ルシーラ、死の淵に陥る
ルシーラはレガリアスを探すために洋館中を走り回っていた。
「はぁ…はぁ……一体何処にいるんだろう……あ、あそこに明かりが点いてる…」
彼女は微かな光が漏れている扉を見つけた。
恐る恐る中に入るとそこには、鎖で両手両足を縛られ、床に転がされてるレガリアスがいたのだ。
「レガリアスさん!大丈夫ですか!?今助けますから…」
ルシーラは魔法で鎖を焼き切ろうとするが、レガリアスが突如喋りだした。
「だめ…逃げて……ここには奴が…」
レガリアスが警鐘を鳴らすも、既に遅かった。
「まさか、私の部下達を掻い潜りここまでたどり着くとは」
背後から男の声が聞こえ、ルシーラは背筋が凍るような悪寒に襲われた。
なんとそこには、もう一人の黒騎士が立っていたのだ。
他の黒騎士と違うところと言えば、奴はフルフェイスの兜を被っておらず、鎧には紀章の様な装飾が着いていた。
「…!なんでここにも………あなたは誰!?」
「俺はウォーバルド帝国黒騎士団、団長のビンセントだ、以後お見知り置き…いや今ここで死ぬ人に言っても意味無いか」
なんとこの男は黒騎士達のトップだった。
ビンセントはおもむろに腰からダガーを二本抜いた。
「ルシーラさんっ……そのダガーには毒が塗ってあります、気をつけて…」
最悪の状況だった、京真が居ない今奴に対抗できるのはルシーラしかいなかった。
(無謀な戦いかもしれないけどやるしかない……こんなところで退いたらあの時と何も変わらないじゃない!)
ルシーラはありったけの魔力を杖に集中させる。
「…先手必勝!…光臨!!」
光の矢が五本生成され、ビンセント目掛けて発射される。
「……こんな程度か」
しかしビンセントは眉ひとつ動かさず五本の矢を全て躱した。
「小娘、相手が悪すぎるわ、一旦視力を貰うぞ!」
そう言うと奴は新たにナイフを一本抜くと、ルシーラの顔に向けて投擲した。
「きゃっ……!」
飛んできたナイフを紙一重で回避しようとしたが、運の悪いことにルシーラは額を掠ってしまった。
額から流れた血が右目の視界を塞ぐ。
(まずい、視界が…これじゃ奴の動きが分からない…)
そしてビンセントが視界から消えたと思いきや、いきなり目の前に現れダガーの突きを繰り出してくる。
「……がはっ…」
それはルシーラの腹部へとモロに突き刺さってしまう、続いて凄まじい脱力感が彼女を襲う。
「諦めろ、このダガーを食らった時点でお前に勝ち目は無い」
しかしルシーラは倒れなかった。
「…ヒールッ!」
そう、彼女は回復魔法で毒を打ち消していたのだ。
「ほう、回復魔法で毒を打ち消すとは…高度なことを……」
「はぁ…はぁ…ゴフッ…まだ…倒れないよ…」
ルシーラは余裕そうな笑みを浮かべる。
しかし毒を無効化したからと言って目の前の脅威は消えた訳では無く、もしマトモにやりあえばルシーラは死んでしまうだろう。
腹の傷は回復魔法でマシにはなってるものの、血がかなり流れている。
ルシーラが死の淵に立たされているのは紛れもない事実だった。




