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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第二章  美沙(一)
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2 - 3

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 家に戻って居間のテレビをつけた。どのチャンネルも砂嵐だった。

 

「……くそっ」

 

 テレビを消した陽祐に、美沙が、

 

「どういうこと、お兄ちゃん……?」

「わからん。だけど、消えたのはオヤジやオフクロだけじゃない」

「え……?」

「隣近所の人間がみんな消えた。向かいの犬もいないから、人間だけじゃないかもな」

「どうして? 漫画やSFじゃないんだよ?」

「考えられるのは、地震とか災害が予知されて、みんな避難したのかも」

「でも、ママやパパまで……」

「……ああ。オヤジやオフクロが、俺たちを置いて逃げるわけがない」

 

 その点は両親を信頼していいはずだ。

 ならば、何故みんな消えたのか? いったい、どこへ消えたのか?

 自分たち兄妹きょうだいを残して……

 

「……いや、消えたのは、うちの近所だけか? テレビも映らないってことは……」

「美沙、友達に電話してみる。携帯とってくるね」

「俺も自分の携帯とりに行く。なるべく一緒に行動したほうがいいだろ、俺たち」

 

 離れた途端に、もう一人まで消えるかもしれないから……とは、恐ろしすぎて口には出せず。

 二人で二階へ上がり、それぞれの部屋から携帯を回収した。

 廊下に出て美沙は、すぐに何人かの友達に電話したが、

 

「誰も出ない……」

 

 陽祐も同じことを試したが、無駄だった。

 

「北海道の伯父さんはどうだ?」

 

 母親の携帯に登録されていた番号にかけてみたが、やはり相手は出なかった。父親の実家も同様だ。

 二人は、無言で居間に戻った。

 陽祐はソファに座り、役立たずな携帯を傍らに投げ出す。

 美沙はうつむきながら、その前に立った。いまにも泣き出しそうな赤い顔。

 

「…………、美沙が……」

 

 何やらつぶやき、陽祐はきき返す。

 

「え?」

「……まさか、こんなこと……。だって、そんな……」

 

 意味のある言葉ではなかった。よほど混乱しているのだろう。

 陽祐はソファの上で胡坐をかいて、膝に頬杖をついた。

 何やら考え込むようなポーズだったけど、実際には何も考られなかった。

 父親と母親が消えた。隣近所の住人も消えた。

 親戚や友人に電話しても誰も出ない。テレビも映らない。その事実を反芻しているだけだ。

 どうして、みんな消えた?

 ──考えたって、わかるわけがない。

 

「……おまえも座ったら? とりあえず、これからどうするか、考えてみるから」

 

 陽祐が声をかけると、美沙は首を振る。

 それから、思いきったように顔を上げて、微笑んでみせ、

 

「とりあえず、朝ごはん作るね。タイマーでごはん炊けちゃってるから」

 

 食欲なんて、あるはずなかった。

 けれども、美沙が料理で気を紛らわしてくれるのなら、ありがたかった。

 泣かれたりするのが一番困るのだ。

 陽祐自身、途方に暮れて、意味もなく叫び出したい気分なのだから。


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