お姉様.....うぅっ...わたくしの力はいつ発動するか分からないのに、居ていいんですの...?」
「ああ、いいんだよ、お前の居場所はここなんだから遠慮するな」
キャロルは京真の胸の中で落ち着くまでひとしきり泣き続けるのだった。
―翌日
「あっ、京真さん...にキャロルさんっ、おはようございます!もう大丈夫なんですか?」
「おはよー...ってキャロル復活してるし、よかった」
さりげなく京真と一緒に部屋から出てきたキャロルを目にして二人は安堵の表情を浮かべる。
「キャロルはもう大丈夫だ、悩みは...そこまで大したこと無かったからな!」
「ええ、ご心配お掛けしましたわ、キャロル=ラグナ、今日で完全復活ですわ!」
昨日までの落ち込みようが、まるで嘘だったかのようにキャロルは希望に満ちた表情をしていたのだった。




