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音響監督の覚書13(言葉の変化『あだな』)

演出すると言うのは、ただ演技をコントロールすれば良いと言うわけじゃありません。

そんなわけで、訛り同様に時代によって変わる者の一つとして「あだ名の歴史」を紐説いてみましょうか。


ま、そもそものきっかけは……

実はですね、『あだ名』と言うと「仇名」って書いて蔑称だと思っていたんですけど、違うんですか? 『愛称』と別物だと思ってました。


……と言う事で、調べてみました!

そもそもの言葉の意味から調べて、さらに俗説などをあたりました。


「あだな」と変換して出てくる漢字は『渾名』『綽名』『仇名』『徒名』の4つ。

1文字目に着目すると


【渾】

まず「あだ」とは読まない。本来は「コン」

意味は、水が湧き出る様。にごる。総べる。まとめる。


【綽】

「あだ」と読まない。本来は「シャク」

意味は、ゆるやか。たおやか。


【仇】

意味は、うらみ。つれあい(!)


【徒】

意味は、あるく。何も持たない。仲間。無駄。



「あだな」として元来は『徒名』なのでは?

『徒名』の意味は、下世話な噂話であり、『浮き名』と同じニュアンスだったらしい。

『仇名』も意味は通じるが蔑称としても文字の意味が強いし、呼び名としてなら『徒名』の方が近いと思う。


で、渾名に関しては本来の読みは「こんめい」だと思います。

が、実は『こんめい』としては「諢名」の方が本来の言葉ではないかと思います。

コレも一文字目に着目すると


【諢】

意味は、たわむれ。おどけ。


なので、『諢名<こんめい>』の方が、ラフなニュアンスでの呼び名、つまりニックネームに近い言葉となります。


そして、ここにもう一つの説を引っ張り出します。


『あだ名』が別称の意味を持つようになったのは、『あだ名』と言葉の響きが似ている『字<あざな>』が混同したことによるもの。



江戸時代より前、戦国時代以前は『真名<まな>』と『仮名<かな>・字<あざな>』があり、生活においては仮名で呼び合っていたのです。


例えば、織田信長。

信長は真名であり、普段呼ばれていた仮名は『三郎』なのです。

なので、もし戦国時代にタイムスリップをしてしまったとして、織田信長に出会ったとしても「信長様」なんて呼ぼうものなら、叩き斬られても仕方が無いくらい失礼なのです。

「三郎様」か、その時の官位で呼ばなければなりません。


はーい、このあたりはWEB小説などで戦国時代物とか書いてる人は気をつけましょうね!

……と言いつつ、ドラマなどでも「信長様」と呼ばせることがあります。

理由としては『解りやすいから』。


本格派を謳うなら、初歩的なことであろうとも、一般大衆娯楽として織田信長の登場シーンで「三郎様ー!」って言わせても、お客さんは『誰?』ってなっちゃいますからね。

なので、演出的に言わせている場合もあります。


もし、真名を連呼してるのが無知だったとしても「演出です!」って言い張りましょう(笑)



ちなみに、その文化の基となる中国でもそうです。

かの有名な『諸葛 亮 孔明』。

日本では『諸葛亮』とも『諸葛孔明』とも言われますね。

孔明の場合は、


諸葛が姓(氏)

亮が諱(名・真名)

孔明が字(呼び名)


となります。


なので、「孔明様」と呼ばれるわけです。



……と、字の説明に随分と脱線しましたが、つまり通称と言うニュアンスがあります。


その「あざな」と「あだな」が音が近いために混同されたと言うのです。

で、さらにある意味一番近いニュアンスである「諢名」が「渾名」と変化し、字が当て込まれた。

なので、「あだな」の漢字が渾名となり、ニックネームと言うニュアンスになった。



だからどうした?って話なのですが、言葉の本来の意味を考えるきっかけになればと思います。

なお、これらも俗説や漢字の意味を調べただけで、そもそも感じの意味が後付けになる場合もありますので、絶対ではありません。


しかし、こう言う事も知らないと演出は出来ないわけですね。

例えば真名と仮名が混在してたりしたら、それは言い訳出来ないくらい駄目な事なのです。


知識は大事なのですよ。

と言う事で如何だったでしょうか?

『あだ名』について、コレでご理解頂けただろうか。


時代物って、時代考察が必須なんですよ。

その一旦とも言える「あだ名」改め「字」


補足ですが、真名を知られると呪ったりすることが出来ると言う呪術的な理由だそうで。

そう言う意味で、真名を隠すセキュリティとして字、仮名が存在したんですね。



「あだ名」には、愛称、通称、蔑称など複数の意味を持っているのにも、理由があるんですねぇ。

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