僕は君のストーカー、君は……
駅構内の図書館の返却ポストに、憧れの司書、吉野さんの観察日記を入れてしまった僕は絶望していた。彼女の日々の行動や、彼女に関する妄想をまとめた日記だ。職員が本の回収に来たら取り返そうと張り込みをしていると、兄が通りかかった。
「待ち合わせ? 寒いんだから風邪ひくなよ」
微笑んで立ち去った兄は、相変わらずイケメンだ。昔から優秀で、僕とは正反対だ。その時、ポストの側の人影に気が付いた。吉野さんだ。チラと目が合ったような気がした。大急ぎで駆け寄ったが、彼女は既に日記を開き、表情はみるみる曇っていく。それを奪い取って逃げようとすると、腕をつかまれた。
「これを書いたのは貴方ですか」
「ごめんなさい……」
「いいんです」
彼女は青ざめたまま笑った。
「貴方のこと、図書館でよく見かけます。お友達からなら」
僕は天にも昇る気持ちだった。
その日から、彼女との交流が始まった。仕事や趣味、家族のことなどを話した。彼女はいつも楽し気に聞いてくれた。図書館に通っては、こっそり手を振り合った。三か月ほどそれが続いた。家族の分もとバレンタインチョコを作ってくれた彼女が言った。
「お家に遊びに行きたいわ。お兄さんとも会ってみたいから」