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血を分離して、私達は、血清になる…姥捨て山伝説  作者: 海月 要
~水樹氏より、スミさんへ~
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~トワ、始動~

 私は、やっと、決心した。


 母は、この為に、息子を手放したのだ。この力は、「使うべきだ」と、何度も何度も、自分に言い聞かせた。これは、今の幸せを、私がどんなに大切に思っているかを、問われている。今、このままの世界を続けていけるのならば、どんなにか幸せだろう。それが、叶わない、と言うのならば、せめて、「私抜き」でも、いいのではないか?何としても、護ってやりたい。ムクを、ムクの暮らす環境を、護ってやりたい、と、私は、念じた。


 ゲンさんはもう、車椅子の自走が出来ない。日中は陽の当たる窓辺で、本を読んでいる。髪にも白いものが増えたように、瞳の色も変わってきて、本当は良く見えないのに……それでもまだ、能力は衰えず、エリザベスカラーを巻き続けている。

 水樹さんは、私の父親だが、ゲンさんは、私の大切な友達だ。「なんとかしてやりたい」と、涙をいっぱいに溜めて、訴えに来るゲンさんの顔は、子供のよう……三十以上、歳が離れているのに、思わず「よしよし」と、してしまいそうになる。

 ゲンさんの足元には、いつもキジトラ猫が、うずくまっている。ゲンさんが、助けた猫、コタロウ。弦と弧という訳だ。この子も、陽だまりが大好きなので、晴れた日は、いつもこのポジションをキープ。雨の日は、ゲンさんの膝を寝床とする。

 ゲンさんは、この子の母親の悲鳴を聞いた。

 自分の子供達を、目の前で、板に張り付けられて、刺され、えぐられいく……開いたばかりの瞳。四匹の幼子を、ただただ、泣き叫ぶしか出来ない、母猫。

ゲンさんに頼まれて、私を通さず、スミさんは、警察に通報し、コタロウだけが、助かった。


 動物虐待


 小さな虫にも、命は、ある。私達と同じように、赤い血が流れていないからといって、一本ずつ脚をもいでいくのは、どういう気持ちなのだろう?子供の好奇心で、済む事なのか?虫には、感情はもちろんのこと、痛みを感じる神経すら無い、と、そう考えているからか?いや、痛みを感じていると、思うからこそ、やる、そういうやつらが、いるのだ。

 刺激が欲しい、自分の行動に対して、大きな反応が欲しい、自分の存在を確認するために、誰かの悲鳴が欲しいのだ。大きな反応……与える苦痛に対する悲鳴だけでは、満足できず、社会が、自分の存在に、悲鳴をあげるのを、欲しているやつら。

 人は誰でも、生きていく上で、迷惑をかけ、悲しい思いをさせてしまう。それが、わかっているからこそ、人に優しく出来る、そう、私は、思う。けれども、人の気持ちを察することの出来ないやつらは、お構いなし。悲鳴を聞くことでしか、相手の心に触れることが出来ない。だから、虐待を、傷つけることを、平気でやってのける。彼らの、コミュニケーション手段なのだ。

 動物虐待をしでかす者は、子供に、女性に、そのターゲットを拡大していく。やりたくなるのだ。だから、

 一刻も早く、排除すべきだ。


 私は、ゲンさんが大好きだ。ムクを救ってくれたのも、ゲンさんだ。これから、何年だろうか、穏やかに過ごして欲しい。下からの悲鳴を少しでも減らしてあげたい。

 これは、ゲンさんの為でもある!


 私は、山の人間を狩ってまで、自分達の需要を賄おうとしているやつら、人の痛みを感じることの出来ないやつらに、<印>を付けることにした。お互いに、やり合えばいい。それが、私の出した、答えだ。

 私以外の山の人間は、何もしなくていい、何もさせない。なぜならば、私達は、何も悪くないのだから。能動的に、相手を破滅させれば、その記憶が残ってしまう。私達は、何も悪くないのだから、そんなリスクを受け入れる義務はない。


 この作業は、かなりのエネルギーを要する。私は、六ヶ月間、眠ることにした。たぶん、このくらいで、貯めることが出来ると計算し、眠っている間を、ムクに頼もう。彼女が、看護師と言うのは、心強い。そして、もしもの事を考えて、彼女に、全てを話そう、心残りの無いように、そして、ムクの未来のために……

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