ショートショート:人生ゲーム
目を覚ます。そこは「見慣れた」空槓だった。
(よう、おかえり。今回の人生は楽しめたかい?)
隣で暇を潰していたらしい「友」が声を掛けてくる。
楽しめた、か。
ああ、楽しめた。自由気ままに生きた。思うままに人を殺し、思うままに女を犯した。思い付く限りの悪事をやり切った俺は、あっさりと死んだ。
俺は手元を見る。
「人生ゲーム」
人間の一生を30分ほどで「体感」する「ゲーム」だ。本体はトランス状態となり意識だけが別の体験をする、そんな「ゲーム」。そこでは20世紀前後の世界に生まれ落ち、何も知らないまま人のルールに則って生きる。
今回の俺は殺人鬼になった。レイプ魔だった。そして死んで、「こっち」に戻ってきた。
そうか、あれは「ゲーム」のだったのか。ああ、「こっち」の記憶はある。
でもオカシイな。俺は俺のままだ。記憶にある「こっち」の俺じゃ無い。
(もう一回やるのかい?)
手元を見ながら考え込んでいる俺に「友」が尋ねてくる。
そうか、「こっち」でまた楽しめるのか。
戻ってきた俺は本体である「神」の力が揮える。あちらで生きて、そして死んだ非力な「人」ではない。
手始めに「友」を殺してみるか。
俺の唇はつり上がっていた。
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更生プログラムは順調か?
はい。今、魂の洗浄作業に入ったところです。
あそこまで汚染された魂だと通常の漂白作業では処理しきれないからな。ここまで酷いのは私も久々に見たよ。
あ、早速1度目のループに入りましたね。
早いな。数値は……まだまだか。このまま基準値を下回るまで更生プログラムを回すように。
はい。ところで、以前は直接的な苦痛を与えていたと聞いていますが。
人道的では無いとの苦情がね。人間道から落ちてきて人道も何もあったものではないと思うのだがね。
はぁ。
取り敢えず浄化が終わったら上に戻してやってくれ。
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なぜだ。「こっち」では何もかもが上手く行かない。
何回も死んだ。何度も何度も死に戻りした。
「神」の体は死なない。セーブポイントに巻戻るだけだ。
だが、流石に面倒になってきたな。そもそも、俺は何で……
息抜きにピンでは使えないっぽいネタを投下。