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ウミガリュウ  作者: ヒラガナ
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第三話 増殖する謎の盾と黒い球体

Creating「不完全な(インパーフェクト)(シールド)


 ウミがそう唱えると光で構成されている半円型の物体が現れ、半円型が吹き飛ばされた諏訪子を掴んだ。


Creating「氷山(アイスバーグ)創造(クリエイション)


 瞬間、迷いなく麗夜は魔術を使いウミを担いでいた紫を避けてウミだけを氷漬けにした。それはウミが諏訪子を攻撃したり、盾にする可能性がある中でウミの生存をも考慮した最善の策だった。


「ルーミアを頼みます!」


「「わかったわ」」


 麗夜は誰がとは言わず諏訪子を吹き飛ばしたルーミアとの戦闘を頼み、霊夢、紫の二人とも一斉に動く。紫は神業的な繊細さで凍らされたウミを麗夜に投げつけ、自身が作ったスキマに入る。霊夢はもうすでにルーミアとの戦いを初めていた。

 ルーミアを任せた麗夜は氷山(アイスバーグ)創造(クリエイション)をウミに再度撃ち込みながら一瞬にして諏訪子との距離を詰め、形を曲げて諏訪子を掴んでいた半円から引き剥がそうとするが、半円の底辺からワカメのようにウネウネとしたものが数本生え、それが蛇のようにグニャグニャと曲がりながら麗夜に向かった。直感でそれを危ないと感じ取った麗夜はそれをバックステップで避けつつ、氷山(アイスバーグ)創造(クリエイション)を何度もウミに向かって打つが、


「無駄ですよ。僕は僕自身の体をリセットできるので、他の手を試してもらったほうが良いと思いますー。まあそれも能力の一部でしかないんですが」


 間抜けにも自分の能力を解説しているウミの言うとおり、ウミの体を覆っていた氷結がなくなっていた。ある意味無敵なのだろう。

 麗夜は諏訪子の方向を見る。そこには、もう半円とは呼べなくなったそれがタコの手足のように諏訪子を掴んでいる。諏訪子はとてもぐったりしていて、小さく「麗夜...力が...」と呻くだけで精一杯のようだったが、おかげであの盾の力も理解できた。


「あんたの盾系魔術の能力は触れると弱体化する、そうだな」


 麗夜は少しでも会話で時間を稼ぎ目の前の男を殺さずに問題を解決する方法を考える。


「ええ、ちょっと違いますけどだいたいそんな感じです」


さてどうする?


 考えて見ればウミはトライド・レードや氷山(アイスバーグ)創造(クリエイション)を無効化した。威力の強い技で吹き飛ばそうにも諏訪子を人質に取られている。気絶させる?いや、やるとしたらぶっつけ本番だ。力加減を少しでも間違えればウミは死ぬし、生きていれば諏訪子が殺されてしまう。一番気になるのはウミが背負っている円柱状の荷物だ。だがもう氷山(アイスバーグ)創造(クリエイション)で攻撃している。それで無傷ということは、壊せない可能性がある。よしんば壊せたとしてここは人が多すぎる、あの固さの物を壊す威力の攻撃をそうポンポンと出せば、周りの人を巻き込んでしまうだろう。


「というか、あんまり悠長に話してられませんよ。このままだと諏訪子さん衰弱死しちゃいますから」


 この人は魂が色々と混ざっている。どれが彼でどこまでが自我か全く分からない。もしかしたら操られているだけなのかも知れない。だが――――――


「さっきあんた、先にこうなることを謝ってたよな」


「ええ、申し訳ないと思っています。あなた達は何も悪くないのに」


「俺も先に謝るよ。殺してしまったら...すまない」


 それでも、いや、殺してしまうかもしれないからこそ麗夜は深く覚悟を決めた。



Creating「突貫光」


ドシュゥゥン!


 頭をひとつ消し飛ばすには十分な威力の光の柱がウミの首の上と後ろの木々の間を通過していった。罪悪感を感じるより先に全く動いていない諏訪子へ駆け寄り体調を確認する。気絶していただけのようだ。「ふぅー」

 そして麗夜は地面にころがっているウミの死体を確認し、ガッツポーズをとる。


「よし!思った通りだ!」


何故、ガッツポーズをとったのか、それは麗夜がサイコパスだからでも殺人鬼だからでも手こずった弱敵が死んでいて安堵したからでもない。ウミの頭が再生していたからだ。


 麗夜はウミが背負っている荷物こそがウミの格であるとにらみ、あれさえあれば何度でもウミはリセット能力を使えるのだろうと考え、その可能性に賭けた。そして読み通りウミは再生した。


ドシュン!ドシュドシュン!ドシュン!


 諏訪子を背負い、ウミに突貫光を撃ち続けながらゆっくりと下がるが、またもう一人頭上から“ゲーム”のプレイヤーの気配がする。何者だと上を向くと知っている人物がそこに()()()いた。


「おいおい!麗夜さんじゃねぇかよ。消えたとおもったらこんな所にいたなんて羨ましいな!」


 その男は“ゲーム”のキャラクターのデフォルトの顔で職業戦士の初期装備のレザー防具を着ている。

 彼はあの“ゲーム”でチート使いとして知られていた。今その男が飛んでいるのはチートの一種である。チーターではなくチート使いと言われていた理由はチートの使い方が他とは一線を画すものだったからだ。


「なんでここにいるんだよ、クヲリ・アンプタテ。」


「お互い様だろうが、麗夜さん!」


 そう言い放つとクヲリはとあるチートを行使する。


「うーんそうだなぁ...あんたと戦うとなると、二対一であることや麗夜さんがおぶってる人、オレが空を飛ぶことも考慮して、レベル2000くらいか?」


「ほんとに考慮した結果ですか?俺の4倍はありますけど」


 そう、クヲリの主に使うチートは自身のレベルを操れるというものである。彼は戦う相手の地形や相性、プレイヤースキルや心理状態などの優位性をよく考え、ハンディキャップとしてそのチートを使っていた。つまり、戦う相手が自分より弱ければ自分のレベルを下げるし、強ければ上げるというチートの使い方だ。

 NPCや雑魚敵にさえその縛りを使っているところが確認され、彼はチーターではなくチート使いという愛称で呼ばれた。

 だがチーターはチーターである。アカBANを何度も食らっていた。クヲリ・アンプタテ


「別に誇っていいぞ麗夜さん、あんたは最強だ。こうでもしねぇとそもそも戦いにすらなんねえ程にな」


ブォォオオオン!    オオオオオオオ!


 霊夢達の方から奇妙な重低音と大きな歓声が響く。チラと見て、見えた光景は倒れた霊夢と紫、そして歓声を浴び満足そうに両手を広げ翼を生やした大人の女性。ルーミアに格好やポーズまでもが似ている所を見るに魂が違うようだが、あれがルーミアなのか?

 そのルーミアのような人がこちらに近づいてくる。


「はぁ、危なかった。終わったぞー」


「これで三対一だな。流石に飛行チートは切っとくか」


「ok!復k――――ドシュン


 諏訪子を担ぎ直した麗夜はとりあえずでウミの頭を撃ち抜き、深く思案する。


「よし、よしよし、この状況をどう突破する?」


 幻想郷に入ってから初めての苦戦だ。霊夢と紫を倒したルーミア、レベル2000のクヲリ、生き返り続けるウミ、敵はこれだけ揃っている上、諏訪子を背負わなければならず、周りはまだまだ宴会を楽しんでいる。そして霊夢達の安否確認も終わっていない。

 そんな最悪という言葉が最高に当てはまっている状況下で麗夜は明らかに頬を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「霊夢と紫か、はぁキッツいなー」


「さて任されたは良いもののどう瞬殺しようかしら」


 ルーミアと霊夢、両者は向き合いながら同じタイミングで浮き上がる。


夜符「ナイトバード」


ダン、ダン、ダン、ダン、


 左右交互に弾幕が霊夢を襲うが、危なげなくそれを避けながら弾幕を当て続ける。


「作業ね。前回と何も変わってないじゃない」


「まあまあ、戦いはこれからなんだし」


 言い終えた後、ルーミアの背後から紫が現れ大量の弾幕を浴びせる。


バァン


「これで終わったわ。ルーミア」


「うへぇ、やっぱり弾幕ごっこじゃ敵わないかぁー」


 言いながらまだまだ戦うつもりのルーミアは黒い大剣をまるでそこに鞘があるかのように虚空から引き抜く。

 そして頭のリボンに触れそれを取った。するとルーミアの体は変質していく。髪も身長も伸び、背中からは翼が生え、そのギラついた笑みにはアクセントとして八重歯などでは決してない明確な牙がそこにはあった。


「あの特徴はレミリアやフランと同じ...紫、あれは何?」


「お察しの通り吸血鬼よ。まさかとは思ったけど、あの封印が解かれていたなんてね」


 何れにせよ彼女はスペルカードルール上で負けたにも関わらずまだ戦う意志を示している。この時点で彼女達の戦いは弾幕ごっこから殺し合いに変わった。


「なんだかんだ言って霊夢ってあまい所があると思う」


 ルーミアは剣を水平に構え真っ直ぐ霊夢に突撃する。突然、正面に現れたスキマを斬りつける。できたスキマの隙間をくぐり抜けつつ勢いを利用して剣を霊夢の首元へ振り抜く。


ぶぉォン


 霊夢は後ろに大きく下がり剣は盛大に空振った。ルーミアはそのまま回転しつつもう一度剣を振る。

 二度、三度、四度、とルーミアは独楽のように回りながら霊夢を追う。


「どうしてそう思う...のっ!」


 霊夢は剣が回転するタイミングを見計らい剣の間合いの内側へ進み、ルーミアの金色の髪を掴む。


「だって、変身してるとき攻撃して来なかったし、」


そのままルーミアの顔を地面に叩きつけ、押し付け、そのまま突き進む。


ガガガガガガガガガガガガ


 ルーミアの頭が磨り減ってしまった。


 「ふんっ!紫、今よ。」


 霊夢はすぐにその場から退き、力を溜めていた紫へ合図を送る。合図を受け取った紫は力を解放し躊躇なく上から回避不能のビームを浴びせた。


「これで本当に終わりね、ルーミア」


「あー、まだみたいだけど」


「えっ?」


 紫は霊夢の言葉に驚きビームの落下地点を見る。

 そこにあったのは黒い球体だった。地面に

半分埋まっていて、日の光を吸収したかのように黒く暗く、ただ不気味に佇んでいた。


「あ、あああああ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛」


 その球体の中からまるでサイレンのような調子の上がり方で声が響く。


「まずいあれは、霊夢!もっと離れて!」


「.....っ!」


ブォォオオオン!


 黒い球体が二人が逃げ切れないほど急速に大きくなり二人を呑み込む。


 その中では目は見えず、自分の声さえ聞こえない。それどころか自分が今上を向いているのか下を向いているのかも解らなかった。そして何故自分はここにいるのか、何をしようとしていた?私はだれだ?ここは...何?


 彼女達は五感と意識を黒く暗く塗り潰され、やがて意識を失っていった。







「やべー、追撃されてたら死んでたー。甘過ぎる霊夢と紫に感謝、感謝だね」


 殺し合いを終えたルーミアはひどくあっけらかんと今まで死闘を繰り広げていた相手に向かって皮肉混じりの感謝をする。


オオオオオオオ! ざわざわ「すげえあいつ博麗の巫女をのしたぞ!」ざわざわ「あいつが異変の黒幕か!」ざわざわ「まあ、あたいのが強いけどね」


「おー!皆ー!ありがとー!」


 ルーミアは無邪気に歓声を浴び満足そうに両手を広げた。

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