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 始まりは、小さな事件からだったと聞く。

 当時の施設長に上がってきた書類には、「打撲痕、内出血痕多発による、注意事項」とあった。利用者さんの身体に、明らかにぶつけたような痕が、ここの所多いので、車椅子移乗など、注意して下さい、と。ところが、聞き取り調査をするうちに、一つの疑惑が浮かび上がってきたのだ。

 「虐待」

 認知症が進み、「あの人にやられました」と、訴えられなくとも、その「恐怖」は、覚えている。身体を強張らせ、精一杯の告発を試みているのだ。それを、やった本人は、楽しんでいる。

「なんか~この人~私のこと嫌いみたい~車椅子乗せにくいんだよね~」と、薄笑いを浮かべ。

「痛い!」と、言葉が出なくても、痛みを受けた瞬間、悲鳴を発しただろう。それを、無視できる感覚。もし、不可抗力の事故ならば、血を見てすぐに、医務室に運ぶはず。が、


 廊下に放置


 他者の痛みを、感じることが、出来ない種族


 その人は、相手の気持ちを汲み取るという能力、ある意味、人間性に欠いていた。相手が、どんな思いをしているのか、悲鳴すら、想像することが出来なかったのだろう。認知症相手だからという訳でもない。そもそも、他人が自分と同じ「心のある存在」だと、思ってもいない。心の痛みなど、感じることなど、出来やしない。そうでなかったらば、

 「虐待」を、ゲームのように、楽しめるはずなど、ない。

「腫れています」

「変な方向に曲がるんですけど~」

「痛がってます」

「立位が保てません」

 って、折れていますから。いくら、お年寄りで、骨粗しょう症とかでも、折れた時、かなりの「音」がしたはず。

「ただ、座らせただけ」

 は~?

 下肢の筋力低下あるのだから、座る時、サポートしてください。支えないのは、何なのでしょうか?


 介護の世界は、慢性の人手不足。しかし、入居者さんを守るために、ひいては、施設そのものを守るために、いくらなんでも、このような人物を働かせては、まずい。


 そして、これは、双方にとっての、悲劇。


 すでに、言葉というコミュニケーション手段を使えない、認知症の方の気持ちを察する……これがまったく出来ないで介護をするということは、とても疲れる。思い通りにならないからと、無理矢理介護すれば、烈しい拒否に遭い、全ての方が「めんどくさいやつ」になってしまう。しんどい中にも、ホッとする「温かい時間の共有」とか、「達成感」など無縁。ストレスだけ

 彼らは、介護している相手を、自分と同じ「人間」とは、思っていない。


 少なくとも、他職種を選ぶべきだ。


 ボーダーな人を含めて、とにかく退職してもらったそうだ。そして、面接の基準として

「人の気持ちを察することが出来る人材」

 という文言が加えられた。とは言え、どのようにして○×を付けるのか?

 その時、施設長に声を掛けられたのが、言語聴覚士として勤めていた水樹氏、私を育てた親代わりの一人だった。 

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