第?話 リュウ ウミ
ザーーーーーーーーザーーーーーーーー
雨の中、とある少年が目を覚ました。髪は何日も洗っていないのかボサボサでよく見ればノミが髪の毛の根本で潜んでいる。服装はとても汚れて色褪せた白いTシャツにジーパン、靴は履いていない。
海外でも稀にしか見ないであろう、絵に描いたようなストリートチルドレンが仰向けになっていた。
酩酊していた意識が現実に引上げられた原因は雨の音か、それに濡れる感覚か、ネズミが足を齧る痛みか。とにかく少年は路地裏のゴミ溜めの中で目が覚めた。
最後の記憶は空腹に耐えきれずコンビニのおにぎりに一文無しで手を出したところである。どうやら気が立っていた店員か店長かに痛めつけられたようだ。
流石は治安最悪の町。日本も末だなー、と軽口を叩こうと思ったが口からは自分でも聞き取れないぼそぼそ声が出てくるのみ。
とりあえず今日の寝床を探そうと体の痛む部分を抑えながらゆっくりと立ち上がる。別に寝床はここでもいいのだが雨とネズミが邪魔だ、せめてトタンでも木の板でもいいから屋根のある場所で寝たかった。
そのまま、立ち上がり終えて路地裏を出て歩道へと歩みを進めたところで左足を滑らせる。
ダッダダ!
何度かたたらを踏んで踏みとどまる。
ブァアアアアアア! キキィーーーーーー!
だがそこは道路の中、クラクションと急ブレーキの音の近さで気がついた。そして同時に車が彼を轢くまで止まれないであろうことも。少年は目を瞑った。
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おかしい、いつまで経っても来る筈の衝撃が来ない。何故?
疑問に思い、目を開けて車を確認してみる。,,,,,,車は止まっていた。ホッと胸を撫で下ろしかけたが、違和感が残る。その違和感の正体はすぐに見つかった。車の運転手だ、三十代くらいのサラリーマン風、ついでに深いくまが見える運転手は目と口を大きく開けた驚きの表情まま、轢きかけた子供を助けにも行かずただ固まっていた。
この人だけがおかしいのか、と辺りを見渡して見れば轢かれそうな少年をみて声を上げようとしている状態で止まったオジサンや足を踏み出す前足が浮いている状態で止まっている女性、極めつけは地面に降り注ぐ筈の雨すらも空中で止まっていた。
ただただ困惑していると止まった雨の変わりに空から声が降り注いでくる。
「君、どうせ死んでしまうのならその命、私に預けてみない?」
どこぞの作品から引き抜いてきたかのようなテンプレゼリフを少年に浴びせながら、空から女性がゆっくり降りて来た。金髪で紫のドレス姿、チャームポイントは赤い大きなリボンが付いた帽子。少年の目からみても美しいと思える女性だった。
「あ、...げほっ!ゴホッ!ゴホッ!」
脇を殴られたか、蹴られたか、肺が傷つき喋ろうとするたびに痛むが、どうしても聞きたい、『あなたは?』と。
「無理をしないで、ゆっくりでいいわ。あなたの名前は何と言うのかしら?」
「ごほっ!,,,ぼ、ぼぐの名前ッは、ろうだ」
「ふむロウタ、ね。,,,ロウタもう一度聞くわね。私に命を預けてみないかしら?」
こくりと、うなずく。どうせこの状況じゃ拒否権は無いような物だ。
「話が早くて助かるわ。早速だけどあなたはこれからとある目的のために幻想郷と呼ばれる世界で暮らして貰うわ。あなたの役目は然るべき時に言わせてもらうわね」
またこくりと、うなずく。すると視点が少しづつ上へ上がる。ロウタと女性は浮いていた。それと同時に時間もゆっくりと進む。
ガァアアアアン キキィー!
少しして衝突音が下から響く。見てみると驚くべきものがそこにはあった。
それは轢かれたロウタだった、両足が潰れていた。それを見て慌てて少年は足に手をやるが、感触がない。それどころか手も無いことに気付く。ロウタには今、体がなかった。
『幽体離脱みたいな感じですか?』
無意識に思念を飛ばし、少年は聞いた。
「うーん少し違うわね。簡単に言えば今さっき轢かれたあなたの魂のコピーが今のあなたよ」
『じゃああれはどうなるんです?』
言いながらロウタは自分の体、否、もう一人の自分というべきそれに指を指す。
「十中八九死ぬでしょうね。生き残ったら大したものよ。まあその場合あなたは二人になるけれど、問題ないわよ。あなたは別の世界で産まれ変わりを果たすのだから」
『でも、あいつは助けないんですか?』
「ええ、そこから先はあの子の運命、私が関わるべきことではないわ。さてと!」パチン!
ゾッとしたことを女性が言い終え、手を叩く。すると何やら空間に割目がでてきた。
「あなたの体は用意しておいたわ。このスキマを潜り抜ければあなたは晴れて幻想郷の住人よ」
『ちょっと待って下さい!あなたの名前は?』
「私は八雲 紫。幻想郷の賢者よ」
そう紫が言葉を発した後、スキマがロウタを包み視界が一瞬で「雨降る夜の都会」から一転し、「木漏れ日降る朝の森」に変わった。
ここが幻想郷なのだろうか、ロウタは自分に体が戻っていることを確認してとりあえず立っていた方向から前に進んだ。
しばらく歩いていると右から「おー人間!」と言いながら、黒い球体が飛んでくる。
「え?なにこれ」
「お前こそだれだー?食べてもいい人間かー?」
黒い球が弾けて、黒い服にネクタイ、金髪に模様が入った赤いリボンをつけた。ロウタと同じくらいの年齢に見える少女が話しかけて来た。
「あー、たぶん、子供ですから食べてもおいしくないですよ、量も少ないですし」
「そうなのかー」
テキトーなロウタの命乞いを少女は本当に聞き入れたのかとたんに興味を無くしたようにそっぽを向く。だがそれではロウタにとって困るのだ。今は人の集まる場所を聞かねばならない、ロウタはこの幻想郷の右も左も分からないのだから。
「待って下さい聞きたいことがありまして、っとすみません、挨拶が遅れました。初めましてぼくの名前は,,,,,,ぼくの、名前は?あれ?」
「?...自分の名前を思い出せないのかー」
「そうですね」
さっき幽体離脱じみたことをしたからだろうか。前の、紫さんに会う前の自分の記憶をうしなっている。
「じゃあ私が名付けてやろう。,,,『リュウ』だ。カッコいいから。ちなみに私はルーミアだぞ」
いきなり名付けられたが悪くない、これからはリュウでいこう。
「ルーミアですね。じゃあルーミア、人が集まるところを知ってますか?」
「人里かー?知ってるぞ、一緒に行くか?」
「はいお願いです」
ウゥゥゥン
突然目の前に先程みた空間の割目、スキマが現れた。
「おっとゴメンなさい。私、あなたの記憶を消しておいて、あなたに名を名付けることを忘れるところだったわ」
「え?紫さん?」
「おー?」
「あなたの名前は『ウミ』よ漢字は無いわ。それじゃあね。わたしは幻想郷にいちゃマズいから」
ウゥゥゥン
そうして衝撃的な真実を押し付けて、ウミの名前を告げ、嵐の様に過ぎ去っていった。
「むー、リュウの名前はリュウだ!私が先につけたんだぞー」
「あー、だったらリュウが上の名前でウミが下の名前でどうです?」
「それならいい」
納得してくれたならいいや、とかんがえながら頭の後ろに両手を添えてウミはルーミアの案内の下、人里へと歩き出した。
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10年後
「これが『ウミ』?ゴブリンに潰されていたようだけれど?地球の紫さん。これが本当に二つの問題を一気に解決してくれる鍵になってくれるのかしら?」
「ええ、永琳。外の世界、地球から来たあの力を使えばあるいは」
「そのために私の力が必要というわけね」
真っ黒な空間に目だらけの怪しげな場所で怪しげな二人が密談を交わしている。
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「さてと、永琳さんも無茶言うよな、ほぼ無限の再生力に加えて「ゲーム」の力もあるのに加えて吸血鬼を仲間にして力を貰えなんて、...はぁルーミアか10年ぶりだな」
ザッザッザッ
永琳の計画を知ったウミはその計画を手伝うため兼、ルーミアに会うために10年間危なくて入れない場所だった暗黒の森を歩いている。
「よしっと、ここら辺でいいか。すぅー、ルーーミア!!!居ないんですかーー!!」
「そんな大声出さなくても、ここにいるぞリュウ」
「おお、ルーミア、そんなところにいましたか、すっごい久しぶりです。よく僕がわかりましたね。早速なんですが頭を見せてもらってもいいですか?」
露骨な封印狙いの質問にルーミアは快く頭をウミに近付けてくれた。友達を騙したようで少々気が引ける。
「そんなに久しぶりかなぁ、これでいいのかー?」
「うん、ありがとうございます。これで」
「ん?う、うぅう。」
永琳さんからもらった封印を無効化するお札をリボンに貼る。するとリボンはほどけ、ルーミアの体が少しづつ大きくなる。そして、翼を生やしたころ吸血鬼ルーミアは覚醒した。
「ふっはっはっは!まさかお前が封印を解くとはリュウ!」
「ああ、小さい時の記憶残ってるんですね。ルーミア、早速要件なんですけど僕と契約してくれませんか?」
「え、あ、うん。なんかこう動じないねリュウは。ていうか契約って意味わかってるの?私と契約する条件は最期に私に食べられて死ぬことだよ」
「ええ、事が終われば必ず魂まで食べられにいきますよ」
ウミは事前にルーミアとの契約の条件を永琳から聞き、覚悟の上でここにやって来た。
「じゃあ決まりね。あと、私と契約するからには私を愛して貰うけどそれでいい?それでもっと肉が美味しくなるんだ!」
「大丈夫。一応.....好き、ではありますから」
「いいね。いい告白だね。それじゃあ君が私と契約した目的を話してもらうよ」
「とにかく幻想郷に異変を起こしましょうか、前に起きた吸血鬼異変のときのように暴れてください。ですが、死傷者は出さないでくださいね」
「はぁ?無茶をいうなぁ、まぁ了解。ところで...




