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家に戻って居間のテレビをつけた。どのチャンネルも砂嵐だった。
「……くそっ」
テレビを消した陽祐に、美沙が、
「どういうこと、お兄ちゃん……?」
「わからん。だけど、消えたのはオヤジやオフクロだけじゃない」
「え……?」
「隣近所の人間がみんな消えた。向かいの犬もいないから、人間だけじゃないかもな」
「どうして? 漫画やSFじゃないんだよ?」
「考えられるのは、地震とか災害が予知されて、みんな避難したのかも」
「でも、ママやパパまで……」
「……ああ。オヤジやオフクロが、俺たちを置いて逃げるわけがない」
その点は両親を信頼していいはずだ。
ならば、何故みんな消えたのか? いったい、どこへ消えたのか?
自分たち兄妹を残して……
「……いや、消えたのは、うちの近所だけか? テレビも映らないってことは……」
「美沙、友達に電話してみる。携帯とってくるね」
「俺も自分の携帯とりに行く。なるべく一緒に行動したほうがいいだろ、俺たち」
離れた途端に、もう一人まで消えるかもしれないから……とは、恐ろしすぎて口には出せず。
二人で二階へ上がり、それぞれの部屋から携帯を回収した。
廊下に出て美沙は、すぐに何人かの友達に電話したが、
「誰も出ない……」
陽祐も同じことを試したが、無駄だった。
「北海道の伯父さんはどうだ?」
母親の携帯に登録されていた番号にかけてみたが、やはり相手は出なかった。父親の実家も同様だ。
二人は、無言で居間に戻った。
陽祐はソファに座り、役立たずな携帯を傍らに投げ出す。
美沙はうつむきながら、その前に立った。いまにも泣き出しそうな赤い顔。
「…………、美沙が……」
何やらつぶやき、陽祐はきき返す。
「え?」
「……まさか、こんなこと……。だって、そんな……」
意味のある言葉ではなかった。よほど混乱しているのだろう。
陽祐はソファの上で胡坐をかいて、膝に頬杖をついた。
何やら考え込むようなポーズだったけど、実際には何も考られなかった。
父親と母親が消えた。隣近所の住人も消えた。
親戚や友人に電話しても誰も出ない。テレビも映らない。その事実を反芻しているだけだ。
どうして、みんな消えた?
──考えたって、わかるわけがない。
「……おまえも座ったら? とりあえず、これからどうするか、考えてみるから」
陽祐が声をかけると、美沙は首を振る。
それから、思いきったように顔を上げて、微笑んでみせ、
「とりあえず、朝ごはん作るね。タイマーでごはん炊けちゃってるから」
食欲なんて、あるはずなかった。
けれども、美沙が料理で気を紛らわしてくれるのなら、ありがたかった。
泣かれたりするのが一番困るのだ。
陽祐自身、途方に暮れて、意味もなく叫び出したい気分なのだから。




