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状況証拠しか話さない大人たちによって一方的に話を進められ、なぜか警察沙汰にはならなかった。当然、相手方の親は来た。俺はばあちゃんだったけど。
「以後、こんなことがないように」
謝って終わった。大事になった割にはあっさりとした幕引き。部屋を出ていく教師で「ちっ、クソガキが」と吐き捨てていった奴がいたが、怒りは拳に変わるほど大きくはなかった。
ばあちゃんには申し訳ないと思った。でも、後悔など微塵もしていない。いや、少しはした。だって人間だし。後悔する生き物だし。でも、それを押しのけるほどの吾妻への怒りがあったから、後悔は潔い高揚感に化けた。そして、それと同時に周りへの関心が薄れた。ばあちゃんと白石以外のすべてに対して。
ばあちゃんは、自転車で一時間かかる距離を歩いて学校まできた。俺のこの程度のことのために。ばあちゃんの杖をつきながら歩く姿を想像するだけで、さらに申し訳ないという気持ちがこみ上げてくる。
自転車をついて、ばあちゃんと歩く。
「あたしゃ、あんたの親になれていたかい?」
とぼとぼと歩くばあちゃんはそう言うんだ。
「当り前だよ。なんだよ急に」
「孫がいじめられていたことに、気がつけんかった」
「そんなのばあちゃんに限ったことじゃないし、俺が言わなかったのが悪いんだよ。ごめんな、ばあちゃん」
歩けば歩いただけ日が落ちる。家に着いたときは真っ暗だったけれど、「俺たちへの罰ゲームだね」なんて言って、二人で笑い合った。そのせいで、ばあちゃんへの申し訳ない気持ちはどこかの山へと吹っ飛んでしまったみたいで、どこか高揚感を片手に、家までの道のりをいつもとは違った形で楽しめることができた。誰かと一緒に帰るって偉大だね。
いつもより雰囲気がよかったからか、その日はぐっすり眠れた。夜中に起きだして鏡の前に立つこともなければ、布団の中でうずくまって泣くこともなかった。そして翌朝、いつものように「おはよー」と言って居間に入れば、いつもとは違う人間がそこの床にいた。ばあちゃんじゃない。そう信じたかったけれど、近寄って顔を見れば一目瞭然。足にじわじわと染み込んでくる生温かいどす黒い血によって、信じ難い現実を突きつけられた瞬間だった。




