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ウミガリュウ  作者: ヒラガナ
12/13

第十話 真実②


「,,,早速だけど話をしましょう」


「ああ、永琳さん。聞かせてくれ」


「まずは私の部屋に来なさい」


 そう言われ、麗夜は永琳に導かれるまま永遠亭の中のとある部屋に入る。部屋の中は異常なものだらけだった。人間がひとり入れるほどの大きさの試験管、いつかのウミが背負っていた円柱状の機械、そしてあの「ゲーム」の接続機。正常な物といえば木彫で作られたと思われる机と椅子2つがある。他の物と比べて浮いていて逆に不自然に見える。


「この椅子に掛けてちょうだい」


 永琳は自ら椅子に腰掛けながら麗夜にも椅子に座るように促す。


「はい」


「さて、と。何から話しましょうか。大分話を端折ることになるけれど、いいかしら」


「お願いします」


「分かったわ。,,,,,,まず結論から話すと、これまで私達がしてきた茶番は幻想郷を害そうとする神と守ろうとする神との戦いのための準備よ」


「も、もうちょっと噛み砕いて説明してください。分かりにくすぎます」


「無論、説明はするわ。幻想郷を害そうとする神、便宜上エイリアンと呼ぶけれど、エイリアンは幻想郷だけじゃない、これまであらゆる世界を侵略し吸収してきた生粋の侵略者(エイリアン)なのよ。

 そいつの侵略の仕方は本体は別次元に潜み、文明の何か一つの概念に種を残し、少しづつ侵食するという姑息な手段を使うのよね」


「幻想郷はそんなモノに狙われたと、それでそいつはこの世界の何に種を残したんですか?」


「システムα、簡単に言えばあなたの居た世界の「ゲーム」のシステムに侵入したの」


「それはつまり、外の世界も狙われてるってことですか」


「そうね、そして幻想郷の全ての生き物にはシステムαが適用されている。これにより幻想郷の全ての生き物がエイリアンの感覚器となるわ。 

 簡単に言えば私が幻想郷の住民たちにエイリアンが危険だと呼び掛けて、作戦を立ててもそれがエイリアンには筒抜けだということよ。だからこそあなた達に私達の目的を告げることは出来なかったのよ」


「そうか、だけど永琳さん。ここで俺にそんなことを言えば俺からエイリアンに情報が伝わるんじゃないか?」


「大丈夫。あなたからはシステムαを摘出しているから。もちろん私達からもね」


「いつ、そんなことを,,,あ!」


 思いあたる節はある、ウミに能力を吸いとられた時だ。あれはシステムαを摘出していたのか。


「だけど、何故ですか?まさか、俺に真実を伝えるためだけに俺からシステムαを抜いた訳じゃないですよね」


「ええ、もちろん。実はエイリアンを倒す方法として、一つのアカウント以外のシステムαアカウントを消去してエイリアンの種をその一つのアカウントに絞り込み、絞り込んだ種を伝ってエイリアン本体にたどり着く方法があるの。その方法をウミ達が稼いだ時間を使って今、使用したわ。

 今の状況を説明するとあなたのアカウントにエイリアンの種が集まり、あなたのアカウント以外の「ゲーム」のアカウントは全て消去されたのよ」


「どうしてそれに俺が選ばれたんだ?」


「ふふ、実はね全てがうまく行けばあなたのシステムαは、いえ、レベルや魔術と言った方がいいかしら。それらが戻ってくるのよ。

 人にはそれぞれ器がある。そしてあなたの器は強くなることに特化している。これからもその力で幻想郷を守り続けて欲しいの」


「責任重大だな、だけど安心しました。真実が知れて良かった」


  バタァン!!!


「ぁぁあああ!」


「正邪!?」


「何故ここに…!」


―――――――――――――――――――――――――――――


ひゅううううぅぅっ ゴン!!


「ごはっ!なんだ?急に盾が使えなくなったぞ。おお!つまり、計画は順調ってわけですね永琳さん!」


「一体、何を言ってるんですか?勝手に落ちて勝手に納得しないでください」


「いやぁすいません。ワケわかりませんよね,,,ああ!もうこうなったら真実は言ってもいいですね。聞きます?真実」


「は?ちょ、」


「まあ別に聞かなくても言いますが。実はですね――――――」


バババババン!バン!バキッバキバキバキバキッ!


 木が折れるような乾いた音がした。それも一本や二本ではなく何十本も一斉に折れたような爆音だ。


「おろ?」


「今度は何ですか!」


 ウミと妖夢は音源に首を向けた。それは竹から出た音だった。ただウミ達にとって予想外な事態が二つ、一つは竹が折れているのではなく竹林が巨大な肥大化する肉塊に潰されているということ。もう一つはその肉塊が出現した方向は今さっき麗夜や霊夢が向かった先の永遠亭ということだ。


「おーっと、あれ?緊急事態、ですね」


「あれが貴方達の目的では無いみたいですね。なら早くあそこに行きますよ!」


「行ってください。後から追い付きます」


 その言葉を受け取った妖夢は何ができるかも分からずに飛んでいった。ウミはというと妖夢とは反対側に駆け出す。ウミの目的地はルーミアだった。


「ルーミア、ルーミア。起きてください」


 ぺちぺちと小さくなってやわらかくなった頬を叩きルーミアを起こす。ルーミアは目を擦りながらゆっくりと起きあがり、一言。


「お腹すいたー」


「そう言うと思って持ってきましたよ。僕の腕です。はいどうぞ」


 ウミは持っていた刀で自分の左腕を切り落とす。


「痛みを感じないから、脳を弄られるのも悪くなかったかもな。ほらルーミア、目は覚めましたか?」


 と、独り言を言っている合間にいつの間にかルーミアは腕を完食していた。


「命を食べてる感覚じゃないー」


 泣き言を宣うルーミアを他所にウミはルーミアの首に腕を回し、体を固定した。


「あの暴れてる肉塊が敵です。運んでください!」


「馬代わりにつかうなよ、まったくもー」


 なんだかんだ言いながらそれでも飛んでくれるルーミアに感謝しつつ、ウミはあの部屋での永琳との会話を思い出していた。


》》》》》》


『あなたに与えられた力は主に四つよ。造化三神の残骸の力、浦島太郎の力、「ゲーム」のアバター、吸血鬼との契約よ。

 あなたの器を継ぎ接ぎで無理矢理大きくしてから入れたそれらの力はここからの局面で大いに役立つでしょうね』


『ええ、身に余る力ですが。使いこなして見せます』


『その意気で頑張ってちょうだい。ただ、不安は残るわ。「ゲーム」のアバターと吸血鬼との契約は他人頼りの能力になるでしょうから、いつ消えるか分からない。

 したがって、あなたの再生能力の源である造化三神の残骸とエネルギー源である浦島太郎の力だけで何とかやりくりしなければならなくなるかも知れないわ』


『そうですね。策とかはありますか?』


『もちろん。あなたの二つの能力をあわせて作ったその「調和を司る程度の能力」にはリミッターがあるのよ。残骸といっても元はといえばあの別天津神(ことあまつかみ)よ。リミッターが無ければ、また世界の全てが「平等」にされてしまう危険性を孕んでいる』


『はあ、つまり?』


『つまり、有事の際はそのリミッターを外せるということよ。リミッターは五段階あるの。分かりやすくレベルで表現しましょうか』


 そう言って永琳はウミの能力が記載された黒板を取り出した。







 レベル4、調和が自分に向けられていて、ウミ体を調和点として記録し、体が欠損しようが消されようが魂さえ残れば、その状態を保ち続ける力。


 レベル3、レベル4の能力に加え自分の調和点を司り、自分の体の形の調和点を設定すれば思い通りの体の形になれる。


 レベル2、レベル3の能力に加え、相手と自分の調和。


 レベル1、自分以外の調和点すらも制限なく操れる。


 レベル0、もはやリミッターは機能せず、造化三神の復活を意味する。この状態になればもはや世界は完全なる平等に支配され、人の個性が消える。


 この調和を司る力は主に造化三神の力であり、浦島太郎の力はそれにエネルギーをあたえる意味を持つ。浦島太郎は日本によく知られる童話だからこそ、それに思いが集まる。その思いこそが造化三神の残骸へのエネルギーとなる。

 故にウミの魂には造化三神の残骸を素体として使い、体は浦島太郎の遺体で造られている。






『えっと、人の体を何だと思ってるんです?というよりこんな物どこで手に入れたんですか?』


『今、その話はいいの。それより覚えてちょうだい。あなたの意識の深くにそのリミッターはあるわ。緊急時には使いなさい』


《《《《《《


「リュウ、着いたぞー。肉塊の真上だ」


 回想に耽っていた頭を振り眼下をにらめつける。


「ありがとうございま、、、ってあれ燃えてない?」


 そこでは何があったのかあの肉塊が燃え盛っていた。


「さっき妹紅が飛んでったからな、見てなかったのかー」


「えぇ?大丈夫ですかね皆。まあ考えても仕方無し。リミッター解放!レベル2!」


 ウミは叫びルーミアの首に巻き付けていた腕をほどき、急降下する。


「あー、まってー」


 ルーミアも自由落下に任せ、ウミに続いた。


――――――――――――――――――――――――


 不快な何かに包まれて、ゆらりゆらりと意識を漂う。まるで未来への果てなき不安が増幅したかのような不快感だった。実際未来への不安は人より大きい自信がある上、絶賛不安を抱くような状況である。不安はニートだったころの2倍三倍にも増しているだろう。


 普通ならこういう意識を失う場面って心地いいはずだろ、と麗夜は思う。


 あの円柱は俺のアカウントが入った器らしいなこの状況は俺のアカウントに入ってる種ってやつの所為なのか、と麗夜は思う。


 それにしても皆は無事だろうか?あんな高さから落ちて頭とか打ってなきゃいいんだけど、と麗夜は思う。


 そうやって思うことしかできないのだ。


 意識しても体の感覚は一向に掴めず何も出来ないが、たとえ不快な感覚の所為で眠ろうとしても眠ることができない。もちろん麗夜は異変の解決を放棄して眠るなんてことはしないが、この状況に足踏みしてしまっている事実も確かだ。


「..........いや.....」


 そんな絶望的ではないが得体の知れない環境の中で遠くからか近くからか、距離が掴めない響き方で聞き覚えのある声が麗夜の心に届く。


「麗夜!」


「はっ!諏訪子!」


 諏訪子の声がどこからか響き、自分が半微睡み状態だったことに麗夜は気付いた。


「諏訪子、幽々子さんに仮死状態にされたんじゃないのか?いや、よく考えたらあの場所に諏訪子はいなかったな」


「私は遅れて来たからね.....麗夜、落ち着いて聞いて。あなたはどういう訳か大きくなり続ける巨大な肉みたいな化け物の中にいるわ。私はその真上で麗夜を見つけて麗夜の魂に語りかけているんだけど.....」


 ぐわんぐわんと長く響く声を届かせていた諏訪子はどういう訳かその先を言いずらそうに口ごもる。


「だけど?」


「どうやら助けられそうにないわ。これにむかって何かしらの力を使うとそのエネルギーが吸いとられるのウミみたいに。自力ででられる.....?」


 聞きずらそうに諏訪子は質問をする声をすぼめていく。諏訪子なら気付いているのだろう、脱出が出来るのならばもうとっくにやっていることに。


「いけるって言いたいけど...無理だな多分」


「そっか。なら.....どう、しようか。え!?ちょっと待って!その中には人が入ってるの!!」


「どうした!諏訪子!」


 多分血相を変えて叫んでいるのであろう諏訪子に驚いた麗夜は慌てて諏訪子を呼ぶ。そして一瞬返答がなかったことに嫌な予感を覚えた。


「麗夜、そこ!燃えてる!」


 、 、 、「うえああぁぁぁぁあ!」死んでたまるか!考えろ考えろ考えろ!今までの修行を思い出せ!(心なしか暑苦しくなってきている)氷を作る魔法(メイクアイス)を使うか?いや、使ってもこの中じゃあすぐに魔力が無くなる。ならどうする?「あ!」


 死に瀕してめちゃくちゃになった思考でも一筋の突破点を見つける。それは――――――


『麗夜、この世界には相手から魔力を奪う方法がいくつかあるんだぜ!』


『いえ、麗夜には既に常人の10倍は魔力がある、それを覚えたって効果は薄いわ。それに今の麗夜には時間が無い。さあ無駄話してないで次の修行方に取り掛かるわよ』


 それは師匠達の言葉だった。そして麗夜は気付く、魔法を使っても魔力がすぐに切れるなら魔力を奪いながら魔法を使い続ければいい。後はその肝心な魔力を奪う方法だが。


「諏訪子!魔力を奪う方法って知ってるか!」


「ごめん、今の麗夜にできるようなものは...」


 なら、そうか万策尽きたってやつか。と麗夜は冷静に他人事のように整理する。そしてこの肉の棺桶のなかに身を埋める覚悟を固める。


 ん?肉?


「いや、待てあったぞ魔力を奪う方法!!もうこれしかない!」


―――――――――――――――――――――――――――


「あああ!」 ザァン


「妹紅!どうしてこんなことを」


 燃え盛る肉塊を斬りつける妖夢を見ながらそれが時間の無駄だと分かっていつつも諏訪子は人が入っている肉塊を容赦なく燃やした妹紅に歯を食いしばり抗議する。


「あれを止めるにはこうするしかないだろ。これ以上あれを大きくすれば後ろで寝っ転がってるやつらも食われる。そうなれば本当に終わりだ」


 が、気にしている場合ではないと正論をぶつけられた。


「だからって、」


     ズドドドドドドド


 肉塊の中から突如として衝撃音が連続で響く。それは肉塊の中をぐるぐると回った後ある地点で止まる。それが何者か、諏訪子は反応を拾った時信じられない気分でいた。それはそうだろう、だってそれは...


「麗夜!」


 先程までは手段がないと嘆いていた麗夜だったのだから。


「おォォォォりゃあ!」


 麗夜は氷を作る魔法(メイクアイス)を使い氷のシャベルを作り足につけ肉塊を掘り進み、永琳、輝夜、霊夢を両脇に抱え、肉塊から飛び出してきた。


「うわぁー!凄いですねー!」


ドスン!


「あー」


 その直後大声を上げて麗夜への感嘆を示しつつ大空からウミが降ってきた。ウミはその落ちる勢いのまま肉塊に着地し、燃えながら肉塊に取り込まれていく。


「ああもう!!何が何だか何もかも全部意味不明です!分かりません!ちゃんと全部説明してください!!!!!」


 我慢ならなくなった妖夢が怒りの矛先を燃える肉塊に向けて、一撃を叩き込む。邪念に反してとても綺麗な軌跡を描いたその斬撃は、だが受け止める相手を見つけられずに空ぶった。妖夢はずっこける。


「もー」


 しゅんとした顔で元々肉塊があった場所に目を向けると、半分程小さくなった肉塊がそこにいた。小さくなった影響か、それを包んでいた炎は消えている。


「あれもウミの能力みたいだな」


 そんな妖夢に脇に人を抱えながら苦笑いを浮かべ麗夜は話かける。


「麗夜さん、あっそういえばあの中からどうやってでてきたんですか?」


「え、今?」


「今しかないです。魔力の問題をどーやって解決したんですか?」


 もはや何もかもが気になった妖夢はヤケクソで手頃な疑問を消化しようとしていた。


「あーあれはな、あんまり言いたくないんだけど、まあ食ったんだよ。あの肉塊ほとんど体が魔力でできてるみたいだったからな」


「はぁ、ようやく合点がいく答えを一つ聞きました。これで迷わず戦えそうです」


 そんな会話をしているなか肉塊はどんどん縮小していき、遂には核である正邪の中に収まった。


 そして、正邪が一言呟く。「終わった」と


「おい!そこのあんた!やったのか?」


 いつの間にか正邪と対面している形になっていた。ウミに妹紅が話かける。


「おかしいです。僕の能力でどうにかできるのはあいつと僕を含めた魔力の半分まで、あんな一気に小さくなるなんて」


「終わった...終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった畜生が!!!あの女ぁ!」「だったらぁ私に力を貸してみないかぁ?全てをひっくり返してやるぞ」


 正邪の体で一人で絶望し、一人で自分に語りかけている。様子がおかしすぎる。


「麗夜、ウミ、あれがエイリアン本体よ。今、私たちに味方する神から連絡が来たわ虫の息になったエイリアンは分裂し、その一部を取り逃したそうよ」


「それが、まさか幻想郷に来るとは、ですね。麗夜さん!永琳さん達を置いて構えてください!」



うわぁ。お話がごちゃっていらっしゃる。

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