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胎内の竜少女

京真達の背後に居たのは黒い鱗を纏った巨大な竜だった。

「レガリアス!なんだこの竜は!?」

「わ、私にも分かりませんよっ!こんなに大きい竜見たことないんですって!」

京真は反射的にレガリアスに尋ねたが真っ先に否定の言葉が返ってきた。

そんなやり取りを呑気にしてる暇も無く、黒竜は口を大きく開けると、紫色の光を放つ。

「二人とも避けて!!あの炎に当たったらダメっ!」

するとルシーラが咄嗟の判断力で二人に向かって危険を知らせる。

それを聞いた京真達は一気に黒竜から距離を取る、すると。

さっきまで立っていた場所に紫の炎が覆い尽くした。

「……おいおいこれは…カスるだけでも危ないヤツじゃねぇか…」

京真は一瞬でその炎の危険性を見抜いた。

その理由は紫炎が覆った地面がシューっと音を立てて溶けていたからだ。

「ひえええ…あんなの食らったら体がドロドロに溶けちゃいますよ、ルシーラさんが危険を知らせてくれなかったら今頃…うぅ…」

レガリアスはあまりの惨状に思わず息を呑んだ。

さっきの口ぶりからするとルシーラはあの竜のことを知ってるようだ。

「ルシーラ、あいつを知ってるのか?」

「うん、あれは確か御伽話に登場する厄災の飛竜…グラム・ラグナ、奴が吐き出す炎は大地を溶かし、腐らせるとまで言われるの…」

(厄災の飛竜て……名前からしてヤバそうな敵が出てきたな)

「に、逃げましょう…いくら私たちでもあんな伝説の竜に勝てるわけありませんよ…戦略的撤退です!!」

「でも御伽話によればグラム・ラグナの体内には数千万枚の金貨に匹敵する、ラグナクリスタルという心臓があるとか」

慌てて駆け出そうとするレガリアスを、ルシーラの言葉によって踏みとどまらせた。

「数・千・万・枚の金貨!?…………よーし!京真さんっ!あいつを倒しちゃってください!!」

レガリアスは人任せとばかりに京真に振る。

「人に頼るなバカ!……でもラグナクリスタルか…組織拡大の資金としては是非とも取っておきたいな…よし、こいつを殺ろう!」

しかし京真も多額の金額に目が眩んでしまった。

「二人とも……メラヴード山岳地帯に来た目的を忘れてるような……」

目的をもはや見失ってる二人を眺めながらルシーラはため息をついた。


手始めに京真はある程度離れたところからベレッタを抜き、瞬時に発砲。

「銃弾換装ッ これは挨拶代わりだ、巨竜さんっ!」

しかし銃弾は鱗にあえなく阻まれ、弾かれてしまった。

「うっそだろおい、通常の5倍の威力を誇る強装弾だぞ…傷一つ付けられないなんて…」

「貫いてッ!大天光臨ッ!」

ルシーラが杖を掲げて魔力を充填、瞬く間に巨大な光の矢を生成しグラム・ラグナに向かって放つ、しかし奴は当然かのように素早い飛翔で躱した。

「この魔法が避けられるなんて想定外……」

とっておきの魔法だったのだろう、避けられてしまったルシーラは軽く落ち込んでいた。

奴は常に浮遊してるためロングナイフで戦うことは不可能だ、というより強装弾が弾かれた時点でナイフじゃ逆に折られかねない、属性付与に関してもあの鱗の事だ、耐性がついてるのは間違いないだろう。

「ん……?もしかしたら…!おいエロ女神っ」

京真は一つの可能性に賭けることにした。

「誰がエロ女神ですかっ!両断しますよ!」

何か喚いているが京真はすかさず無視して続ける。

「お前、俺にこのベレッタをくれた時たっくさんの能力を付与したって言ってたよな?もしかして武器変換…的なのは無いのか?」

それを聞いてレガリアスが顔をぱあっと輝かせた。

「よくぞ聞いてくれました!実はその銃には他の銃火器に変身出来る能力が付いてますっ!」

京真の読みは当たっていた、もしアレに変身出来るなら一気に勝利を勝ち取ることも出来るだろう。

「よし、武器変換ッ………いでよRPG7ッ!」

RPG7、かつてソ連が開発した携帯対戦車擲弾発射器で対戦車兵器としては旧式化しつつある一方で、火力支援など多目的に使用できるため多くの国で使用され続けている。

簡単に言うとロケットランチャーだ、ゲームなんかでラスボスを一撃で葬り去る最強武器としても名高い。


「よっしゃ!成功だっ!…シスター・キョウカの名のもとにグラム・ラグナを断罪しますっ!ロケランを食らいやがりなさい!!」

そういって京真は引き金を引いた、すると先端から弾頭が発射され、ものすごい勢いでグラム・ラグナに向かっていく、奴は先程みたいに避けようと翼を動かそうとしたのだが。

「ふふ、逃がさないよ……拘束魔法、ライトニングバインド!」

その瞬間、ルシーラの杖から無数の光の糸が生成され、瞬く間にグラム・ラグナを空中に繋ぎ止めた。


奴にロケットランチャーの直撃を防ぐ術は無かった。

耳をつんざくような轟音が辺りに響き渡り、グラム・ラグナが地面に落下してきた。

「まさか、一撃で倒してしまうなんて…ロケットランチャー…相変わらずとんでもない威力…」

京真は改めてこの兵器の破壊力を身をもって味わったのだ。

「というより、なんなのこの武器は……まさかグラム・ラグナを倒してしまうなんて…」

ルシーラは始めて目にするロケットランチャーに興味津々な様子だった。


「京真さ〜ん、そんなことより早くこいつの腹開けちゃって下さいよっ!はぁぁ…金貨数千枚…金貨数千枚…」

もはや金の亡者と化したなんちゃって女神を哀れみの目で見つめながらも、京真はロングナイフを取り出した。


「では、切り開くぞ、それっ!」

勢いよくロングナイフを突き立てるとロケットランチャーでボロボロになった鱗を容易く貫いた、そして上に引き上げるとグラム・ラグナの腹が切り開かれた。


「あれ……え?」


しかし腹から出てきたのはラグナクリスタルなどといった心臓ではなく、一糸まとわぬ姿をした小柄な少女だった。

「きょ、きょきょきょ京真さんっ!見ちゃダメですっ!!絶対に!!」

すかさずレガリアスが京真の目を塞ぐ。

「お、おい、でも俺は女だぞ!」

必死に引き剥がそうとしたがレガリアスの力は異様に強かった。

「でもじゃないんです!今は女でもダメなんですっ!」

「この子、どうしてグラム・ラグナの体内から…」

ルシーラが生きているのか確認するために触れようとした途端、その少女が起き上がった、するとその少女の容姿が明らかになる。

頭には竜特有のツノと流れるような灰色の髪、控えめな胸、そしてお尻の部分には細長い尻尾が伸びていた、そうグラム・ラグナの体内から出てきた少女は竜人だったのだ。

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