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音響監督の覚書17(ボイスコミック・モーションコミックの難しさ)

YouTubeでのボイスコミックやモーションコミックを見ていて、芝居が酷いなって感じたんです。

そもそも、ノウハウとまでは言わないけれど意識するべきポイントがありますが、それが出来てないんですよ。

今回はそんなことを書こうかと思います。

14話の『音響監督の覚書14(ナレーターと役者の違い)』のあとがきで「舞台と映画とTVドラマとアニメとオーディオドラマの違いも書こうかと思いますと言っていましたが……それは追々書くことにしまして、今回は「ボイスコミック・モーションコミック」について書こうと思います。


YouTubeでボイスコミックが着実に増えてきて、角川さんなどは公式でボイスコミックを出したりしていますよね。

そんな流れの中で、公式のはずなのにあまりに芝居が雑なコンテンツがありまして、内心穏やかじゃありません。


どう言う意識で芝居をするべきかというポイントを今回は書きたいと思います。


まず、芝居をする前に、漫画を読むときに無意識にやっているであろうことを確認しましょう。


漫画は二次元で描かれた『静止画』がコマで区切られ(見開きとかページブチ抜きもありますけど)意図された『カット』で表現されています。

逆説的に表現するなら、映画やドラマの要所な一コマを抜き出して、セリフを吹き出しで書き起こしているんです。


それを読者としては、コマの間の『動き』を無意識的に『脳内再生』をして、映画やドラマのように楽しんでいるんです。

少なくとも自分はそうです。

なんなら、小説すら映像で見えてしまいますし、脳内で上映しています。


それって、前後のコマがあってこそ『動きの脳内再現』が出来るんですよね。

つまり、無意識に『補完』をしながら読んでいるんです。


ちょっと脱線しますが……「漫画は読むのが難しい」って言われて、納得出来ますか?


マンガを読める人って、上記の通り勝手にイメージ補完をしながら読んでいますが、コマによる視線誘導などに対応出来てこそなんです。

特に日本の漫画は海外の漫画以上にコマ割りが自在で、それに対応出来るだけの『経験』を求められます。

なので、小説の方がよほど読む技術が低いと言えるんです。


なんなら業界的に言えば、絵コンテを読むより漫画を読む方が難しいんです。

絵コンテはなんならどう動くかの説明が書かれてますしね(笑)


いつの間にか読めるようになっている『漫画』ですけど、実は無意識に色々なスキルを身に着けた上で読んでいるんです。


話を戻しまして、そんなコミックに声や音響を付けたものが「ボイスコミック」、さらに動きを補完して動かしたのが「モーションコミック」と言うジャンルになります。


芝居的に意識しなければいけない部分は一緒ですので、より漫画の状態になる「ボイスコミック」について書いて行こうと思います。



ボイスコミックでの芝居について気を付けなければいけないのは「漫画の見たままではなく、漫画を読むときの脳内映像を再現する」なんです。

漫画には表情こそ出ていますが、動きがあるわけではありません。

いや、実際には情報として書き込みはされているんですけどね。

距離感もしっかりと表現されているわけではありません。アニメもそうですけど。


表情こそ漫画に描かれていますが、それ以外はきちんと情報を整理して、無意識に行っている脳内補完を表現に落とし込む必要があります。


・話しかけている相手は誰なのか。

・その相手との距離は?

・その場の環境は?

・どういう動きの中なのか。

・内心は?


最低限ここまで読まないと、芝居は出来ません。

実際には、さらにそこに至るまでの経緯も把握する必要があります。

ボイスコミックの場合映像は静止画のままですけど、音と芝居は「その漫画をユーザーが目にして、勝手に脳内再生されているであろう映像」をあてる必要があるんです。


そこで演出家・音響監督の仕事が発生します。

脳内補完は人それぞれ微妙に違っています。

なんなら漫画が読めない人ならその脳内補完がされていない状態です。


つまり各々に見えている映像にズレが生じていることになります。

そのズレが芝居のズレにも繋がるので、それを整理して共通イメージを整えるのが、演出・音監の仕事なのです。

これがズレていなければ、特に口を出すわけでもなく収録を進行すれば良いでしょう。

芝居を聞いてイメージのズレを感じたらそれを指摘して修正させる。それが指示の一つです。


役者はどうなのか。

収録前にガヤガヤしている時、雑談もあるでしょうがイメージの自信が無い人は周りに確認したりしています。

そこで「きっとこうで良いと思うんだけど……」なんて言いながらする合わせしている姿もよく見ます。

収録前はこちらも監督とか作家とかとイメージのすり合わせをしているんですけど、マイクが生きている場合はそんな声も実は聴いていたりします。


収録に入る時に急に「このシーンだけど……」って注釈を入れるときは、イメージが共通になりにくそうな部分の確認だったりするほか、中で話しているイメージがズレていると気付いたときに指摘しているんです。


ボイスコミックの収録方法として、漫画のまま読んでいくケースもありますが、多くは台本化されていて、さらにスタジオに漫画が置いてあると思います(自分は出来るだけそのようにスタンバイしています)

是非収録前に他の役者だったり演出家や監督と「イメージの確認、すりあわせ」を行いましょう。

描かれていない補完すべきポイントが既出の通りかなり多く、その補完は人によってズレることがあるんですから。



実際僕が目にした「良くない作品」は、一コマ一コマを「読み上げていた」んです。

動きがあるわけじゃない、そのコマの表情をガイドにしてセリフを読み上げただけ。

前後の動きが乏しく、効果音も順番に合わせて目立つのが入っているだけ。


確かに漫画のコマに対しての音声情報としては間違っているわけではありません。

しかし、補完されるべきイメージからは乖離していまいます。

ただただ「漫画に描かれたイラスト」と向き合った収録をしてしまったのでしょう。

その結果動きの乏しく、声の表情も平坦で、すべてにおいて立体感の無い「コンテンツ」に仕上がってしまったのです。


ボイスコミックは動画的な負担が非常に小さく、コストを抑えることが出来ます。

けれど、音声に関してはアニメとほぼ変わらないことをしているんです。

プロデューサーの方々にはそのことをしっかりと胸に刻み、音響制作費を動画と同じ感覚でケチらないで頂きたい。


僕は音響制作費自体の交渉もすることが多いのですが「え?もっと安くならないんですか?」と言われることも少なくありません。

ですが、実際にやっていることで言えば、ボイスコミックもオーディオドラマもアニメーションもほぼ同じことをしているのです。

極端に安くなるはずがありません!

なんなら出演者の報酬はTVアニメよりも高くなることが多いです(ランク制の制限が及ばないので)


……と、最後は愚痴になってしまいましたが、「動いてないのに動いている、ボイスコミックの音響」のお話しでした。

そんなわけで、如何だったでしょうか?

しかし、これらのポイントは演出家がきちんと芝居も演出していれば役者としてはそれほど難しいことでは無いと思うんです。

つまりは……演出家の力量不足が、イマイチなボイスコミックやモーションコミックを作ってしまっていると、僕は思っています。

演出家が演出をしないでどうする?


演出家が仕事をしないのであれば、役者自身が意識をしてくれたら、その作品は少しでも良いものになるんじゃないかな?と思って今回の記事を書きました。

最後は、現場レベルへの愚痴も書いてしまいましたが(苦笑)


……あ、ボイスサンプルについて書くって言ったのに結局書いてませんね!

年内に書きます(爆)

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