竜神の腹を掻っ捌け
「我は竜神グラム・アポカリプス、全てを破壊し全てを再生する為、今ここに顕現する」
祭壇の中から出てきたその飛竜は自らを竜神と名乗った。
「こいつは…ちょっとヤバいかもな」
奴が放つ溢れんばかりの殺気に京真は身震いした。
その瞬間、奴は翼をなびかせ高速で空中を旋回し始めたのだ。
「ちょこまかと動き回るネズミが…我の紫炎で焼き溶かしてくれるわ!!」
それとと同時に紫の火球が次々に飛んでくる。
「うわっ!ちくしょう、空中にずっといられちゃ埒が明かねえぞ!」
(普通のチャカじゃ太刀打ちは出来ないし、マトモに戦うにはまず翼を潰すしかない……ならば)
京真はベレッタをおもむろに空中に構えた。
「武器変換……」
そしてベレッタが形を変え、長いバレルを持つライフルに変わった。
「狙撃は苦手なんだがな……当ててみせる」
スコープを覗き、奴の翼に照準を合わせ、一気に引き金を引いた。
「グオオオオオ!!」
発射された超高速の弾丸は翼の付け根を見事に撃ち抜いた。
「よっしゃ成功だ、降りて来やがれ竜神っ!」
轟音を立てて、竜神は落下してきた。
「ぐふふ……少しはやるようだな…だが!完全なる破壊と再生の神となった我に適う人間等居らぬ!」
鋭い牙と爪を覗かせ、京真を威嚇した。
「うるせぇトカゲ野郎……キャロルは返してもらうぞ、ウチの組織にスカウトする予定なんだよ!!」
それに対して京真は懐からロングナイフを二本取り出して二刀流の構えを取る。
(啖呵を切ったが奴の驚異的な強さは恐らく本物……これは前世以来の強敵だな、久々に痺れるぜ)
そして最初に突撃してきたのはグラム・アポカリプスだった。
「さぁ愚かな人間よ、地獄に堕ちるがいい!」
その速さはまさに閃光、それと同時に豪速球の爪が京真に向けて振り下ろされた。
「そんな大振りがこの俺に当たるかァ!!」
京真は素早いバックステップで軽々と回避した。
奴の爪は地面に激しくめり込み、それと同時に破砕された瓦礫が飛んできた。
「くっ……痛ったいな…」
次々と瓦礫を躱すも、細かい破片は防ぎきれず京真の腕や足に微細な切り傷を負わせたのだ。
(翼が機能してないにも関わらずこのスピードかよ…一発でも攻撃を食らったら人体なんてグシャグシャの肉片にされちまう……ならば全て躱しきる!)
回避に徹する選択を選んだため、グラム・アポカリプスの猛攻は続く。
奴は巨大な体躯をしているのにも関わらずチーターのような速度で迫ってくる。
それを警戒して慌てて距離を取っても一直線のブレスが飛んでくるので遠くから狙撃という戦い方も実質的に封じられてしまった。
「こうなったら……武器変換ッ…RPG7!」
ベレッタを変形させ、ロケットランチャーを顕現させる、そして一呼吸の間に引き金を引いた。
あの時のように弾頭が高速で命中する…はずだった。
「こんな小細工が我に通用すると思うたか!?貴様にお返しだっ!」
なんとグラム・アポカリプスはロケットランチャーの弾頭を太い尻尾で弾き返し、弾頭は京真に向かう。
「なっ、嘘だろっ!?」
(これは想定外だ……マトモに爆風を食らえば勝負は一気に決してしまう…)
被害を最小限に抑えるには腕をクロスした体勢を取り、可能な限り横に躱すしか無かった。
そして京真の至近距離で起爆、とてつもない熱風と衝撃が襲ってきた。
「ぐっ……!!」
京真は勢いよく壁に叩きつけられてしまう。
(ヤバい…両腕は深い火傷で…そして叩きつけられたせいで肋骨が何本か逝きやがった…)
京真の体は人間の少女なので、最小限にダメージを抑えたとしても、体への影響は甚大だった。
「万事休すか……」
(いや、ここで諦めてどうする……前世だってこれくらいの強敵と戦って勝利を収めてきたじゃないか…例え大ケガを追っても…腹括ってぶつかるしかないだろ!!)
「トカゲ野郎っ!腹を切り開かせろっ!!」
京真は自らの負傷も気にせず、驚異的な速さで奴の腹目掛けて踏み込んだ。
「人間の癖にとんでもない速さだな!だが、我の鱗は簡単に削ぐことは出来ないぞ!」
そう言うと、グラム・アポカリプスは自らの腹を庇うように尻尾で鋭い突きを放ってきた。
その速さは正に音速を超えていた。
だが
(集中しろ…集中するんだ……自分の動体視力を信じろ……それだけであの突きは躱せる…)
そして京真は見極めた、勝利へと導く道を。
「ここだぁ!!」
体を素早く捻り、突きを回避したのだ。
「なんだと……!この突きを避けるだと…」
「キャロルを返せよっ!腹掻っ捌いてやる!!」
そして渾身の力でロングナイフを二本とも、奴の腹部に突き刺した。
「ぐぉぉぉ…貴様ッ…」
「トカゲだか竜神だか知らないが、これでチェックメイトだっ!!」
京真は満面の笑みを浮かべながら、ロングナイフを思い切り動かし奴の腹を引き裂く。
「クソがァァァ!この我が…こんな……所で…」
そうして、動かなくなった竜神の腹からあの時のようにキャロルが出てきた。
血色は悪くない、どうやら生きてはいるようだ、しかし衰弱が酷い。
「キャロル!キャロルっ…私だ、助けに来たぞ、起きてくれ!」
京真が必死に呼びかけるとキャロルはうっすらと目を覚ました。
「うぅ……わたくし、助かったんですの…?」
「ああ助かったんだ!お前を生贄にしたクソ野郎はもう居ないぞ…」
そう伝えると、キャロルは大粒の涙を流す。
「そうなん…ですのね……ありがとう…ございます……わたくしを助けてくれて…」
京真は死闘の末に、竜神グラム・アポカリプスを倒し、キャロルを無事に救ったのだった。




