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血を分離して、私達は、血清になる…姥捨て山伝説  作者: 海月 要
~水樹氏より、スミさんへ~
12/17

~トワの夢~

夢を、見た。

 遠くから、何かが聞こえてきて、その方向から、私の夢は、暖かい<色>に、染まっていった。

 母の声だ。その色で、私は、気付いた。いつも私を、護ってくれていた<母の声>だった。


 私は、聞きたくなかった。ただ、ずっと、感じていたかった。ずっと、ずっと、傍に居て欲しかった。

 聞きたくなど、なかったのに。


「トワ、私の大切なトワ、私は、あなただけを、護ろうと、しました。でも、あなたには、護りたい仲間がいる。トワ、私の誇り。救えるのは、あなただけ。今、母のかけた魔法を解きますね。これで、お別れです。私のトワは、私の手を、離れてしまう……後は、あなた次第、思う存分、生きなさい」


 色は消え、しばらくは、何も起こらなかった。


 あのアパートだ。三才の私が、クリスマスプレゼントのミニカーで遊んでいる。ストーブの匂い、さっき食べ終えたチキンの香り。テレビが賑やかな音と、チカチカする光を放っている。


 私の手の中にあるミニカーが、テーブルの上に置いてあった何かを、落としてしまった。時計だ。あいつの時計。

 振り返った時、あいつの顔が、恐ろしい顔が、すぐそこにあった。私は、とても悪いことをしたと思い、すぐ謝ろうとしたが、あまりの恐怖で、言葉が出てこなかった。


「このガキ、わざとやりやがったな、しつけが悪い、謝りもしない!」


 床に、叩きつけられた。


 母が、台所から、駆けつけた。


「ごめんなさい、でも、この子は、謝っています。あなたには、聞こえませんか?どうぞ、許してやってくださいな、こんなにも、怯えているのが、あなたには、わからないのですか?」


「わからないのかって?ああ、わかりゃしねえよ。お前たちの事なんか、わかるはずねえだろうが、なんだよ、いっつも、俺だけあほ扱いしやがって、ムカつくんだよ!」


 母は、一瞬、台所に引き返そうとしました。しかし、そうはしなかった。私を抱きかかえると、


「ごめんね、こんなことしか、出来ないの」

と、私をその胸に抱きしめた。


 母の身体が、一瞬、固くなり、そして、温かい血が、私を濡らした。


 その後だ、私は……そうだ、思い出したぞ、あいつの身体に<印>を付けたのだ。胸に三箇所、母が刺された回数と同じだけ。

 あいつは、

 <印>に向かって、自ら包丁を、ねじ込んだ。


 ここで、映像が途切れる。


 強い力が、母からの、最後の力が、私を包んだ。そして、私は、眠りについた。母の最後の鼓動を聞かずに、私は、眠ってしまったのだ。母の胸の中で……


 そうか、母は、この時使った私の<能力>を、封印したのだ。幼い子供が、生きていく上で、持て余すであろう<能力>、使い方を誤れば、自らをも、滅ぼしかねない、その力を。私が、平穏に生きていかれるようにと、最後の力を振り絞って、


 私を、護ってくれたのだ。

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