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血を分離して、私達は、血清になる…姥捨て山伝説  作者: 海月 要
~水樹氏より、スミさんへ~
15/17

~トワからムクへ、そして、眠りにつく~

 「私の母が、叶わなかった幸せを、君に感じてもらいたかった。その為だけに、私は生まれたと、思いたかった、ほんとだよ。ムクの為だけに、生きていたかった。でもね、この状況を変えられるのは、私だけ、私ならば、下の脅威から、みんなを救うことが、きっと、出来る。水樹さんが救ってくれた私達を、今度は、私が救う番。そう、これは、私の仕事だと、思ったんだよ」


 私の部屋、水樹さんが使っていた部屋、私の母の悲鳴を、ゲンさんが車椅子ごとぶつかって、知らせに来た部屋、扉に、傷の残る、その部屋で。

 この部屋は、思考が漏れないようにと、水樹さんが作った。だから、私が、ムクを抱いても、誰にも気付かれずに済むだろう。私は、こう考えて、かなり動揺したが、これもまた、漏れることは、ないか。これからの事を考えれば、それは、叶わないこと……


 ムクは、蛍のように輝きだした。暖かい光は広がり、彼女の座っているクッション、椅子、チーク材の床へと、ムクの体温が伝わっていく。少し震えながら、ムクは、一生懸命に、染めていく、私を目指して。


「私が、君を幸せにすることは、叶わなかったけれど、この世界が続いて、君が生きていければ、きっと、幸せになれる。その時の為に、私は、仕事をやりぬこうと、決心したんだよ」


「なんで、トワなの?なんで?」


 ムクの身体から、幾千もの黄金の糸が、蔓のように絡まりながら、こちらに向かって伸びて来る。私は、心底、包んでもらいたいと望んだ、そしたら、どんなにか、どんなにか……しかし、それは、永遠ではない。

 私は、振り切った。


「それはね、私にその<能力>があるからだよ。いままで、気付いていなかった。母が、最後の力を振り絞って封印してくれたその<能力>。それが、覚醒した。

 知ってしまったからには、もう、戻れないんだよ。ムク、どうか私を助けて欲しい、これが私の運命。だとしたら、やり遂げたいんだよ。ムク、君の支えが、必要だよ、お願いだ」


 ムクは、輝くのを、止めた。

 ムクの思考は、空になった。

 ムクの身体は、体温すら手放した。


 どれだけの時間が過ぎたことだろうか?私の部屋ごと、フリーズしていたのは。


「トワは、永遠になるの?」


 前触れ無しに、突如、ムクがこの空気を、切り裂いた。私は、何と答えてよいのか?私は、彼女にも理解できる範囲で、思考を解放した。


 ムクは、再び輝きだした。前よりも力強く、部屋全体を温めにかかった。私の身体を、含めて……


「ありがとう、私のことを大切に考えてくれて、嬉しいよ。トワに会えて、トワに愛されて、私は、ほんとに生まれてきて良かった!

 大丈夫、私は、トワの味方だよ、ずっと、トワを護る」


「永遠になるよ、ムクの為に」


 それだけ言い終えると、次の言葉が浮かんでこなかった。いや、あまりにも多くの言葉が、伝えたい言葉があり過ぎて、選べなかったのだ。この気持ちを表す言葉、昔、水樹さんが母に伝えたかった言葉。母が、聞けなかった言葉。


 私は、これから始まる手順を、彼女に伝えた。もう、心残りは、ない。ムクが味方だ、ムクが受け入れてくれた。後は、執行するのみ。ムク達の未来のために……


 私は、六ヶ月間の眠りについた。ムクだけに、回線を残して……

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