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筋トレしたら、最強魔法使いになりました

作者: カレーアイス

 世界線は中世ヨーロッパ。

 通称ナーロッパです。

「ここが、国立魔法学院……」


 珍しくも魔力を持った平民であるマスト(12歳)は、王立魔法学院を訪れていた。

 少し緊張しつつも、魔力があれば絶対に入学できると自分を鼓舞して、周りを歩く人に従い正門を通り抜けた。





「うっ!」

「オラオラ、立てよ!」

「ハハハ、ダッセえ!」


 押し倒されて、腹に蹴りを入れられた。

 周りから聞こえる嘲笑で耳が痛む。


 入学して1週間後、マストは貴族の人にイジメられていた。

 魔力は普通、貴族しか持っていない。

 時に魔力を持っているマストの様な人間も現れるが、その魔力量は貴族に大きく劣っている。

 そして、魔力量は一生でほとんど変化しない。


「はいはい、席に着いて。朝礼始めるわよ」

「はーい」


 先生もイジメを止めることはなく、むしろ促進しているイメージすらある。

 とにかく、制服に付着した土をはたき落とし、痛む腹を抑えつつも自分の席に着席した。

 これから3年間、マストはこれに耐えられるのだろうか。

 だが、そんなマストに、更なる困難が襲い掛かる。



「さて、今日はお待ちかねの実践演習です。皆さん、運動場に移動してください。あ、今回はペアで授業を行うので、二人に分かれておいて下さい」


 クラスメイトが騒ぎながら廊下を歩いていく中、マストは目立たない様に最後尾に着いていく。

 何故目立たない様にするかというと、


「おいマスト、俺とペアを組もうぜ」


 マストの左肩に手が置かれ、震えながら振り返ると……手の主はイジメ主犯格の貴族、レスト・ウェルンだった。

 彼の思惑は透けて見えている。

 ペアで模擬戦をするので、真正面からマストをボコボコにするつもりなのだ。


「いや、僕はゲイン君と……」


 同じ平民であるゲインに視線を送るが、こっちに標的を移されては敵わないと、ワザとらしくそっぽを向いた。

 ウェルンは悪者らしい笑みを浮かべ、


「ん、誰と組むって?」

「……ウェルン君と組ませて下さい」


 マストとウェルンで組むことになった。



「ペアは決まった? じゃあ、順番に模擬戦していって」


 やはり模擬戦をすることになって、マストは肩を落とす。

 貴族同士の同レベルの決闘が続いていき、ついにマストとウェルンの番になった。


「では、始め」

「ファイアーボール!」

「フレイムキャノン」


 開始と同時に、マストの初級魔法とウェルンの中級魔法が衝突し……もちろんマストの方が撃ち負け、炎に包まれた。

 熱い!とても熱い!


「大丈夫か、平民?」

「水、水!」

「仕方ないなあ。ファイアーボール」


 さらに炎が継ぎ足され、制服が燃える。


「すまん、間違えて炎魔法を使ってしまったwww」

「っちょ、それはダメだってwww」

「早く消してやれよwww」


 周りからも嘲笑の声が聞こえ、心も体も制服もボロボロになった。

 さすがに死なれては不味いと思ったのか、ウェルンは火を消した。

 ただし、水魔法ではなく、土魔法でゆっくりと。


「……」


 何か文句を言おうとしたが、その気力すらない。

 だが、ウェルンの次の言葉が、


「無様な姿だなぁ。しょせんお前は平民、貴族の俺には一生敵わないのだよ。恨むならお前の親を恨め」

「……おい、今なんつった」


 マストの心に火を着けた。

 さっきまでは声も出なかったのに、立ち上がり、ウェルンの胸倉を掴む。

 しかし、その程度で圧倒的な実力差が埋まる訳ではない。

 ウェルンは手を振り払い、さらに言葉を続ける。


「汚いぞ。……親の品性が察せられるな」

「うがああああああ!」


 自分のことを笑われるのはいい。

 殴られるのも、受け入れよう。

 だが、早いうちに父親を無くして、女手ひとつでマストを育ててくれた母さんをバカにするのは許せない。

 不意を突いて再度立ち上がり、ウェルンの頬を殴りつけた。


「テメェ!フレイムキャノン!」


 中級魔法が撃たれるが、そんなのでは止まらない。

 むしろ、炎を纏って殴ってやる!

 そう思って、さらに踏み込みんだが、先生に止められた。

 ウェルンも拘束されているマストを殴ろうとして、先生に止められる。


「「離せ!」」

「離しません。決着はまた今度、決闘で付けなさい」





 マストは、保健室で目を覚ました。

 制服がボロボロなのは変わらないけど、体は回復魔法をしてもらえたのか全快している。

 だが、言われた事は変わらない。


「オイ」

「ッツ、テメェ!」


 ベットの傍にウェルンが現れた。

 すぐに上体を起こして拳を突き出すが、簡単に止められる。

 彼は、反撃することなく、


「先生の言うことを聞いてなかったのか?決闘で決着をつけるんだよ。1週間後、ボコボコにしやるからな」


 言いたいことだけ言って、去っていった。

 どうやら、1週間後にマストとウェルンで決闘を行うらしい。


 ……冷静になって考えてみると、今の実力では、絶対にウェルンには勝てない。

 マストは初級魔法しか使えないけど、ウェルンは中級魔法を使いこなし、上級魔法を使えるという噂もある。

 だが、奴は母さんを侮辱した。

 ……絶対に決闘に勝って、発言を訂正させなければならない。


 保健室で作戦を考えていると……カーテンが開いて、誰かが入って来た。

 マストと面識はなく、ガタイがいい人だ。


「……誰ですか?」

「2年のリキだ。事情はさっき聞いた。……教えてやろうか、あいつに勝つ方法を」

「そんな、簡単に……」


 反論する様に、リキさんに目をやると……彼は、一枚のカードを提示していた。

 それは、12月に行われる学院最強魔導士決定戦の順位を示す物で、No1と書かれている。

 つまり、彼は2年生にも関わらず、学院で一番強いということだ。


「もう一度問おう。教えてやろうか?あいつに勝てる方法を」

「……お願いします」





 放課後、リキさんに言われた通り、動き易い服装でとある山の頂上へ向かった。

 マストがたどり着く頃には、リキさんはもういた。


「こんばんは」

「おお。来たか」

「それで、どうしたらいいですか?」


 早速、強くなる方法を聞いてみる。

 すると、彼は……急に腕立て伏せを始めた。

 苦し気もなく、スイスイとこなしている。


「とりあえず、俺と同じように筋トレしろ」

「……もしかして、魔導士の戦いで殴る、とか?」

「違う。やってる途中で説明するから、とりあえず筋トレしろ」


 マストはその有無を言わさぬ感覚に、諦めて腕たせふせを始めた。

 5回目までは苦しくもなかったが、回数を重ねるごとに腕が痛くなっていく。


「それで(ハァハァ)どうやって(ハァハァ)強くなるんですか?」


 息を荒くしながら質問を重ねると、筋トレを止めずに彼は語ってくれた。


「……基本的に、エネルギーは循環している。例えば、モーターを回せば電気が発生し、電気を使えばモーターが回る。

 つまり、モーター→電気→モーター→電気……となるんだ」

「えっと……それになんの関係が?(ハァハァ)」


 突如(とつじょ)始まった謎の話に疑問を持ちつつ、リキに合わせて腹筋をする。


「魔法の中に、身体強化というのがあるのは知っているな?」

「はい、基本魔法の一つです」

「それを図に表すと、魔力→筋肉になる訳だ」

「まさか……」

「なら、筋肉→魔力もなければ可笑(おか)しいじゃないか」


 まさかの理論!


「で、でも一週間でそんなに強く……」

「大丈夫」


 スクワットまで終わらせ、一旦休憩タイムに入っていたマストに、リキが回復魔法をかけ、体の痛みが消えた。


「回復魔法で超回復を引き起こす」

「……なるほど」


 また、腕立て伏せから筋トレを開始する。

 先ほどの体の痛みは全て消えたが、もう一度体に負荷がかかる。



 学校にも行かず、2日間ずっと筋トレを続けた。

 体格はがっしりとしてきて、強くなった感覚はあるが……苦痛とストレスで頭がやられそうだ。


「こんなんで本当に強くなれるのかな?」


 そう呟いた瞬間。体に凄い衝撃が走り、山を転がった。

 リキがマストを殴ったのだ。


「なにを……」

「疑うな!」


 胸倉を掴み上げ、正面から対話する。


「テメェが自分の筋肉を信じないで、誰が信じるんだ!?」


 丁寧だった口調は崩れ、やまびこの様に音が反響する。


「テメェの筋肉だけは疑うな。謝れ」


 普通の状態だったら、意味が分からないとなるのだが、マストは2日の筋トレで頭がイカレている。

 座り込んで、


「ごめんな」


 自分の筋肉に謝った。

 すると、声が聞こえたのだ。


『いいよ』


 甲高い声だった。

 誰か近くにいるかと周りを見渡すが、リキ以外の人影はない。


「もしかして、お前なのか?」

『うん』


 もう一度、自分の筋肉に語りかけると、返事があった。


「聞こえたか?それがお前の筋肉だ」

「はい!」

「スパート上げていくぞ!」

「はい!」




 決闘当日。

 マストは、別人の様になっていた。

 肩幅、腕、足、首……体のあらゆる部分が、倍以上に太くなっている。


「お前……本当にマストか?」

「当たり前だ。お前程度に逃げると思ったか?」


 筋肉ができたことにより、自信もついた。

 もう俺は……負けない。

 そうだろう、相棒。


『うん』


「では、始め!」


 担任が決闘の開始を告げた。

 筋肉で魔法を強くする方法は簡単だ。身体強化魔法の逆をすればいい。


 まず、魔法を強化したいと願い、筋肉から力を抜いて脱力する。


「フレイムキャノン!」

「ファイアボール」


 ウェルンの中級魔法と、マストの強化された初級魔法が衝突し……今度はマストの魔法が打ち勝った。


「なに!?」

「その程度か?」

「……何故、中級魔法が初級魔法に負ける!?」

「俺には相棒がいるからな」

『うん』


「……ふざけるな!食らえ水龍!」


 激昂したウェルンが、水の上級魔法を撃って来たが……その程度でマスト達はやられない。


「さっきのファイアーボールは本気の何割だと思う?」

「何言ってんだ!?」

「1割だ。ファイアーボール」


 本気で放たれたファイアーボールは、歯向かう水龍を全て蒸発させて、ウェルンを炎に包んだ。


「どうやって、そんな力を……」

「教えてやろうか……」


『「筋肉だよ」』


 中世ヨーロッパではモーターなんてない→他に良い感じのが思いつかなかった。


 面白かったという人は、★★★★★をお願いします。

 好評だったら、こういう一発ネタの短編を投稿するかもしれません。

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