第九話 真実 ①
迷いの竹林、そのより影が濃い林の中、戦うための道具も無くして己の傷を癒すこともできず、ただじっと息を潜めている者がいた。『それ』には目的があった。一週間何度も朦朧としそうになる意識を怒りで奮い起こし、目の前の結界が壊れるのを待ち続けるのはその目的があったからだ。
そしてついにその時がきた。壊れることを待ち続けていた結界は弾けた。これを合図に『それ』は一心不乱に走る。受けた傷のせいで飛ぶこともままならないからだ。
「,,,,,,,,,,,,戻ってくるのよ,,,,,,けて欲しいの」
「.....責任重大だな.....けど真実.....良かった」
ドタバタと屋敷の中に入り、ふらつきながらも途切れ途切れにに聞こえる声のする方へ向かう。
バタァン!!!
声のする部屋の襖に体当たりをして入る。
「ぁぁあああ!」
「正邪!?」
「何故ここに…!」
向かい合って座り話していたのだろう二人を無視し、目的のもの、円柱状の機械に手を伸ばす。即座に反応した永琳は即死級の光弾を『それ』、正邪に向けて指先から飛ばす。
ガギィィイン!
だがそれは防がれた、麗夜がその攻撃を剃らしたのだ。
そうして正邪は目的の円柱に触れる。その瞬間、正邪の体の、魂の奥深くになにかが入りあふれでた。
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「皆!」
地面に墜ちていく仲間達を見て麗夜は嘆く。それもそのはず、今目の前に立ち塞がる敵は死を操る力を持つ幽々子だ。それが意味する所は,,,
「心配しなくても大丈夫よ、仮死状態になるように調整したから」
「ふうぅ,,,,,,なあ、そろそろ説明してくれないか?」
「んん?何を,,,かな?」
始めから、麗夜は疑問に思っていた。この異変には殺意が無い。それだけならいい、それだけだったのなら幻想郷ではよく起こる異変なのだ。だが今回は違う、相手は命を賭けている。人が死ぬ可能性だってあった。つまりはバイプレイヤーズの目的が、理念が、行動が、全く読めない。だが、麗夜は幽々子が現れたことにより、少しだけ彼らの目的が読めた気がしている。
「うまく言えないけど、幽々子さんたちは悪いことをしようとしてるんじゃ無い気がするんだよ」
「ふ、ふ、ふ、いえいえ幻想郷滅亡を企んでますよーはい」
幽々子は不自然に目を逸らし、分かりきった嘘を言う。
「じゃあ何で俺を残したんだ?霊夢さんは何の影響も受けない能力だ、妖夢はそもそも半分幽霊だ、でも俺はどうだ?力はまだ十分じゃない」
「ほ、ほらそこは君にもわからない秘められた力とかでー」
「あー、すいません。良いですか幽々子さん。麗夜さん」
幽々子の見苦しい言い訳に割り込み発言の許可を求めるウミは、二人が注目するのを確認してから言葉を続ける。
「おっしゃる通り、麗夜さん、あなたの言うような目的が僕達にはあります。あなたが今、仮死状態にされていない理由はそれを聞く権利があなたにはあるからです」
「そうですか,,,だけど目的を聞く権利なら俺だけじゃなく皆にある。あんた達の被害を受けた皆に」
「それが通すべき筋ですね。ですが僕達にも込み入った事情があります。どうか納得してください」
「じゃあ、聞かせてください。あんた達の目的ってやつを」
「その前に、、、Creating「不完全な盾」」
ウミは盾を地面にさしてそのまま伸ばし上へ飛ぶための推進力にしながら腰に差した刀を飛んでいる妖夢に向けて振り抜いた。
「うっ!」
ギィィィイン
刀は唾是る。困惑しつつも強張った妖夢の顔を間近で睨みながらウミは叫ぶ。
「話は永遠亭で聞いて下さい!ですが!ここから先は麗夜さん以外は通しません!」
「ウミ!何を、、、!?いやそれよりもう魔術は使えないはず!」
「フフフ、私はプレイヤーだったのです。まあレベル1だけど」
確かにレベル1でも近くにプレイヤーがいればウミは魔術をつかえる。
「麗夜、行きなさい。後で追い付く」
「霊夢さん!ぁあクソ。分かりました」
麗夜は走る。後ろでは金属と金属がぶつかる音や爆発音、そして散らばった弾幕が麗夜の方向にまで流れてくるが気にせず走り続ける。
そうして走り続けていると正面に光の幕のような結界が見えてくるが、問題なく通過した。すると結界の外では見れなかった永遠亭と思われる建物が見えるようになる。建物の前には女性が佇んでいた。
「あなたが、、、」
「初めまして。知っているでしょうけど私は八意永琳。待っていたわ、早速だけど話をしましょう」
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「幽々子様!なぜですか!今回の異変はいつもと違います!世の中には掛けても許せる迷惑と許せない迷惑があるんですよ!せめてこうした理由をちゃんと教えて下さい!」
「おいおい、こっちは無視ですか」
ウミの雑な太刀筋を軽くいなしながら妖夢は幽々子に問いかける。
「ごめんなさい。今はちょっといそがしく,,,てっ!」
言いながら幽々子は霊夢に向けて札を投げる。霊夢はその札が当たると直感し飛んでくる札を避ける。札は避けた先で爆発した。
「多分それ私に当たるわよね。どういうカラクリ?」
「霊夢の髪とかで作った呪具よ。あなたの体の一部なら攻撃は通るはずよね。ふう、神社からコツコツ集めるのには苦労したわ」
「へぇ、、、キッモ」
そこからの攻防はほぼ互角だった。両者、攻撃がかすりはすれども決定打は無くそのまま弾幕を打ち合い続けている。そんな状態で勝つのは当然、持久力に長けた方だ。数に限りがある札を使っている幽々子はいずれ負ける。そしてその時が来る。
ドォォン
「これで最後ね。我ながらよく持った方じゃないかしら」
バギ!!
最後は霊夢のお祓い棒によって幽々子は頭を殴られ撃沈した。
「あー幽々子さん、最後に諦めるからー。もうちょっと粘って欲しかったなぁ」
「あなたも諦めて下さい」
妖夢は二度三度四度とウミを斬るが斬るたびに再生し切りがない。妖夢はそれでもと攻撃の手を止めない。
「霊夢さん!先に行って下さい!私はこの人を、ってもう行ってる、、、」
「あー、ドンマイです」
「うるさいです!」
ズシャ
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一方霊夢は結界を見つけていた。霊夢には通り抜けることの出来ないもののようだ。
「結界ね、でもこんなものは」
夢符「二重結界」
霊符「陰陽印」
夢符「封魔陣」
霊符「夢想封印」
バァァァアン
霊夢の持つあらゆるスペルカードを放ち結界は破壊された。
「おっ、見えた見えた。永遠亭ね。ん?あれは?正邪?」
その際に永遠亭に走りながら入り込む正邪を発見し、霊夢はいぶかしむ。何故ここに正邪が?
「あいつもなんとかしなきゃね。」
霊夢がそう言った瞬間である。突如永遠亭からピンク色の肉塊が増殖しあふれでる。その増殖スピードは霊夢の反応できない速度であり、一瞬で上空にいる霊夢を取り込んだ。
「ぶっ!」