長いトンネル
黒く斑に見える水が溜まっていて、ポツッ、ポツッと水が落ちて四方に弾ける。井戸の底のような、マンホールを開けて見える下水よりも遠く、奥にあるはずなのに光なんてないのに、中心が斑に見えて、水が、視点の上から頭を刺すように通り抜けて降ってくる。
既知外の出来事。慄いた俺を罵るかのように、さっきまでは針が一本落ちるだけだったものが、頭の上から嵐のように降ってきた。
瞬間的に、今見ているのは自分の身体のどこかなのではと感じ、感情に応じて水が溜まるのではないかと推測した。
水がどの程度溜まっているのかは見えない。ただ、永遠にここにある水があふれることはないんだろうなと、直観的に感じ取った。断言できるほどに。
壁が見えない。ゆらゆらと揺れる水面が、感情が変化したときに見えるだけ。水の上に立ってみても水平線が見えるだけ。丸いのかな。
ここの水は、生まれたときから溜まり続けてきているのだろうか。
壁がないのなら、底もないのだろうか。
でも、底があって、一滴、一滴、今度は二滴と、何もない真っ暗な空間を、少しずつ、少しずつ埋めていくのが第六感的なものよって当然のように想像できてしまう。
多分これがいけなかったんだな――。
無意識に限界、壁の存在を意識してしまっていて、そこに達したときが物事の終わりなんだと、不覚にも思ってしまっていた。
元々終わりなんて見えるはずがない。計量カップのようにいくらの量が入るかなんてわからない。
それでも、感情は溜まっていく。
けれども、突然蟻地獄みたいに吸い込まれる。
いや、違うな。吸い込まれるほどの猶予はない。
パッ、と消えるだけ――。
かつて通学路だった道に沿って流れる用水路は、いまだ変わらずその美しさを誇っていた。結合部分で見せる白い気泡は、永遠とその場で繰り返されていた。
そのときに思ってしまった。私の欲しかったものは、ずっとそこにあったのだと。でも手を伸ばさなければ、当然そのリフレインを中断させることはできない。
バシャバシャと音を立てる水の中に手を突っ込んでみる。俺の手の横からは、変わらず白い泡が流れていた。
相手の気持ちを汲み取り続け、悩んだ末にやっと手を伸ばしたところで、必ずしも手に入れることはできないのだと教えられているみたいだった。
自殺をするなら高層ビルの屋上だが、安直な考えの元たどり着いたのは、十年前に通った高校の屋上。屋上と言えば聞こえがいいが、実際、この高校に屋上と呼べるような綺麗なスペースなどない。
登った。
フリークライミングやパルクールというスポーツがあるくらいだから、驚くようなことではないだろう。
登ってみてわかったが、意外と突起があるので登りやすい。玄関の左にある一階の窓に足をかけて、欄間の柵に手を掛ける。その柵の上に乗り、右にある玄関の屋根となっている踊り場に登る。そこからは、また窓に足をかけ、欄間に掛けられた柵に乗る。それを繰り返す。
三階の柵に登ると、屋根が飛び出ていてそれを掻い潜るのは、少々の神経を使った。高層ビルでないとはいえ、三階ともなるとそれなりの高さになる。それに、学校が古いせいか手を伸ばしても軒樋が見つからず、斜めに傾いた屋根の先端を掴んで登らなければならなかった。
竪樋に足を掛けながら、覚悟を決めて登った。よく考えたら、屋上に登って飛び降りるためにここに来たのだ。上る前に落ちたとしても、それも本懐。
屋根は飛び出ているので、どうしても一度足が壁の突起から離れ、空中にぶら下がる状態にならなければ上には登れなかった。その瞬間でさえも楽しみながら上れたのだから、覚悟という特有の感情は面白い。
くぼみが深い赤いトタンの上を、音を立てながら凸の頂点に向かって歩いた。
後ろに転げ落ちないように意識しながら、凸部分に腰を下ろした。
校舎の三階から見た景色と屋根の上から見た景色とでは感じるものが違った。見える光景はそれほど変わらない。
場所、時間で感じるものが違う。多分、次にここに登ることがあったとしても、今と同じことは感じられないだろう。だから、「男に二言はない」という言葉は難しい。
人は生きている以上変わらずにはいられない。身体が成長するように、それに伴って考え方や価値観だって成長、変化するのは当然の産物。そのとき信じていたものが今も信じられるものかどうかはわからない。でも、当然、言動には責任を持たなければならない。
昔信じていたものが今は憎い。だけど、それを咎められたらどうすればいい? 弁解の余地なんてないだろう。誰も信じるはずがない。自分さえも本当なのかわからないのに、他人が干渉できるわけがない。実際問題、嘘をついたことになっているのだし。
山麓に消えていく薄い夕日を眺めながら、感傷に浸ることはない。
思い出す、過去。
安広を病院に連れて行ったあの日。自分のやったことの大きさに気がついたあの日。怒りは不しか生まない。気づくのはいつも事後。
真実が隠されたあの日。大怪我をしても、訴えない安広。
自分の中の何かが悶々とし始めた。それは、一日経っても、一週間経っても、一年経っても当然のように毎朝襲ってきて消えなかった。
目の前の人間と自分の温度の違いに悲観する日々。前はこんなことなかったのに、どんなにいじめられても殴り返しても何も思わなかったのに。世界がモノクロにしか見えなくて、罪悪感だけが自分の身体を満たしていた。
パッと目の前が止まった日。名前も知らない誰かを殺した日。抵抗する女と下半身を露出した男が妙に目障りで、前々から持ち歩くようになっていたフォールディングナイフで男の首を破いた。思った以上に硬くて、カボチャを切っているようだった。女の怖がる目。明らかに動けないでもがいている腕と脚。腹を拳で一突きして、自首した。
弱かった。見苦しかった。受け入れられない器の小ささ。理性を抑制できない儚さ。昔は固かったはずの信念が、脆く、今にも壊れそうになっていた。
何かが変わった。それだけは確かだが、根底にあるものが見えない。だから、変化するまでの過程に何があったのかを思い出し、考えることに明け暮れた。
一日経って、一週間経って、一年経って、五年経って、それらの感情は消えていった。
過去は、記憶から消えることはあっても世界からは消えない。結局、信じられるのは今だけだった。今思ったこと、今感じたことがすべて。そう考えなければ前に進めないよ。
ガタガタと赤いトタンの上を下った。そして淵で止まる。下なんか見なかった、けれど止まれた。風が吹いたら落ちる。風は吹かない。
自分が鳴らすはずのない音にぎょっとして、下を向いた。足元に小さな女がいた。
「危ないと思うけど」と豆粒みたいに小さく、ピントの合わない彼女に言った。
「だったら降りて来てよ」
俺が屋根の上にいることを知っていたかのような口ぶり。
雑に欄間に掛けられた柵に降りた。思った以上に音が鳴って、支えている鎖が切れてもいいほどの衝撃だったと思うが、身を挺してとどまったみたいだった。
玄関の天井兼踊り場まで降りると、彼女はそこまで登ってしまったみたいだった。
「髪伸びたな」
「切るのが面倒で」
「俺はベリーショートとか好きだけどな」
肩にかかるほど伸びていて、伸びた前髪をかき上げる姿が大人びていた。
見れば、ジーンズにTシャツだった。この服装からは到底社会人には見えない。
「大学行ったんだっけ?」
「一応……。卒業もして一般企業に就職したよ」
懐かしい声、と感じられるほど話した記憶はない。八柳さんが新聞を見せてこなかったら、連想して思い出すこともなかった。
「俺のことはどこで?」
「えっと……新聞とかテレビとかで……」
少し俯き、申し訳なさそうな顔だった。
変わったな、咲奈。お前を最初に見たとき「強いな」って思ったけど、今じゃ、普通の女性にしか見えない。袖から出された腕に傷があるとはいえ、前よりいくらかましになったように見えるし、普通に晒している。
会話は途切れたが、それを繋げようと隣でそわそわしているのが横目でわかった。うーとかえーって吐息交じりにずっと身体をゆさゆさしている姿が、なんともかわいらしかった。腕の傷を見ていなかったら見違えるほどで。
「楽しい?」と聞いてみた。
「えっ! と……それなりに……」
笑ってしまった。何を言おうか迷っていただろうときに俺がいきなり聞いたもんだから、「え」だけ大きな声になって「それなりに」が小さい声になったのが、俺の笑いのツボを揺すった。
「よかったじゃん。人生って比例してそうだな。苦しいことがあった分、楽しいことも続いていくんだと思うよ」
笑うって雰囲気を変えてしまう。短髪で、眠そうな目をしているだけで避けられるほど暗い俺なのに、笑えば気分がよくなる。久しぶりに頬が上がったせいか、ぴくぴくと軽く痙攣していた。
裏腹に、彼女は決心したようだった。
「高校までの私って、他人がどうなろうとどうでもよかった。これだけいじめられてきたんだから、少しぐらい他人に危害を加えたたって神様は許してくれるだろうって思ってた。だから、全校集会のときもあなたに罪を押し付けた。でも……」
彼女は一瞬瞼を閉じた。
「後悔しか残らなかった」
脚が、震えた。
「あの日の私は試されてたってわかってた。でも私は、あなたの中学の教師と同じように、あなたを信じなかった。それが私にとっての正しい選択だと思って信じてた。だけど、一日経っても、一週間経っても、頭からあなたの顔が離れなくて……、罪悪感しか残らなくて……、ずっと後悔してて、どうしても謝りたくて……」
鼻を啜る音。それはもう嗚咽に近かった。俺は彼女の顔を見られないでいる。その右手を、彼女の両手が握った。初めて感じる緩い温もりに驚き右を向いたら、彼女は地べたにぺたんと座り込んで泣き崩れていた。
俺は傍観者だった。自分のことを言われていても、教室のドアから眺めるだけで、内輪に入らなかった。というよりは、自分のことのように聞こえなかった。
もう昔の自分は、俺の中にいないんだ。
彼女の前にしゃがんだ。
「皮肉だよな。俺はそんなこと気にして生きてこなかったのに、咲奈は十年近くそのことが頭から離れなくて、罪の意識を感じ続けてきたんだから」
俯いて、子どものように泣きじゃくる咲奈の姿を、八柳さんとその家族に重ねてしまった。咲奈が八柳さんで、俺が妻と娘の位置。立場が逆だった。
「定石が通じる訳ないんだよ。人なんてみんな違うんだから。そんな世界で生きていくんだから、ゴールまでつながった線路の上なんか歩いていける訳がない。途中で揺れたり、脱線しまくったり、運休したりするけど、それを含めての今なんじゃないかな。今に幸せを感じられれば、後悔なんてどっかに行っちゃうんだから、幸せになりなさいよ?」
プライドの高い大人が、「私の言うことがすべてだ」とでも言うように語りかけてくるのは、今でも嫌いだ。そうならないように言ったつもりだけど、ちょっと価値観を押し付けてしまったのかもしれない。
ただ、この右手の温もりがあったかくて。
頬の涙も、水を垂らしたのかと思うほどにコンクリートにぽたぽたと染みていた涙も消え、ようやく静かになった。
色がない訳でもなく、濁っている訳でもない。それは確かなのだが、自分の中に陰と陽みたいな真逆の感情が二つとも存在する。それは混ざってなどいない。かけ離れていて、それぞれが独立している。自分の身体に二人の自分が住み着いていて、それを包み込む俺。
俺も、二人の自分も、紛れもなく俺自身なんだ。
「後になって知ったんだけど、あの俺の行動って、他の人にもなくはないことらしいんだよね。例えるなら、わざと彼氏を怒らせて、それでも私と向き合ってくれるかを無意識に試しているような女みたいな感じかな」
彼女は俯いたままだった。
「なんか、地球って憎むほどでもないんだよね。むかついたり、殺意が湧いたり、どうしようもなく胸が締め付けられることもあったけど、その感情は、いつの間にかいなくなってたりするから……」
まだ俯いたまま。
俺はわざとらしく笑顔を作った。夜中の洗面台じゃないと確認できないような顔じゃなければ、そんなの簡単だった。
「好きだけどさ、殺してやりたいほど憎くもあるんだ」
髪が揺れた――。
矛盾は重なった。
白石も安広も安藤も当然咲奈も好きだ。今でも大好きだ。その感情に嘘はない。でも、反対の覚悟を選んだ白石は嫌いだし、どこか他人ごとの安広はむかつくし、真弓先生の言いなりになった安藤と咲奈も首を絞めてやりたい。それを実行しない自分も嫌い。これらの感情も真実。
他人にも自分にも存在するアンビバレンス。それと向き合って、包み隠さず受け入れて、認めて、進んでいった先に、本当に光は見えるのだろうか。
見える訳がないだろう。
「トンネルってさ、両方から出れるじゃん? 車道が二つあって、互いに反対の方向へ進む。入口と出口って厳密には決まっているらしいんだけど、どっちが入口でどっちが出口かは人それぞれだと思うんだよね」
彼女は俺の顔を見てくれていた。
思えば校舎裏で見た咲奈も、きったないプールで見た濡れた咲奈も、月が照らす廊下で見た咲奈も、俺を見てくれていた。全部俺だけのものにしたい。俺にしかできない。俺にしか消すことはできない。俺にしか形にすることはできない。あの笑顔も、笑い声も、あのとき見られなかった表情も、一緒にしたかったことも、本当は手を繋いでいたかったことも、こんなにも咲奈の言葉がうれしかったことも、すべて込み上げてきた。
どうして今まで他人事のように向き合えていたのか。そんなことを思えるくらいには俺の煙たい心とやらを刺激していた。
唐突な咲奈の登場。それも校舎の屋根から飛び降りる寸前。
そんな劇的な単体ヒーローの登場に、これから先の人生を預けてもいいだろうか。
懐かしい気がしたのだ。子どもの頃、日曜の朝に見た戦隊ヒーロー。悪敵を蹴散らすかっこよさに憧れていたこともあった。
そんな時代の自分自身を否定したくなって自尊心が低くなったのはいつ頃からだろうか。
物は考えよう、とはよくいったものだ。考え方次第で行動も想いの方向性も変わってしまう。誰かに影響を受ければ、昨日までの自分は否定したくなる。
咲奈を好きだと思おうとすれば、それに足る記憶はいくらでもあった。嫌おうと思えばそれに足る十分な救われない感情がたくさんある。
でもそういうことを考えたいのではなかった。
誰が好きで誰が嫌いだとかその理由だとかそういうことを自分の中で定義して確立したいのではない。
「もう少し生きてみたい」
そう思えたのがあなたの顔だったから。
それだけのことで、クソ溜めの中に沈んでいたと思っていた大事な後悔は過去から飛んできた。
「じゃあ、死ぬのも入口だって思う私はおかしくないかな?」
咲奈は物憂げに話し出す。
「そうだな」
俺は答える。
「でも本当は生きたいって思ってる私も正解かな?」
「ああ」
「こんな私でも生きていていいかな?」
「ああ、生きろ」
「やり直せるかな?」
「そのときが入口だと思えればな」
俺が先に地面に降りた。咲奈に早く降りろと促すと、脚をプルプルさせながら、補助を頼んできた。怖がっていた割には豪快に飛んで、見事に俺の服に足跡を付けた。
地面に足をつけた咲奈は言った。
「ねえ、死なないよね?」
「うん。少なくとも今日は」
「明日は死んじゃうの?」
「先のことなんてわからないな」
そんな返事をしながら、明日、自分が死ぬ光景を想像してみる。ビルから一歩踏み出す瞬間。市販の睡眠薬を大量に服用して嘔吐や腹痛に苦しむ俺。
それを想像した途端、全身に身震いが走った。
嘘だ、と声に出すほどではないが正直思った。先程まで飛び降りるのに躊躇などなかったはずなのに、今では死への恐怖が走っている。
俺は咲奈の顔を見てみた。
彼女は首をかしげる。
見えたのは、刹那に酔いしれたいほどの艶麗……だと思えた。
俺は、人間になれた気がした。
「ねえ、けっ……こ……しき……」
「えなに?」
俺はたじろいでいた。羞恥を感じるのはいつ振りだろうと訝れるくらいには明確に感じられていた。
そんな佇まいを察したのか、咲奈は話を進めようとする。
「あ、卒業式? 出んなかったもんね。あ、私でいいならやってあげようか? ドラマとかでありそうな紙渡すだけのやつ」
「え、やってくれるの?」
「いいよー。全然やってあげる。それになんか楽しそうじゃん。二人だけの卒業式なんてちょっと寂しそうだけどさ」
そんな咲奈の姿を目の当たりにして、俺は――。
自分の胸の鼓動を聞きながら、声を少し大きくしてみた。
「明日仕事あるの?」
「あるけど」
「ねえ、さ、卒業式はいいからさ……」
「うん?」
「結婚式、してくれないかな」
数秒の間の最中、俺は彼女の返答を考えられるほど余裕がなかった。
程なくして「今仕事あるって言ったよね?」と返事が聞こえる。
「あ、ああ、ごめんそうだよね。じゃあまた今度にしてもらおうかな。卒業式するのは」
久々に味わった現実の羞恥は、妙に重く背中にのしかかった。口を回しているだけにすぎず、頭は回っていない。気づいたら俺は「じゃあ、また」なんて言って彼女に背を向けて歩き出していた。
そりゃそうだよな、と思った。俺なんかと一緒にいても、この先いいことなんてないだろう。犯罪者のレッテルを背負って、職に就くのにも苦労し、ハローワークで「この空白の期間は何をされていたんですか?」と聞かれる想像もつく。そんな人間と一緒にいるのなんて。
このまま車に轢かれようかな……。そんなことを過らせた。
過らせただけだった。
背中にのしかかる重み。それは羞恥などではない温もりを兼ね備えた実体。右肩に乗る角ばった骨の先端。自分の首の前に回っている二本の細い腕。耳元で感じるその存在。
吐息を耳が感じ取る。
「……私に彼氏いるか聞かなくていいの?」
「え、いるの?」
「いないよ」
その言葉はどこまでも響いていきそうで、でも一片たりとも誰にも譲りたくないと思えるものだった。
右に首を捻る。
間近に迫る咲奈の顔。
そっと左手で彼女の前髪をあげてみる。
その真っ白なおでこに見とれてしまった。
俺は、そっと赤を置いた。
「口にしてよ」
「そのうちね」
彼女を慈しみたい想い。俺の中から一生消えない。たとえ彼女が離れていったとしても、きっと消えない。
俺が、彼女の側に居たいと思ったのだ。
「毎日、明日咲奈と一緒にすること考えてれば、絶対に明後日なんかこないんだ」
俺は固く誓った。
死ぬのは明後日で、と。
番外編みたいなのをこの後アップする予定ですが、一応これで終わりです。
「好きだけど嫌い」と彼方君は言いました。嫌いだけど一緒に居たい。自分のものにしたい。そう思えることってすごく素敵なことだと思うんです。嫌いなあいつのいいところを見つけたとき。生理的に受け付けなかったはずのあいつが今はいい奴に見える。でも嫌い。だけどいいところを見つけてしまった。私だけが知っているあなたの長所。そういったものを独り占めにしたくなる感情が私は大好きです。人間の欲に促されるのはこれっぽっちも好きではありませんが、最近は人間と愛情は切り離せないんだと誰かに教えられている気がしています。
何を言っているかわからないと思うので結論から言いますと、自分でも何が伝えたかったのかよくわからないんです。でも言いたいことはすべて書いたつもりです。ごめんなさい、つもりです。
今日死のうとしている人が、明日生きることを考えて欲しい。明後日なら別に死んでくれても構わない。そんな軽い気持ちで書き始めた拙い小説ですが、今では今日もちゃんと生きて欲しいし、これからも生きて欲しいと思っているくらいでして。
作中でも彼方君が言った「友達が欲しかった」っていうのがすべてだと思います。そんな繋がり、きっかけのひとつにこの小説がなってくれればと願うばかりです。




