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音響監督の覚書9(コンプレッサー)

今までは基本的に役者・ナレーター側への事を書いてましたけれど、最近「コンプレッサー」についての記事を目にするので、エンジニアの技術に関しても音響監督としての守備範囲かな?ってことで、書いてみようかと思います。

音響と言う仕事をしてて、イコライザーとコンプレッサー(ゲート・エキスパンダーやリミッターを含める)に関しては誰でも語れるくらいにはそれぞれの考えがあるんです(言い切った!)


音楽に限らず、放送でもイベントでもこれらを使わないと言う事がありません。


音楽のミックスはラジオ番組などのイベントでのライブだとか、放送でするためだけ程度の軽い物のミックスダウンをする事もありますが、僕が音響として仕事をする場合は、放送ミキサーかドラマ録音 かPA(会場音響)となります。

具体例として出すのが音楽では無いので、予めご了承ください。


イコライザー(音質調整)に関しては、今回は語らないで置きます。

これに関しては趣味嗜好が大きく影響すると思いますし、聴いて貰わなきゃピンと来ないことになると思うので。


そして、こう言う機能があるから、マイク前の役者やナレーターは安心して声を出せ♪と受け取って貰っても良いかな?と思います♪


……と、本題に入りましょう。


まず、コンプレッサーとは?


コンプレッサーを直訳すれば『圧縮するもの』となります。

エアーコンプレッサーも「コンプ」って呼んだりするので、ミキサーが「え? 料理? 音?」って確認するようなくらい同音異物もありますね(苦笑)


声に限らず『音』は波形データとなるのは、ご存知ですよね?

その波形の振幅を圧縮する機構なので『コンプレッサー』と言うのです。


設定地としては4つあります。

『アタック』『リリース』『スレッショルド』『レシオ』


アタックは、動作速度。『感度』と表現をしても良いかもしれません。

時間で設定しますが、早ければ強く動作します。

早く設定すると、コンプレッサーの動作感が解かり易いくらい強く掛かります。

遅く設定すると充分な機能をしない場合もあります。

音がパンッ!と切れ味良く(?)発生する音に対して時間を短くし過ぎると、その音に強く反応してしまい、そのままコンプレッサーが動作したまま次の音のアタック感が無くなると言う事もあるので、早ければ良いと言う物ではありません。

後述するレシオを小さくしている場合は早くても良いでしょうし、強い場合は比較的ゆっくり目に設定する必要があります。


リリースは、動作開放速度。『維持時間』と表現しても良いかもしれませんね。

コンプレッサーの動作域から外れた時に、すぐに元に戻すのか、ゆっくり戻すのかの設定になります。

この設定が短すぎると動作のメリハリが付くと言うか、動作感が解かり易過ぎて気持ち悪くなります(笑)

ただ、音楽でコンプレッサーを使う時に、頭の音を抑えて残響感のあるふわっとしたい音にする場合には、短めにセットすることが有効です。

けどまぁ、喋りに関しては比較的自然に戻る時間を確保するのが一般的です。


スレッショルドが、動作開始点。

ピークを0dBとした場合に、何dBで圧縮を動作させるのかを設定します。

録音におけるダイナミクスは例えば音楽CDですと-96dBまでの深さがあります。

0dB以上と言うのが俗に言う『割れる(割れている)』と言うピーク越えになります。

ピークを超えさせないために、どのあたりから圧縮を始めるのかと言う設定になります。


レシオが、圧縮率となります。

言葉のままです。

実例で言えば……

スレッショルドが-12dBにセットされていて、0dBの信号入力があったとします。

レシオが1:2の場合、その信号は-12dBを超えた信号が半分になるので、-dBの音圧となります。

……なぜ12dBにしたのか……

これは物理的な数字のマジックと言うか、そう言うのがありまして……

0dBを基準にすると、物理的な比率(信号感度の数値がそうなのですが)-6dBで概ね1/2、-12dBで概ね1/4になるのです。

これが-10dBから動作して、レシオが1:2だと信号の数値は-4bBくらいとなり、見た目の数値と物理的な数値が一致しないんです。

……紛らわしいんですが、聴感上だとこのデシベルの方が解かり易いんですよね。

理屈がきちんとあるので、慣れの問題でもあるのですが……

ただ、パソコン上で処理する場合にこれを理解してないと数値に惑わされます。


エンジニアは感覚だけでは出来ませんのです……



では、実際にコンプレッサーをどう使うかとなります。


まず、ドラマの収録ですが……ほぼ使いません(笑)

と言うのも後で編集時にコンプレッサーなどを掛ける事が出来るので、録音時点で強くかける必要が無いのです。


そもそもマイクの感度も叫んだときに歪まない様に抑えて、抑えた分を稼ぐためにうっすらとコンプレッサーを掛けて、ブーストをしたりします。

レシオも1:1.2とか、うっすらですけどね。

ビバ、マルチトラック!!!


しかし、放送の場合はしっかり決め無ければなりません。


コンプレッサーを丁寧に設定すると、ほとんどフェーダーを触らなくても適度な音圧を維持出来ます。


コンプレッサーを掛けるチャンスは、ミキサー卓によってはマイクの直後にあるんですけど……これが面倒臭い。難しい。


理想で言えばナレーションは2か所でコンプを掛けたいです。


まず、マイクごとに1つ。

ポストフェーダーで、うっすらとダイナミクスを圧縮する為に全体にかけたいです。

こちらはアタックも短く(柏手の音より遅いくらい)、リリースも短めで。

なんでダイナミクスを圧縮したいかと言う理由は後ほど……


そして、それらのマイクをミックスしたマイクマスターにガツンとかけたいです。

これは基本的に叫んだり笑ったりした時に耳が痛くならない様にです。

スレッショルドも普通に喋ってる時には動作しない程度にして、声が大きくなった時に1:4や1:6くらい強くかけたいです。

アタックタイムは人間がフェーダーで調整したかな?くらいの速度が聞いていて気持ち悪い感じにならずに済みます。

リリースも少しゆったり気味にします。


さらにマスターフェーダーにコンプレッサーを入れる事が出来る場合は、VU計でレッドゾーンにぶち込んだ時に押さえる保険的な感じで入れたいです。

その場合はアタックもリリースもかなりゆったりにします。

マスターの場合音楽の音ソースもあるので、ゆっくりにしないと音がフワフワしてしまうんですよね。



コンプレッサーを強くかけると、音楽CDの板海苔波形問題の時に言われたことですが、ダイナミクスが無くなり音の奥域が狭くなり迫力が無くなると言う効果が置きます。

じゃあ、なぜそのコンプレッサーを放送の時には積極的に使うのか。

それは音楽と違ってトークを聞く為の者であり、そこに迫力は不要なのです。

そして、マイク単体では強くかけずにマイクマスターでがっつりかけたい理由は、別にあります。

誰かが叫んだ瞬間に、そのマイクのコンプが動作します。

その時にガツンと掛かるとそのマイク『だけ』音が小さくなりますが、他のマイクは連動してないのでそのままになってしまいます。

すると、その人の声が他のマイクで拾ってしまい、結果的にその人がまるでマイクから離れたかのような音になってしまうんです。

音のダイナミクス以上に奥行きが凄く出てしまう。

しかも、本人は動いていないのに。


それが気持ち悪いのと声の輪郭もぼけますから、トークを聞かせたいのに良い事が無いんです。

なので叫んだりしてしまった場合の強いコンプレッサーは全マイクに対して作動するようにマイクマスターにかけたいんです。



そんなわけで、音響監督の仕事では無くラジオディレクター、いえ、ラジオの音響ミキサーとしての矜持をブン投げるような記事になってしまいましたが、このようにして出演者の声を適度にリスナーの耳に届ける為にコンプレッサーをこう言う風に使っているんですよ、と言うお話でした。


先述の通り、奥行きなど立体感に影響の出るエフェクターだからこそ、気を付けるべきものであるし、こう言う機構があるからこそ役者は安心して大きな声を出して下さい。

あなたの声を拾い、有効的に使う事は僕らの仕事なので!

小説に比べてブログ感覚で書いているので、遂行もせずに一気に書いているので、誤字とかがあったら教えて下さいね♪

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