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君がいれば、世界はいらない  作者: ミーナ
第一章:次代の担い手編
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プロローグ

はじめまして。更新は不定期ですが、自分が書きたいと想ったことを書いていきます。

拙い箇所もあると想いますが、どうぞよろしくおねがいします。

「記憶、売りませんか?」


 煙が立ち込める灰色の世界で、横たわる俺は不思議な声を聞いた。周囲に人は存在しないはずなのに、この場にそぐわない少女のような可憐な声が聞こえる。


いよいよ俺の命も尽きかけ、幻聴として亡き“彼女”でも生み出しているのだろうか。人は死に際から生還するために過去の記憶を思い出すというが……。

 

「いけない……この人、もう死ぬわ」


 ……幻聴というものは、ここまで鮮明に聞こえるものなのだろうか。本当に傍に誰かがいるような気がしてならない。目は潰れ、手足はあらぬ方向に曲がり身動きができない状況なので確認する手立てが無い。痛みを通り越して感覚が喪失してしまっているので、もはや触れられたとしても分からないのだが。


 ああ……よく、生きているな。ここまで満身創痍であるというのに、意識がまだ残っている。この状態になってから、もう半日ほど経っているのではないか。しぶといにしても程がある。一種の呪いだよ、全く……。

 

 …

 ……

 ………

 …………あ。

 

 意識が飛んでいたか? 無理も無い、体は当に限界を向かえ血も流れ続けている。常人であれば既に死んでいる状態だ。本来、俺もそちら側の人間であったはずなのだがな……こうして再度落ちた意識を浮上させてしまうとは、自分が恐ろしいよ。


とはいえ、これが最後のあがきだろう。いくら常人を逸脱しているとはいえ、俺は不死でも奇跡を起こす“聖人”でもない。


 まぁ……精精、意識のあるうちに思考できる人間という状態を楽しむことにしようか。死はもうすぐ傍まで来ている。後悔は残っているが、いまさらどうにもできない。

 

 ああ、そういえば。先ほど聞こえた声だが、やはり俺が生み出した幻聴のようだな。もう全く聞こえてこない。死を怖いと思ったことは無いが、それは俺が本当に思っていたことではなく、無意識の心の奥底では常に恐怖を感じていたのだろう。死の間際になり、幻聴という形で未練を思い起こす。それが何よりの証拠だ。ああ……人の心が残っていることにこうも幸せを感じるとは。

 

「声をかけても反応が無くなった……この人、もう聴覚が無いのかしら。意識はあるようだけど、もう長くはないようね。

 仕方ない……本当は違反だけど、同意が得られないなら強引にいくしかないわね。私も、生活がギリギリなのよ。恨まないで頂戴」

 

 死が、段々と近づいてくる。悪魔のように笑う【異形のモノ】が、“彼女”を引き裂く情景が思い起こされ、消えていく。鍛冶屋、薬屋、宿屋、ギルド……今まで関わってきた人たちが現れては消え、その全てを【異形のモノ】が飲み込んでいく。叫びたくても叫べない状況に苛立ちを覚え、忘れかけていた怒りを思い出す。しかし、その怒りは一瞬で無となり、消えていく。次いで現れた悲しみも、悔しさも、全ては無となり消えていく。


 俺は……一体なんのために今まで生きてきた。強くなって、奪われたものを取り返すため。そうだろう? だから、血の滲むような訓練をして、周りの連中を巻き込んで、偉大な勇者に……いだいな、ゆう、しゃ……。

 

 ――おれ、は…………。

 

 

 

プロローグですので少し短いですね。次回からは3000文字を超えるので、よろしくお願いします。

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