音響監督の覚書4(ピッチ(音の高低)に頼らない演じ分け)
言うのは簡単ですけど、やるためには引き出しとしての知識が必要なんですよね。
今回のテーマ『ピッチを変えずに演じ分け』ってどれくらい行けるのでしょう?
演じ分けで一番分かりやすいのはピッチを変えてしまう事ですよね。
音の高低で差別化するのは、明確ですし。
ただ、落語なんかを見てるとピッチはそこまで差をつけなくても演じ分けが成立している。
もちろん、ビジュアル面で右向き左向きで表現していると言うのもありますが、音だけで聴いててもきちんと会話してるように聞こえるのだから、その点は作用として大きいわけじゃないんでしょう。
男性の声のような女性もいれば、逆も然り。
そうなると、音以外のキャラクター要素って実に多彩で、それらを駆使出来てこそ、声優なのかな?
……なーんて、よく話題に上がる『声を変える問題』に対しての、自分の中でのそもそもの声の演技論だったりしました。
と言うことで、トーンを変えずに演じ分けって、実際にはどう出来るんだ?と言うのをまとめてみました。
・喉の絞り
山寺さんがテレビ番組でやって見せてくれていましたが、喉を広げたり絞ったり、響かせる部分を工夫することで、体型の違いとか人外の声を出したりされていましたね。
山寺さんは喉の中の密度と言う表現をなさっていたと思いますが、当然ながら気圧を変えるにはヘリウムガスを吸うような物理的なことをしないのであれば、肉体的には喉の奥を広げたり閉じたりと言うことになります。
まぁ、そんな身体の仕組みを考えなくても、「太った声」って言ってほとんどの人がやる『デブ声』の時は広げてますでしょうし、『ちびっこい声』でやるときの『チビ声』は喉を絞ってるでしょう。
・テンポや間
人にはそれぞれ喋る事を含めた生きているテンポが違っています。
アニメなど画がFIXしていると使えないかもしれませんが、芝居としてはかなり大きな要素ですよね。
ドラマCDなどがメインの僕は、ちょいちょいテンポを指摘しますけど♪
例えば、せわしなくまくしたてれば『焦っている』とか、それが標準だと「せっかちな人」って見えます。
逆にテンポがのんびりしてれば「おおらかな人」って印象になったり、『眠そう』と言う状況っぽくなると思います。いや、もっと自由度在りますけど。
全員が全員同じテンポなわけがありません。
テンポの極端に違うキャラがマッチアップしていると、ちぐはぐな感じがコミカルに見えたりしますよね。
・強さ
単純に声がデカいひとと小さい人ですよね。
これも個性です。
ただ、音量の問題じゃなくて、喋り型的な意味ですけどね。
普段声が大きい人が声をひそめる時、声が小さい人と同じ喋り……では無いじゃないですか。
それです!
……伝わるかな?
覇気と言い換えてもいいかもしれません。
・口の開け方
強さと被る部分がありますが、ハキハキ喋るのとぼそぼそ喋るのではやはり違いますよね。
なお、日本の本州に限った場合、北に行くほど口は開かないように、西・南に行くほどハキハキと喋る傾向にあるそうです。
確かに東京より関西の人の方が口をしっかり開けて喋っている感じがしますよね。
そして、関西や中国地方の言葉って、強く感じますし、族に言うヤクザの口調として使われる理由もそこにあると思います。
・アクセント
標準アクセントからずれれば、つまりは訛りですよね。
訛らない程度でも、喋り出しに勢いがあったり、逆に尻あがりにテンションが上がったり、そう言うので『個性』を味付けるつことも出来ます。
・ヨレ
アクセントの延長ですけれど、音を大きくヨレさせることでクネクネした雰囲気などを出すことが出来ます。
まぁ、オカマっぽい口調でって言えば大体の人が音でシナを作りますよね。
それも上手い下手と言うか使えこなせない人がいるので、自分の演技が固まってきたのであればこう言う遊びもしっかり鍛錬して欲しい物です。
他にもあるでしょうが、パッと思い付く範囲で音の高さ以外のキャラクターの声を作る要素を挙げてみました。
これだけの要素があるんです。
同じ声でも違う人と思わせることが出来そうな気がしますよね!
……ま、そんな単純ではないのですけど(^^;
これが出来ないと、「なにをやってもその人になる」って言われてしまうんだと思います。